「また同じミスをしている」
「何度言ってもできない」
「スタッフによって仕事のやり方が違う」
「店長の自分がいないと、なぜか店舗が回らない」
飲食店を運営していると、こんな場面に出会うことがあります。
そのとき、つい「スタッフの能力」や「仕事への姿勢」に原因を求めてしまうことはないでしょうか。
もちろん、人に原因があるケースもあります。
しかし、店長として一度考えてみたいのが、
「その人が悪いのではなく、そうなってしまう仕組みになっていないか?」
という視点です。
例えば、新人が毎回同じミスをする。
「ちゃんと確認して」と注意するだけで終われば、また同じことが起こるかもしれません。
一方で、
「なぜ確認できなかったのか?」
「確認するタイミングは決まっているか?」
「確認する項目は明確か?」
「誰が確認することになっているか?」
と考えれば、個人の問題ではなく店舗の仕組みの問題が見えてくることがあります。
店長成長コーチングの「店舗を仕組みで運営する」では、単にマニュアルを作る方法を学ぶのではありません。
人に頑張ってもらう店舗から、人が働きやすく、成果を出しやすい仕組みを持つ店舗へ変えていく。
そのための考え方を身につけていきます。
「できない人」を探す前に、仕組みを疑ってみる
店舗で問題が起きたとき、私たちは人に原因を求めがちです。
例えば、閉店作業で毎回ミスが起こっているとします。
「Aさんは確認が雑だ」
「Bさんは仕事が遅い」
「新人だから仕方ない」
そんなふうに考えてしまうかもしれません。
しかし、少し視点を変えてみます。
- 閉店作業の手順は決まっているか
- やることが一覧になっているか
- 優先順位は明確か
- 誰がどこまで担当するのか決まっているか
- 完了基準は明確か
- 最後に確認する人は決まっているか
もし、これらが曖昧なら、ミスの原因は「人」だけではありません。
ミスが起こりやすい仕組みになっている可能性があります。
もちろん、仕組みを整えればすべての問題がなくなるわけではありません。
それでも、同じ問題が繰り返されているなら、
「誰が悪いのか?」
だけではなく、
「なぜ、この問題が繰り返し起きるのか?」
と考えることが、店長にとって重要な経営者視点になります。
仕組みは「人を楽にするため」だけではない
「仕組み化」と聞くと、
「効率化すること」
「人件費を減らすこと」
「スタッフを管理すること」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、店舗における仕組みには、もう一つ大きな役割があります。
それは、
人に優しくすることです。
一見すると、
「合理的な仕事」と「人への優しさ」は反対に見えるかもしれません。
合理性を追求すると、人を機械のように扱う。
優しさを重視すると、非効率になる。
そんなイメージを持つこともあります。
しかし、本当にそうでしょうか。
私は、むしろ、
仕事に対する合理性と、人に対する優しさは、仕組みによって両立できる
と考えています。
「優しい店長」だけでは、スタッフを守れない
例えば、忙しい時間帯に新人スタッフが入っています。
店長は新人に優しく、
「分からないことがあったら聞いてね」
と声を掛けています。
一見すると、とても良い対応です。
しかし、新人からすると、
「何が分からないのかも分からない」
という状態かもしれません。
そこで、
- 最初に覚える仕事
- 次に覚える仕事
- 一人でやっていい仕事
- 必ず確認する仕事
- 困ったときに相談する相手
などを仕組みにしておけばどうでしょうか。
新人は迷いにくくなります。
教える側も、毎回ゼロから説明する必要がなくなります。
店長も、「ちゃんと教えたかな」と不安になる必要が減ります。
つまり、仕組みは仕事を合理化するだけでなく、
「分からないまま放置される」というスタッフの不安を減らすことにもつながります。
これが、人に対する優しさとしての仕組みです。
大手チェーンは「仕組み」が強い
大手飲食チェーンを訪れると、
「誰が働いても一定のサービスを提供できる」
ように、さまざまな仕組みが用意されています。
例えば、
- 業務マニュアル
- 新人教育
- オペレーション
- チェックリスト
- 商品提供のルール
- 接客基準
- 発注ルール
- 衛生管理
- シフト管理
- 報告ルール
- 店長向けの管理項目
などです。
こうした仕組みがあることで、店舗ごとの差を小さくし、一定の品質を維持しやすくなります。
特に多店舗展開をしていく場合、店長一人ひとりの経験や能力だけに頼ることには限界があります。
だからこそ、会社として仕組みを作る。
これは多店舗展開において非常に重要な考え方です。
しかし、ここで一つ注意したいことがあります。
「大手の仕組みをそのまま使えば、自分の店舗も完璧に回る」とは限らない。
ということです。
店舗には「会社の仕組み」だけでは解決できない問題がある
同じ会社の店舗でも、実際には一店舗ごとに環境が違います。
