飲食店の店長として、スタッフ同士が協力し合い、忙しいときでも助け合えるチームを作りたい。そう考えている方は多いのではないでしょうか。
しかし、実際の店舗運営では、スタッフによって仕事への考え方が違ったり、決められたルールが守られなかったり、店長が注意するたびに不満が生まれたりすることがあります。
特に困るのが、仕事はできるものの、チームのルールを守らないスタッフです。作業が速く、売上にも貢献しているため、強く注意することをためらってしまう。結果として、その人だけが特別扱いされ、ほかのスタッフの不満が高まってしまうこともあります。
チーム作りで大切なのは、全員と仲よくすることだけではありません。チームが目指す方向を共有し、誰に対しても一貫したルールを適用することです。
一時的に営業が苦しくなったとしても、決めた基準を守り続ける。その積み重ねが信頼を生み、スタッフが安心して働き、成長できる店舗につながります。
この記事では、飲食店の店長が身につけたいチーム作りの考え方と、継続的に成長する店舗を実現するための具体的な方法を紹介します。
チーム作りは「仲よくすること」だけではない
チーム作りという言葉から、スタッフ同士の仲がよく、明るく楽しい職場をイメージする方もいるでしょう。
もちろん、良好な人間関係は大切です。スタッフ同士が気軽に相談でき、困ったときに助け合える職場は、働きやすさにもつながります。
しかし、仲がよいだけでは、強いチームになるとは限りません。
例えば、スタッフ同士の関係は良好でも、次のような状態になっていないでしょうか。
- 忙しいときに自分の担当業務だけを優先し、周囲を助けない
- 仲のよいスタッフ同士で仕事のルールを省略する
- ベテランスタッフのやり方が、店舗の標準ルールより優先される
- 店長がいないと判断できず、業務が止まってしまう
- 問題が起きても、誰も注意や改善の提案をしない
このような店舗では、表面上の雰囲気がよくても、組織としての成長が止まってしまう可能性があります。
強いチームとは、単に仲がよい集団ではありません。
共通の目的を持ち、必要なルールを守りながら、互いに協力して成果を出せる集団です。
店長には、スタッフ同士の関係をよくするだけでなく、チーム全体が成果を出せる環境をつくる役割があります。
リーダーシップの考え方については、こちらの記事も参考にしてください。
店長育成の本質は「優秀なプレイヤーを作ること」ではなく「リーダーを育てること」にある
成長し続ける店舗の土台は「ルールの一貫性」
チーム作りで特に重要なのが、ルールの一貫性です。
飲食店では、衛生管理、接客、勤怠、報告・連絡・相談、業務手順など、守るべきルールが数多くあります。
しかし、忙しくなると、ついルールを省略したくなることがあります。
「今日は人手が足りないから、いつもの確認は省略しよう」
「このスタッフは仕事ができるから、細かいことは言わなくてもいいだろう」
「今は売上を作ることが優先だから、少しくらいのルール違反は仕方ない」
このような判断が繰り返されると、スタッフは何を基準に行動すればよいのか分からなくなります。
さらに、店長が人によって注意の仕方を変えたり、状況によってルールを都合よく変えたりすれば、不公平感が生まれます。
一方、ルールが一貫している店舗では、スタッフが判断基準を理解しやすくなります。
何を優先するのか。どこまで自分で判断してよいのか。どのような行動が評価されるのか。
こうした基準が明確になると、スタッフは店長の顔色をうかがうのではなく、共通の基準に基づいて行動できるようになります。
一時的な苦しさを乗り越えられるチームを作る
ルールを一貫して守ることは、簡単ではありません。
例えば、忙しい時間帯に人手が足りず、決められた手順を守ると料理の提供が遅れてしまう場面があるとします。
その場だけを考えれば、手順を省略したほうが楽かもしれません。しかし、それが常態化すれば、品質のばらつきや安全上の問題につながる可能性があります。
大切なのは、ルールを守ることを求めると同時に、守れない原因を改善することです。
人員配置に問題があるなら、シフトや役割分担を見直す。手順が複雑すぎるなら、業務の進め方を改善する。教育が不足しているなら、必要な指導の時間を確保する。
ルールを守れない状況を放置するのではなく、ルールを守れる仕組みを作るのです。
ただし、すべてのルールを一切変更してはいけないという意味ではありません。現場の実態に合わないルールは見直す必要があります。重要なのは、場当たり的に例外を認めるのではなく、必要性を検討し、変更するなら正式に基準を更新して全員に共有することです。
