売上を上げたい店長が、まず見るべき5つの数字

営業・マーケティング

「今月、もう少し売上を上げたい」

飲食店の店長なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

経営者から「売上を上げてほしい」と言われることもあるでしょう。

そこで、

「もっとお客様を呼ぼう」
「おすすめを頑張ろう」
「スタッフに声掛けを徹底しよう」

と考える。

もちろん、こうした行動が間違っているわけではありません。

ただ、問題は**「なぜ、その施策をするのか?」が数字とつながっているか**です。

売上を上げる方法は、一つではありません。

新しいお客様を増やす方法もあれば、来店したお客様の成約率を高める方法もあります。一度来店したお客様にもう一度来てもらう方法もあれば、一回の利用で使っていただく金額を高める方法もあります。

そして最終的には、それらの取り組みがどれだけ利益につながったのかを見る必要があります。

店舗の売上・利益を考えるとき、店長成長コーチングでは、次の5つのKPIを一つの基本的な考え方として扱います。

①見込客
②成約率
③平均リピート回数
④平均客単価
⑤利益率

この5つを使って店舗を見ていくと、「売上を上げる」という曖昧な目標が、具体的な改善テーマに変わっていきます。

今回は、この5つのKPIを使って、店長が「売上・利益を作る」ための考え方を整理してみましょう。


「売上を上げる」では、何をすればいいのか分からない

店長に、

「今月は売上を伸ばしてください」

と伝えたとします。

店長は何をすればいいでしょうか?

広告を出す?

チラシを配る?

スタッフに接客を頑張らせる?

おすすめ商品を販売する?

SNSを強化する?

どれも可能性のある施策です。

しかし、店舗の状態によって正解は変わります。

例えば、十分な見込客がいるのに成約率が低い店舗なら、新規集客にさらに力を入れても、せっかく来たお客様を取りこぼしてしまいます。

反対に、成約率は高いのに見込客そのものが少なければ、接客研修ばかりしていても売上は大きく変わらないかもしれません。

さらに、一度来店したお客様がほとんど戻ってきていないなら、毎月新しいお客様を集め続けるだけでは、なかなか安定した売上につながりません。

だからこそ、

「売上を上げる」ではなく、「5つのKPIのどこを動かすのか?」

と考えることが重要になります。


店舗の売上・利益を見る5つのKPI

ここからは、それぞれのKPIを見ていきます。

ポイントは、数字を覚えることではありません。

「この数字を動かすために、自分は何ができるのか?」

まで考えることです。


① 見込客――そもそも、お客様になる可能性のある人はいるか?

最初に見るのが「見込客」です。

見込客とは、これからお客様になる可能性がある人のこと。

飲食店であれば、

  • 店舗の前を通る人
  • 店舗を知っている人
  • SNSやWebを見ている人
  • 広告を見た人
  • 以前から気になっている人
  • 既存顧客から紹介された人

など、店舗や商品を知り、「利用する可能性」がある人たちです。

例えば、どれだけ接客を改善しても、そもそも店舗の存在を知っている人が少なければ、売上を大きく伸ばすことは難しくなります。

逆に、十分な見込客がいるのに来店につながっていないのであれば、次に見るべきは「成約率」です。

ここで大切なのは、

「お客様が少ない」

で終わらせないこと。

「お客様になる可能性のある人が、そもそもどれくらいいるのか?」

と考えることです。


② 成約率――見込客を、お客様に変えられているか?

次が「成約率」です。

見込客が100人いたとして、そのうち実際に来店・購入につながるのが20人なら、成約率は20%です。

ここで考えるべきなのは、

「見込客を増やすこと」と「成約率を上げること」のどちらが、今の店舗に必要なのか?

ということです。

例えば、SNSや広告を見ている人は増えている。

店舗の前を通る人も多い。

しかし、実際の来店につながっていない。

この場合、「もっと広告を出そう」と考える前に、

「なぜ来店しないのか?」

を考える必要があります。

  • 店舗の魅力が伝わっていない
  • 商品の価値が分からない
  • 入店する理由がない
  • 価格に納得できない
  • 店内の様子が分からず不安
  • スタッフの声掛けが弱い

など、さまざまな可能性があります。

そして、ここから店長の仕事が始まります。

「成約率を上げよう」と言うだけではなく、

「何を変えれば、成約率が上がるのか?」

を考える。

この視点を持てるかどうかで、施策の具体性が大きく変わります。


③ 平均リピート回数――一度来たお客様に、何度来てもらえるか?