例えば、
- 駅前の店舗
- 住宅街の店舗
- オフィス街の店舗
- 商業施設内の店舗
- 観光地の店舗
では、お客様の行動が違います。
スタッフの構成も違います。
地域の特性も違います。
競合店舗も違います。
そして、店舗が抱えている問題も違います。
例えば、同じチェーンでも、
A店は「ランチのピーク時に提供が遅れる」
B店は「夜の時間帯にお客様が少ない」
C店は「新人スタッフがなかなか仕事を覚えない」
というように、課題は異なります。
会社が用意した標準的な仕組みは必要です。
しかし、それだけでは解決できない問題もあります。
そこで重要になるのが、
「店舗独自の仕組みを作る力」
です。
店舗独自の仕組みは「思いつき」で作らない
店舗独自の仕組みを作るとき、ありがちな失敗があります。
「最近ミスが多いからチェック表を作ろう」
「新人が育たないからマニュアルを増やそう」
「忙しいからルールを追加しよう」
というように、問題が起きるたびに新しいルールを追加してしまうことです。
これでは、スタッフが覚えることばかり増えてしまいます。
大切なのは、
「何のための仕組みなのか?」
を明確にすることです。
例えば、「提供時間が遅い」という問題があったとします。
いきなり、
「もっと早く提供してください」
というルールを作るのではありません。
まず、
①何が起きているのか
「ピーク時に料理の提供が遅れている」
↓
②どこで問題が起きているのか
「注文が集中した後、厨房への伝達に時間がかかっている」
↓
③なぜ起きているのか
「注文情報の確認方法がスタッフによって違う」
↓
④何を変えればいいのか
「注文を受けた後の確認手順を統一する」
↓
⑤どう仕組みにするのか
「ピーク時専用の確認方法を決める」
というように、問題から逆算します。
こうすれば、単純に人へ「もっと頑張れ」と言うのではなく、問題が起きにくい環境を作ることができます。
良い仕組みは「人が変わっても機能する」
仕組み化の大きなメリットは、
人に依存しすぎなくなること
です。
例えば、ベテランスタッフのAさんがいるとします。
Aさんは仕事が早く、周囲への声掛けも上手。
忙しくなれば自然と周りを見て、必要な仕事を判断してくれます。
ところがAさんが休みの日になると、店舗の動きが悪くなる。
これはAさんが悪いわけではありません。
むしろ、Aさんが優秀だからこそ、Aさん個人の能力に依存している可能性があります。
ここで店長が考えるべきなのは、
「Aさんをもっと頑張らせるにはどうするか?」
ではなく、
「Aさんがやっていることの一部を、店舗の仕組みにできないか?」
ということです。
例えば、
- 忙しくなる基準
- 優先する仕事
- 声掛けのルール
- ポジション変更の判断
- 応援に入る基準
- 店長への報告基準
などを整理できます。
Aさんの経験を、店舗の共有財産に変える。
これが仕組み化の一つの考え方です。
「店長がいないと回らない」をどう変えるか
店長がすべてを判断している店舗では、
「店長に聞かないと分からない」
という状態が起きます。
もちろん、店長が判断すべき重要な問題もあります。
しかし、
「これ、どうしますか?」
という質問が毎回店長に集中するのであれば、仕組みにできる余地があります。
例えば、
「このケースならこうする」
という判断基準を決める。
スタッフが自分で判断できる範囲を決める。
判断できない場合だけ店長に報告する。
こうすることで、店長は細かい判断から解放され、より重要な仕事に時間を使えるようになります。
これは単なる業務効率化ではありません。
スタッフに責任と権限を渡し、主体性を育てることにもつながります。
仕組み化すると「人を責める」必要が減っていく
仕組み化の効果は、業務効率だけではありません。
店長とスタッフの関係にも影響します。
例えば、ミスが起きるたびに、
「なんでできないの?」
「前にも言ったよね?」
「ちゃんと確認してよ」
と注意される環境では、スタッフは次第に失敗を隠すようになるかもしれません。
一方、
「今回のミスは、どこで起きた?」
「どうすれば次に同じことが起きにくくなる?」
と考える文化があれば、問題を改善材料として扱いやすくなります。
もちろん、本人の確認不足など、個人に改善すべき点があるケースもあります。
しかし、それでも、
「本人への指導」と「仕組みの改善」を分けて考える
ことが重要です。
人を責めるだけでは、次の人が同じ問題を起こす可能性があります。
仕組みを見直せば、店舗全体が変わる可能性があります。
店舗独自の仕組みを作れる店長になる3つのステップ
では、実際に店長が仕組みを作るには、どうすればいいのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
まずは次の3ステップから始めてみましょう。
STEP1 繰り返し起きている問題を見つける
一度だけ起きたミスではなく、
「何度も繰り返している問題」
