数字を見る店長は、なぜ店舗を変えられるのか?

店長成長コーチング

飲食店の店長に「店舗の数字を見ていますか?」と聞くと、「売上は毎日確認しています」「原価率や人件費も見ています」という答えが返ってくることがあります。

もちろん、数字を確認することは大切です。

ただ、ここで一つ考えてみてほしいことがあります。

「数字を見ること」と「数字を使うこと」は、本当に同じでしょうか?

売上が500万円だった。
先月より5%増えた。
人件費率が少し高い。
客数が減っている。

こうした数字を把握しているだけでは、店舗が良くなるとは限りません。

店長が数字を見る本当の目的は、数字を覚えることでも、経営者に報告することでもありません。

店舗で起きていることを計測し、改善につなげること。

これが「店舗を数字で見る」ということです。

特に多店舗展開している飲食企業では、店長が数字を使いこなせるかどうかによって、店舗運営の質に大きな差が生まれます。

今回は、店長成長コーチングの「経営スキル」の一つである「店舗を数字で見る」について考えてみましょう。


「数字を見る」の目的は、計測すること

数字を見るというと、売上や利益を確認することだと思われがちです。

しかし、本当の目的は計測することにあります。

例えば、店長が「最近、スタッフの接客が悪くなった気がする」と感じたとします。

これは重要な気づきです。

では、具体的に何を改善すればよいのでしょうか。

「接客をもっと頑張ろう」
「笑顔を増やそう」
「お客様を大切にしよう」

これだけでは、改善したのかどうかを判断するのが難しくなります。

一方で、

  • クレーム件数
  • アンケート評価
  • 接客チェックの点数
  • リピート率
  • 提供時間
  • オーダーミス件数

など、何らかの指標で計測できれば、改善前と改善後を比較できます。

つまり、

感じる → 計測する → 比較する → 改善する

という流れを作れるのです。

店長が数字を見る理由は、数字そのものに価値があるからではありません。

「店舗の状態を把握して、次の行動を決めるため」に数字を使うのです。


計測できないものは、具体的な改善につながりにくい

店舗では、「なんとなく」という言葉が意外と多く使われます。

「最近、暇な気がする」

「スタッフのモチベーションが低い気がする」

「客単価が下がっている気がする」

「新人がなかなか育たない」

「忙しいのに利益が残らない」

もちろん、店長の感覚は重要です。

現場に毎日いる店長だからこそ気づける変化があります。

問題は、その感覚だけで改善を進めてしまうことです。

例えば、

「最近売上が悪いから、もっとお客様におすすめしよう」

と決めたとします。

しかし、売上が悪い原因が「客単価」ではなく「客数」だったらどうでしょう。

あるいは客数は十分なのに、原価率が上がって利益が減っているのかもしれません。

さらに調べてみたら、平日の17~19時だけ客数が落ちていた、ということもあります。

「売上が悪い」という一つの事実でも、

どの数字が変化しているのかによって、取るべき行動は変わります。

だからこそ、数字を使って店舗を分解していく必要があります。


「売上が悪い」をそのままにしない店長へ

例えば、月間売上が前年より10%下がっていたとします。

「売上が落ちた」という事実だけを見れば、かなり大きな問題です。

そこで終わらせず、数字を分解してみます。

売上は大まかに、

売上 = 客数 × 客単価

と考えることができます。

すると、

「客数が減ったのか?」

「客単価が下がったのか?」

という次の問いが生まれます。

仮に客数が減っているのであれば、

  • 新規客が減ったのか
  • リピーターが減ったのか
  • 特定の曜日だけ減ったのか
  • 特定の時間帯だけ減ったのか
  • 集客施策に変化があったのか

と掘り下げられます。

客単価が下がっているのであれば、

  • セット注文が減ったのか
  • 追加注文が減ったのか
  • 高単価商品の注文が減ったのか
  • 商品構成が変化したのか

と考えることができます。

ここまでくると、ようやく「何を改善するのか」が見えてきます。

つまり数字は、店長に**「次に何を考えればいいのか」を教えてくれる道具**なのです。


チェーン店の店長に「数字を使う力」が必要な理由

特にチェーン店や多店舗展開している企業では、店長が数字を使いこなすことが重要になります。

なぜなら、経営者がすべての店舗の現場を毎日見ることはできないからです。

10店舗あれば10店舗。

30店舗あれば30店舗。

経営者が一つひとつの店舗に行き、スタッフの動きやお客様の様子を確認するには限界があります。

そこで必要になるのが数字です。

例えば、

「A店は売上が前年比105%」

「B店は客数が前年比95%」

「C店は売上は伸びているが人件費率が高い」

といった情報があれば、経営者は店舗の状況を把握できます。

そして店長側から、

「B店は客数が減っています。特に平日の17~19時に落ちています。近隣競合の状況も確認したところ、○○という変化がありました。そこで来週から○○を試します」

と報告できれば、単なる「数字の報告」ではありません。

数字を使った経営上のコミュニケーションになります。

これができる店長は、経営者から見ても店舗を任せやすくなります。


数字を「報告のためのもの」にすると、店長は成長しない

チェーン店では、本部や経営者からさまざまな数字を求められることがあります。

売上。
客数。
客単価。
原価率。
人件費率。
FLコスト。
利益。

店長としては、

「毎週この数字を報告しなければいけない」

と考えているかもしれません。

しかし、数字を単なる報告資料として扱ってしまうと、数字を見ることが「作業」になってしまいます。

本来は逆です。

数字を見て、

「なぜこの数字になったんだろう?」

と考える。

さらに、

「では、何を変えれば数字が変わるだろう?」

と考える。

そして、

「実際にやってみたら、数字はどう変化しただろう?」

と確認する。

ここまでできて初めて、数字が店舗経営に活きてきます。