飲食店にとって、非常に重要なのがリピートです。

一度来店してもらったお客様が、その後も繰り返し利用してくれる。

これが増えれば、店舗の売上は安定しやすくなります。

例えば、10人のお客様が来店したとします。

一度だけ利用して終わるのか。

2回、3回、4回と利用してくれるのか。

この違いは、長期的に見ると非常に大きくなります。

だから店長は、

「新規のお客様をどう増やすか?」

だけではなく、

「一度来てくれたお客様に、なぜもう一度来てもらえるのか?」

を考える必要があります。

例えば、

  • 商品やサービスに満足した
  • スタッフの対応が良かった
  • 自分のことを覚えてくれていた
  • また食べたい商品がある
  • 利用する理由がある
  • 店舗に安心感がある

などです。

ここでは、コミュニケーションも大きく関係します。

店長がスタッフに、

「リピーターを増やして」

と指示するだけでは、なかなか行動にはなりません。

「また来たいと思ってもらうには、今日の接客で何ができる?」

とスタッフ自身に考えてもらう。

そこから具体的な行動を決めていく。

こうすることで、KPIが現場の行動につながります。


④ 平均客単価――一回の利用で、どれだけ価値を提供できているか?

4つ目は「平均客単価」です。

ここで注意したいのは、

「客単価を上げればいい」

と単純に考えないことです。

お客様が必要としていないものを無理に勧めれば、短期的に客単価が上がっても、満足度が下がり、リピートにも悪影響が出る可能性があります。

重要なのは、

お客様にとって価値のある追加提案ができているか

という視点です。

例えば、

「こちらの商品を追加すると、より楽しめます」

「こちらのセットにすると、○○も付いています」

「今日は○○がおすすめです」

といった提案です。

そのためには、スタッフが商品を理解していなければなりません。

そして、どんなお客様に、どのタイミングで、何を提案するのか。

これを店長が考え、スタッフに伝え、実践してもらう。

さらに結果を見る。

これも「売上・利益を作る」ための店長の仕事です。


⑤ 利益率――売上が増えた結果、利益は残ったか?

最後が「利益率」です。

ここが非常に重要です。

なぜなら、

売上が増えることと、利益が増えることは同じではないからです。

例えば、売上を増やすために大幅な値引きをしたとします。

売上は増えた。

でも利益率が大きく下がった。

これでは、店舗経営として必ずしも良い結果とは言えません。

だからこそ、

「売上を増やす施策なのか?」

だけではなく、

「利益率まで考えると、その施策をやる意味はあるのか?」

と考える必要があります。

見込客を増やす。

成約率を上げる。

平均リピート回数を増やす。

平均客単価を上げる。

そして、その結果として利益率はどうなったのか。

この5つを一緒に見ることで、店長は「売上だけを追う店舗運営」から一歩進むことができます。


重要なのは「どの数字を動かすか」を決めること

ここまで5つのKPIを紹介しました。

しかし、5つすべてを一度に改善しようとする必要はありません。

むしろ重要なのは、

「今、この店舗で一番動かすべきKPIはどれか?」

を決めることです。

例えば、

ケースA

見込客が少ない
→ 集客や認知を考える

ケースB

見込客は多いが成約率が低い
→ 商品の見せ方、提案、接客などを見直す

ケースC

新規客は来るがリピートしない
→ 顧客満足、関係づくり、再来店する理由を考える

ケースD

リピートは多いが客単価が低い
→ 商品提案やセット販売などを考える

ケースE

売上は増えているが利益率が低い
→ 値引き、原価、商品構成などを見直す

同じ「売上を上げたい」という課題でも、店舗によって取るべき行動は違います。

だから、数字を見る。

そして、一番のボトルネックを見つける。

ここが店長の経営スキルになります。


「自分ができること」と「会社がやること」を分ける

さらに、チェーン店の店長にとって重要なのが、権限の整理です。

例えば「見込客を増やす」という課題があったとします。

本部が全国広告を出している。

Webマーケティングも本部が担当している。

ブランド全体のキャンペーンも本部が決めている。

この場合、店長が同じことをやろうとしても、できることには限界があります。

では、店長は何もできないのでしょうか。

そうではありません。

例えば、

  • 店舗周辺への情報発信
  • 店舗独自の声掛け
  • 既存顧客への働きかけ
  • スタッフからの紹介促進
  • 店舗での接客改善
  • 再来店につながる取り組み

など、店舗で動かせる領域があります。

そこで、

「会社・本部は何をしているのか?」

と

「自分の権限では何ができるのか?」

を分けて考えます。

そして5つのKPIと照らし合わせる。

すると、施策の「ずれ」が少なくなります。


KPIを使うと「思いつきの施策」が減っていく

店舗改善でありがちな失敗があります。

「最近売上が悪いから、何かキャンペーンをやろう」

「競合店がSNSをやっているから、うちもやろう」

「客単価が低いから、高い商品をもっと勧めよう」

このように、先に施策を決めてしまうことです。

もちろん、アイデアを出すこと自体は悪くありません。

しかし、

「その施策は、どのKPIを動かすためなのか?」

が明確でなければ、効果測定ができません。

逆に、

「今、一番の課題は平均リピート回数」
↓
「なぜリピートしない?」
↓
「再来店する理由が弱い」
↓
「では、何を変える?」
↓
「スタッフとの関係づくりと再来店につながる提案を強化する」

