スタッフが意見を言わない、注意もできない。その店長の悩みがチームの成長を止めている?

マインドセット

スタッフの可能性を、本当に信じていますか?

「もっとスタッフから意見が出てくる店にしたい」

「決めたルールを守ってほしいけれど、注意すると嫌われそうで言いづらい」

飲食店の店長として、こんな悩みを抱えたことはないでしょうか。

スタッフの意見を聞くことは大切です。店長一人では気づけない問題もありますし、現場で働くスタッフだからこそ思いつく改善策もあるでしょう。

一方で、店舗を運営する以上、守らなければならないルールや基準もあります。必要な注意をしなければ、ほかのスタッフに負担がかかり、チーム全体の雰囲気や成果にも影響します。

では、スタッフの意見を尊重することと、必要なことをきちんと伝えること。この二つを、どう両立すればよいのでしょうか。

そのヒントは、店長自身の「自分とチームの可能性」に対する考え方にあります。

スタッフが意見を言わないのは、本当に主体性がないからでしょうか。注意できないのは、優しすぎるからでしょうか。

もしかすると、店長自身が気づかないうちに、スタッフや自分の成長の可能性を狭めているのかもしれません。

1. 「何か意見はある?」だけでは、いい意見は出てこない

スタッフの主体性を育てるために、意見を聞くことは大切です。

しかし、ただ「何か意見はある?」と聞けば、スタッフが積極的に考えてくれるわけではありません。

例えば、売上が伸び悩んでいる店舗で、店長がスタッフに改善案を求めたとします。

「何か売上を上げる方法はないかな?」

そう聞いても、「特に思いつきません」「もっとお客様に声をかけたらいいと思います」といった回答で終わってしまうことがあります。

もちろん、その意見が悪いわけではありません。ただ、それだけでは具体的な行動につながりにくいでしょう。

そこで、質問を変えてみます。

「最近、お客様が商品を購入しなかった場面で、何か気づいたことはある?」

「お客様からよく聞かれる質問は何だろう?」

「購入を迷っているお客様に、どんな案内をしたら喜んでもらえそう?」

このように具体的な場面を思い出してもらうと、スタッフは自分の経験をもとに考えやすくなります。

さらに、「なぜそう思ったの?」「ほかにも方法はありそう?」と質問を重ねることで、最初の意見を深めることもできます。

質のいい意見を引き出すのは、スタッフの能力だけではありません。店長の質問の仕方も、大きく影響するのです。

スタッフが考えなくなった理由を探す

ここで、もう一つ考えてほしいことがあります。

スタッフは、なぜ自分から意見を出そうとしないのでしょうか。

もともと考えることが苦手な人もいるかもしれません。しかし、それだけが原因とは限りません。

以前、勇気を出して提案したのに、「それは無理だよ」とすぐに否定された。

意見を伝えても、結局何も変わらなかった。

自分の考えを話したら、店長の機嫌が悪くなった。

こうした経験が重なると、スタッフは次第に「余計なことを言わないほうがいい」「どうせ言っても変わらない」と考えるようになるかもしれません。

店長としては、スタッフの主体性を育てようとしているつもりでも、これまでの関わり方が発言を控えさせていた可能性があるのです。

だからこそ、店長は自分の対応を振り返る必要があります。

スタッフの意見を最後まで聞いているか。自分と違う意見でも、まずは理解しようとしているか。採用しない意見に対しても、その理由を説明しているか。

そして、意見を聞く姿勢を一貫して保てているでしょうか。

忙しいときは話を聞かない。自分が納得できる意見だけを評価する。気分によって反応が変わる。

こうした対応があれば、スタッフは店長の顔色をうかがい、本当に考えていることを話さなくなる可能性があります。

スタッフに主体性を求める前に、主体性を発揮できる環境をつくれているか。まずは、そこから見直してみましょう。

2. 店長の質問が変われば、スタッフの成長も変わる