店長の数字力に差がつく3つのポイント

1.数字を見て「なぜ?」を考える

売上500万円という数字だけでは、良いのか悪いのか判断できません。

前年、前月、予算、他店舗などと比較して初めて意味が出てきます。

そして、

「なぜこの数字なのか?」

という問いを持ちます。


2.数字を行動に変える

例えば客単価が50円下がっていたとしても、

「客単価が下がりました」

だけでは改善になりません。

「追加注文が減っているので、スタッフがおすすめするタイミングを統一する」

というところまで落とし込む。

数字 → 原因仮説 → 行動

までつなげることが重要です。


3.行動の結果をもう一度数字で確認する

改善策を実行したら終わりではありません。

「実際に数字は変わったのか?」

を確認します。

例えば、

「おすすめ商品の注文率を上げる」

という施策を行ったなら、

実施前と実施後で注文率がどう変化したのかを見る。

変化がなければ、施策を修正する。

これを繰り返すことで、店長自身が「何をすれば店舗の数字が動くのか」を学習していきます。


数字を使える店長は「指示待ち」から抜け出せる

数字を使う力は、単なる経営知識ではありません。

店長の主体性にもつながります。

例えば経営者から、

「今月、売上が厳しいから何とかして」

と言われたとします。

ここで、

「はい、頑張ります」

で終わる店長と、

「売上のどこが落ちているのか確認します。客数と客単価に分けて、特に落ち込みが大きい時間帯を確認します。そのうえで対策を考えます」

と答える店長では、その後の行動が変わります。

後者は、経営者から答えをもらうのではなく、自分で店舗の問題を発見しようとしているからです。

これは「店長 当事者意識」にもつながります。

店長が店舗を経営者視点で見るとは、経営者と同じことをすることではありません。

自分が任されている店舗について、自分で考え、判断し、行動すること。

そのための道具の一つが数字なのです。


ある店長が「売上報告」から「改善提案」に変わった事例

ある多店舗展開の飲食企業で、店長Aさんがいました。

Aさんは真面目で、毎日の売上確認も欠かしません。

経営者から「今月どう?」と聞かれれば、

「今月は売上が予算を少し下回っています」

と答えられます。

しかし、そこで止まっていました。

あるとき、店長と一緒に数字を細かく確認してみました。

すると、月間売上全体が悪いのではなく、平日のアイドルタイムに客数が大きく落ちていることが分かりました。

さらに曜日別に見ると、特定曜日の落ち込みが大きい。

そこで店長は、その曜日の時間帯に絞って客数を確認し、周辺の状況や過去の販促施策も調べました。

そして、

「全体的な売上対策をする」

ではなく、

「特定曜日の特定時間帯の客数を増やす」

というテーマに変更しました。

スタッフからも、

「その時間帯なら、こういう声掛けができそう」

「以前やった○○が反応良かった」

という意見が出てきました。

ここで起きていることは、単なる数字の勉強ではありません。

数字を起点に、

計測する → 問題を発見する → 仮説を立てる → スタッフと考える → 行動する → 結果を確認する

という店舗経営のサイクルが回り始めたのです。

店長の役割も、

「経営者から指示されたことを実行する人」

から、

「数字を見ながら、自分で店舗を改善する人」

へ変わっていきます。


店長成長コーチングでは「数字を読める」だけで終わらせない

店長成長コーチングの「経営スキル:店舗を数字で見る」では、単に売上や利益の計算方法を覚えることを目的にはしません。

大切なのは、

数字を使って、自分の店舗について考えられるようになること。

例えば、

「この数字はどういう状態なのか?」

「なぜこの結果になったのか?」

「どの数字を動かせば結果が変わるのか?」

「そのために、誰が何をするのか?」

「やってみた結果、数字はどう変わったのか?」

という問いを繰り返します。

ここでは、経営スキルだけでなく、コミュニケーションやマインドセットも関係してきます。

数字から課題を見つけても、スタッフにうまく伝えられなければ行動にはつながりません。

また、数字が悪いときに、

「本部が悪い」
「スタッフが足りない」
「立地が悪い」

と外部要因だけで終わってしまえば、改善行動は生まれません。

だからこそ、

経営スキル × コミュニケーション × マインドセット

の3つを組み合わせながら、店長自身が考え、行動し、振り返ることを支援していきます。


最後に

店長に数字を見せるだけでは、店長は数字を使えるようになりません。

重要なのは、

「なぜ数字を見るのか」を理解することです。

数字を見る。

計測する。

変化を発見する。

原因を考える。

行動する。

結果をもう一度計測する。

このサイクルが回り始めると、数字は「本部に報告するためのもの」から、店舗を動かすための道具に変わります。

特に多店舗展開をしている会社では、すべての店舗を経営者が直接見ることはできません。

だからこそ、店長自身が数字を使って店舗を見られることには大きな意味があります。

そして、ここに店長育成の差をつくる余地があります。

「うちの店長は数字を報告できる。でも、数字から自分で課題を見つけられない」

もしそう感じているのであれば、必要なのは新しい数字の知識を詰め込むことだけではないかもしれません。

数字を見て、考え、行動し、結果を振り返る。

その習慣を店長自身につくっていくこと。

それが、店舗を「任された店長」から、「経営者視点で店舗を動かせる店長」へ成長するための一歩になります。

店長成長コーチングでは、企業や店舗の状況に合わせて、数字・コミュニケーション・マインドセットの3つの側面から、店長が自ら考えて行動できる状態づくりをサポートしています。

店長の数字力や店舗運営について、「どこから育てればいいのか分からない」という場合は、まず現在の店長の状況を整理するところから始めてみてください。

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