という順番なら、施策に一貫性が生まれます。

これが、KPIを使って店舗を経営するということです。


理想は「改善すれば、また次の改善ができる」店舗

店長成長コーチングで目指したいのは、一度だけ売上を上げることではありません。

理想は、

KPIを見る
→ 問題を発見する
→ 原因を考える
→ 自分ができることを決める
→ 行動する
→ 数字を計測する
→ 振り返る
→ 次の改善をする

というサイクルが店舗の中に定着することです。

例えば、最初は「成約率」を改善した。

成約率が上がったら、次は「平均リピート回数」を見る。

リピートが改善したら、次は「平均客単価」を見る。

その結果、売上が増えてきたら「利益率」を確認する。

このように、一つの改善が終わったら、次の改善テーマを見つける。

そして、それを繰り返していく。

最終的には、

「売上を上げるために毎回経営者が指示を出さなくても、店長自身が数字を見て改善テーマを見つけられる」

状態を目指します。

これが、店長が自走する店舗づくりにつながります。


ある店長が「売上を上げる」から「どこを改善する?」に変わった事例

ある多店舗展開の飲食企業で、店長Aさんは、毎月の売上目標を達成するために悩んでいました。

経営者から、

「今月はもう少し売上を上げてほしい」

と言われるたびに、

「もっと新規のお客様を増やさないと」

と考えていたのです。

そこで、店舗の5つのKPIを確認してみました。

すると、見込客そのものは十分に存在していました。

問題は、その先。

来店につながる成約率が低かったのです。

さらに現場を確認すると、店舗の魅力やおすすめ商品が十分に伝わっていないことが分かりました。

そこで店長は、単純に広告を増やすのではなく、スタッフと一緒に、

「お客様が入店する前に何を見ているか」

「入店した後、何に迷っているか」

「おすすめ商品をどのように伝えるか」

を考えました。

スタッフへの伝え方も、

「もっとおすすめして」

ではありません。

「この時間帯のお客様には、最初に○○を案内してみよう」

という具体的な行動に変えました。

そして一定期間実施した後、成約率を確認する。

結果が良ければ続ける。

改善が小さければ、また原因を考える。

こうして店長は、

「売上を上げなければ」

という漠然とした状態から、

「今の店舗は成約率を改善することが重要。そのために自分ができることはこれ」

と考えられるようになっていきました。

店長にとって大きかったのは、売上の数字が変わったことだけではありません。

自分で問題を見つけ、自分で施策を考え、結果を確認する経験を積めたことです。

これが次の改善にもつながっていきます。


店長に必要なのは「売上を追う力」ではなく「売上を作る力」

会社から売上目標を与えられる。

その目標を追いかける。

これは店長の重要な仕事です。

しかし、目標を追いかけるだけでは、店舗経営はいつまでも「指示を受けて動く」状態から抜け出せません。

店長に必要なのは、

「この店舗の売上は、どこから生まれているのか?」

を理解すること。

そして、

「今、一番改善すべきKPIは何か?」

を考えること。

さらに、

「そのKPIを動かすために、自分の権限で何ができるのか?」

を考えることです。

5つのKPI、

見込客
成約率
平均リピート回数
平均客単価
利益率

を使って店舗を見れば、「売上を上げる」という大きな目標を、具体的な改善テーマに分解できます。

そして、本部や会社が取り組んでいることと、自分が取り組めることを整理する。

だからこそ、施策がずれにくくなります。


最後に

「売上を上げよう」

という言葉は簡単です。

しかし、店長が本当に考えるべきなのは、

「どの数字を、どう動かすのか?」

です。

見込客を増やすのか。

成約率を高めるのか。

平均リピート回数を増やすのか。

平均客単価を高めるのか。

それとも、売上を増やすだけではなく利益率を改善するのか。

そして、その中で、

「今の自分の権限でコントロールできることは何か?」

を考える。

会社や本部がすでに取り組んでいることも確認する。

そのうえで、自分がやるべき施策を決める。

この繰り返しができれば、店舗改善は「思いつき」から「仕組み」に変わっていきます。

そして理想は、店長自身が数字を見て、

「次はここを改善しよう」

と自らテーマを設定できる状態です。

一つ改善したら、また次の課題を見つける。

その改善を積み重ねることで、売上・利益が上がり続ける仕組みに近づいていきます。

店長成長コーチングでは、数字の知識だけを教えるのではなく、実際の店舗の状況を題材に、店長自身が「何を課題とするのか」「何をコントロールできるのか」「何を実行するのか」を考えられるようにサポートします。

「店長に売上目標は渡しているけれど、具体的な改善を自分で考えられない」

「本部の施策と店舗でやるべきことが整理できていない」

「売上は追っているが、利益まで考えられていない」

もしそう感じているなら、まず店舗の5つのKPIを並べてみてください。

数字を並べるだけでも、「次に店長が身につけるべき経営スキル」が見えてくるかもしれません。

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