スタッフから意見が出ないとき、店長がすぐに答えを教えてしまうことはないでしょうか。

例えば、料理の提供が遅れているとき、店長が原因を考え、対策を決め、スタッフに指示を出す。

その場の問題は解決するかもしれません。しかし、毎回この方法を繰り返していたら、スタッフは自分で問題を分析し、解決策を考える経験を積めません。

店長がいれば解決できても、店長がいなければ解決できない店舗になってしまいます。

ここで意識したいのは、店長がすべての答えを持つ必要はないということです。

例えば、次のような質問をしてみます。

  • 「どの時間帯に提供が遅れやすい?」
  • 「遅れるとき、厨房やホールでは何が起きている?」
  • 「原因を確かめるために、どんな情報が必要だろう?」
  • 「改善するとしたら、どんな方法が考えられる?」
  • 「まず何を試して、どうやって効果を確認しようか?」

このように質問することで、スタッフは問題を整理し、原因を考え、行動を決める経験を積むことができます。

もちろん、最初から質の高い回答が出てくるとは限りません。質問をしても答えられなかったり、見当違いの意見が出てきたりすることもあるでしょう。

それでも、考える機会を繰り返しつくることが大切です。

店長の役割は、いつでも正解を教えることではありません。スタッフが自分で考え、チームで解決できるように支援することです。

そして、そのためには、スタッフの考えを尊重する姿勢と、考える力を引き出す質問の両方が必要なのです。

3. 嫌われることを恐れて注意しないのは、誰のため?

ここまでは、スタッフの意見を引き出すための関わり方を考えてきました。

次は、チームの可能性を守るために欠かせない「規律」について考えてみましょう。

飲食店では、衛生管理、接客基準、時間管理、報告・連絡・相談など、守るべきルールや約束があります。

これらは、スタッフを縛るためだけにあるのではありません。お客様に安心して利用していただくため、スタッフ同士が協力して働くため、そして店舗の成果を守るためにあります。

ところが、店長の中には、必要な注意をすることに抵抗を感じる人もいます。

「注意したら嫌われるかもしれない」

「せっかくいい雰囲気で働けているのに、関係を悪くしたくない」

「本人も悪気があるわけではないから、今回は見逃そう」

そんな気持ちから、注意を先送りにしてしまうことはないでしょうか。

例えば、あるスタッフが何度も遅刻しているとします。

店長が注意をしなければ、遅刻した本人は問題の重大さに気づかないかもしれません。一方で、時間どおりに出勤しているスタッフは、その人の仕事をカバーしなければならなくなります。

その状態が続けば、「自分たちばかり負担が大きい」「ルールを守らなくても何も言われない」といった不満が生まれる可能性があります。

つまり、一人のスタッフに嫌われないようにした結果、ほかのスタッフの信頼や意欲を損なうこともあるのです。

ここで考えてほしいのは、注意をしないことは、本当にスタッフを大切にすることなのかということです。

本人が改善する機会を失い、ほかのスタッフに負担がかかり、チームの基準が曖昧になってしまう。

そう考えると、必要な注意を避けることは、スタッフとチームの可能性を狭める行動にもなり得ます。

そして、店長自身も、リーダーとして必要な役割を果たす経験を積めなくなってしまいます。

嫌われないことを優先するあまり、伝えるべきことを伝えない。それは、店長自身の成長の可能性を狭めることにもつながるのです。

4. 規律を守らせることと、厳しく叱ることは違う

では、スタッフに注意するときは、どうすればよいのでしょうか。

大切なのは、感情的に叱ることではなく、何が問題なのか、なぜ改善が必要なのかを明確に伝えることです。

例えば、遅刻が続いているスタッフには、次のように伝えられます。

「最近、出勤時間に遅れることが続いているね。開店準備が遅れたり、ほかのスタッフに負担がかかったりするので、時間は守ってほしい。何か難しい事情があるなら、一緒に解決方法を考えたいと思っているよ」