に注目します。
例えば、
- 新人が同じ質問を繰り返す
- 閉店作業で毎回ミスが出る
- ピーク時に同じ場所が混乱する
- 報告漏れが繰り返される
- 店長に同じ確認が集中する
などです。
ここには、仕組み化のヒントがあります。
STEP2 「人」ではなく「流れ」を見る
次に、
「誰が悪い?」
ではなく、
「仕事がどのように流れている?」
と考えます。
誰が、
何を、
いつ、
どの順番で、
どの基準で、
どこまでやるのか。
ここを整理します。
すると、「実は決まっていなかったこと」が見えてくることがあります。
STEP3 小さく仕組みにして試す
最初から完璧なマニュアルを作る必要はありません。
例えば、
「閉店作業チェックリストを1週間試してみる」
「新人の最初の3日間だけ教育手順を決める」
「ピーク時の役割を明確にする」
など、小さく始めます。
そして、
「実際に問題は減ったか?」
を確認します。
うまくいかなければ修正する。
うまくいけば、店舗の標準にする。
この繰り返しが、店舗独自の仕組みを育てていきます。
事例:店長の「頑張って」が、店舗の仕組みに変わった
ある飲食店では、ピークタイムになるとホールスタッフが混乱し、料理の提供が遅れることがありました。
店長はスタッフに、
「忙しいときこそ周りを見て動こう」
「もっと声を掛け合おう」
と伝えていました。
スタッフも理解はしていました。
しかし、忙しくなると、やはり混乱します。
そこで店長は、「スタッフの意識が低い」と考えるのをやめました。
そして、ピークタイムの仕事を観察しました。
すると、
「誰が何を担当するのか」
「どのタイミングで応援に入るのか」
「どの仕事を優先するのか」
が、人によって違っていることが分かりました。
そこで、
- ピークタイムの役割を明確にする
- 忙しさの基準を決める
- 応援に入る条件を決める
- 店長への報告が必要なケースを決める
という仕組みを作りました。
すると、スタッフが「店長の指示を待つ」場面が減っていきました。
店長自身も、
「もっと頑張って」
と言うのではなく、
「今の仕組みのどこを変えれば、もっとスムーズになるか?」
と考えるようになりました。
この変化は、単なる業務改善ではありません。
店長自身の仕事の仕方が、「人を動かす」から「人が動きやすい環境を作る」へ変わったのです。
仕組みを作れる店長は、店舗の未来を作れる
店長が自分で頑張れば、短期的には店舗がうまく回るかもしれません。
しかし、店長自身がすべてを抱えてしまえば、
「店長が休むと回らない」
「店長が異動すると品質が落ちる」
「新しいスタッフが入るたびに、店長が一から教える」
という状態になりやすくなります。
だからこそ、店長には、
自分が頑張る能力だけではなく、自分がいなくても店舗が回る仕組みを作る能力
が必要になります。
これは特に、多店舗展開を目指す会社では重要です。
店舗が増えるほど、経営者や本部がすべての現場を直接管理することは難しくなります。
そのときに必要になるのが、
「店長が店長を育て、店長が店舗の仕組みを改善していく状態」
です。
最後に
店舗で問題が起きたとき、
「誰が悪い?」
と考えるのではなく、
「なぜ、この問題が繰り返し起きるのだろう?」
と考えてみる。
そこから、
「仕組みにできることはないか?」
を探してみる。
これが、店舗を仕組みで運営するための第一歩です。
仕組みは、単に仕事を効率化するためのものではありません。
スタッフが迷わず仕事ができる。
新人が成長しやすくなる。
店長に質問が集中しなくなる。
ミスが起きても改善できる。
そして、店長自身が「人を責める」ことから解放される。
つまり、
仕事に対する合理性と、人に対する優しさを、仕組みによって両立させることができます。
大手チェーンには、すでに多くの仕組みがあります。
しかし、どれだけ優れた仕組みでも、すべての店舗にそのまま当てはまるとは限りません。
地域によってお客様は違います。
スタッフも違います。
店舗の規模も違います。
そして、今抱えている課題も違います。
だからこそ店長には、既存の仕組みを守るだけではなく、
「自分の店舗には、どんな仕組みが必要なのか?」
を考える力が求められます。
店長成長コーチングでは、こうした店舗の実際の課題を題材に、問題を発見し、原因を考え、必要な仕組みを作り、実行して、その結果を振り返るところまでを一緒に考えていきます。
「同じ問題が何度も起きている」
「店長がいないと店舗が回らない」
「スタッフを責めたくはないけれど、どう改善すればいいか分からない」
そんなときは、まず一つだけ、繰り返し起きている問題を取り上げてみてください。
そして、
「この問題を、人の頑張りではなく仕組みで解決するとしたら?」
と問いかけてみる。
そこから、店長自身が店舗を経営する力が、一段ずつ育っていきます。



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