この伝え方では、問題となる行動を曖昧にせず、改善が必要な理由も説明しています。同時に、本人の事情を聞く姿勢も示しています。

注意することは、相手を否定することではありません。

「あなたはだらしない人だ」と人格を決めつけるのではなく、「遅刻が続いている」という事実を伝え、どう改善するかを話し合うことが大切です。

ただし、相手の事情を聞くことと、ルールを曖昧にすることは別です。

事情に応じて必要な支援を検討することはできますが、守るべき基準まで簡単に変えてしまえば、チーム全体の公平性が失われる可能性があります。

店長は、スタッフの話を聞きながらも、守るべきことは明確に伝える必要があります。

相手を尊重することと、必要なことを伝えることは両立できます。

むしろ、本人の成長を信じているからこそ、改善が必要なことを伝える。その姿勢が、信頼関係を育てることにもつながります。

5. 意見を尊重することと、何でも認めることは違う

ここまで読むと、「スタッフの意見を尊重すること」と「規律を守らせること」は、反対のことのように感じるかもしれません。

しかし、この二つは両立できます。

例えば、スタッフから「忙しい時間帯は衛生チェックを省略してもいいのでは」という意見が出たとします。

店長は、意見を出してくれたこと自体は受け止めながらも、衛生管理の基準は守らなければならないと伝えます。

そのうえで、「チェックを省略せずに済むようにするには、どこを改善したらいいだろう?」と質問することができます。

この場合、守るべき基準は変えません。しかし、基準を守りながら仕事を改善する方法については、スタッフと一緒に考えることができます。

これこそ、チームの可能性を引き出す関わり方です。

店長がすべてを決めて指示するだけでは、スタッフが自分で考える機会が失われます。一方で、スタッフの意見を何でも受け入れてしまえば、店舗として守るべき基準が曖昧になります。

必要な基準を明確にし、その範囲の中でスタッフが考え、工夫し、行動できる環境をつくる。

そうすることで、スタッフは自分の考えを活かしながら、チームの一員として責任を果たす経験を積めるのです。

6. 自分とチームの可能性を広げるために、明日からできること

ここまでの内容を、日々の店舗運営で実践するために、まずは二つのことに取り組んでみましょう。

① スタッフへの質問を一つ変える

次にスタッフから相談や報告を受けたとき、すぐに答えを教えるのではなく、一つ質問をしてみてください。

「あなたはどうしたらいいと思う?」

もし答えが曖昧なら、「そう考えた理由は何だろう?」「ほかにはどんな方法がある?」と質問してみます。

最初は時間がかかるかもしれません。それでも、スタッフが自分で考える経験を積み重ねることで、少しずつ自分の意見を持ち、行動につなげる力が育っていきます。

② 先送りにしている注意を一つ振り返る

もう一つは、注意しようと思いながら、伝えられていないことがないかを振り返ることです。

その問題を放置したら、誰にどのような影響があるでしょうか。本人の成長や、ほかのスタッフの働きやすさに影響していないでしょうか。

必要な注意があるなら、感情的にならず、事実と改善してほしいことを整理して伝えてみましょう。

もちろん、すべてを一度に変える必要はありません。

質問を一つ変える。伝えるべきことを一つ伝える。その小さな積み重ねが、店長自身の関わり方を変え、チームの成長につながっていきます。

まとめ:スタッフの可能性を信じるなら、必要な関わりから逃げない

スタッフの意見を聞きながら店舗を運営することは大切です。しかし、ただ意見を求めるだけでは、質の高い意見や主体的な行動は生まれにくいものです。

店長には、一貫した態度で意見を受け止め、適切な質問によってスタッフの考えを深めることが求められます。

また、チームの可能性を守るためには、必要な規律を曖昧にしないことも重要です。嫌われることを恐れて注意を避ければ、本人の成長だけでなく、ほかのスタッフの意欲やチーム全体の信頼を損なうことがあります。

スタッフを信頼することは、何でも認めることではありません。考える機会をつくり、必要なことを伝え、成長を支えることです。

そして、この関わり方を身につけることは、店長自身の成長にもつながります。

あなたは、スタッフの可能性を信じて、考える機会をつくれているでしょうか。嫌われることを恐れて、伝えるべきことを先送りにしていないでしょうか。

まずは、明日の営業で一つだけ行動を変えてみてください。

店長成長コーチングでは、経営スキルだけでなく、コミュニケーションやマインドセットの面からも、店長自身とチームの成長を支援しています。スタッフが自ら考え、責任を持って行動できる店舗を目指したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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