守るべき基準は一貫させ、改善すべき仕組みは柔軟に変える。 これが、継続的に成長する店舗の土台になります。
チームの方向性を共有する
ルールを守ってもらうためには、ルールそのものだけでなく、何のために守るのかを理解してもらうことも重要です。
例えば、「お客様が来店したら必ず挨拶をする」というルールがあったとします。
ただ「挨拶をしてください」と伝えるだけでは、スタッフによって受け止め方が異なるかもしれません。
一方、「お客様に安心して過ごしていただき、気持ちよく食事を始めてもらうために挨拶をする」と目的まで伝えれば、スタッフは行動の意味を理解しやすくなります。
チームの方向性を共有するために、店長は次の3つを明確にしましょう。
1.どんな店舗を目指すのか
「地域で一番愛される店」「初めてのお客様も安心して過ごせる店」「スタッフ全員が成長できる店」など、目指す姿を言葉にします。
方向性が曖昧なままでは、スタッフは目の前の業務をこなすだけになりがちです。
2.何を大切にするのか
お客様への接し方、仲間との協力、衛生管理、時間を守ることなど、店舗として大切にする価値観を明確にします。
3.日々どんな行動を取るのか
理念や価値観を、現場で実践できる行動に落とし込みます。
例えば、「仲間を大切にする」という価値観であれば、「自分の仕事が終わったら周囲の進捗を確認する」「困っているスタッフを見かけたら声をかける」といった行動にできます。
こうして方向性と行動基準を結びつけることで、チーム全員が同じ方向を向きやすくなります。
仕事ができる人でも、ルールや方向性に合わなければどうする?
チーム作りで、店長が特に悩みやすいのがこの問題です。
作業が速く、接客も上手で、売上にも貢献している。しかし、決められたルールを守らない。後輩に悪い影響を与える。自分のやり方にこだわり、チームの方針に従わない。
こうしたスタッフに対して、店長はどう向き合えばよいのでしょうか。
まず理解したいのは、個人の仕事の能力と、チームの一員として成果を出す能力は別だということです。
どれだけ作業が速くても、周囲のスタッフが萎縮してしまったり、ルールを守らなくなったりすれば、店舗全体の成果を損なう可能性があります。
例えば、ベテランスタッフが新人に対して「そんな手順は面倒だから省略していい」と教えていたとします。
本人は作業を効率化しているつもりかもしれません。しかし、それが衛生管理や品質に関わる手順であれば、店舗として見過ごすことはできません。
また、ほかのスタッフがルールを守っているのに、その人だけが例外として扱われれば、不公平感も生まれます。
そのため、店長には、個人の能力だけでなく、チーム全体にどのような影響を与えているのかを見る視点が必要です。
まずは期待する行動を明確に伝える
ルールや方向性に合わない行動が見られたら、曖昧な注意で済ませず、具体的に伝えましょう。
「もっと協調性を持ってほしい」では、本人が何を改善すればよいのか分かりません。
「決められた確認手順を省略しないこと」「新人に教えるときも、店舗の標準手順に沿って説明すること」など、求める行動を明確にします。
そのうえで、本人の考えや、ルールを守れない理由も確認します。
必要な教育や支援を行い、改善の機会を設けることが大切です。
改善が難しい場合は、役割や配置も見直す
期待する行動を伝え、必要な支援を行っても改善が見られない場合は、本人の役割や配置が適切かどうかを検討する必要があります。
例えば、個人の作業能力は高くても、後輩への指導で周囲に悪影響を与えるのであれば、教育担当から外すなど、役割の見直しが考えられます。
それでも、本人が繰り返し重要なルールを無視し、チームの方向性に反する行動を続けるのであれば、雇用関係を含めて、組織にとって適切な対応を検討しなければならない場合もあります。
これは、気に入らない人を排除するという話ではありません。
期待する行動を明確にし、公平な基準で指導し、改善の機会を設けたうえで判断するということです。雇用上の対応については、就業規則や労働関係法令を踏まえ、必要に応じて専門家に相談することも重要です。
どれほど仕事ができる人でも、チームの土台を壊す行動を無条件に許容してはいけません。
この判断は、店長にとって精神的な負担が大きいものです。短期的には、優秀なスタッフが抜けることで店舗の営業が苦しくなるかもしれません。
しかし、目の前の人手不足を恐れてルールを曲げ続ければ、長期的にはほかのスタッフの信頼や成長機会を失う可能性があります。
目指すべきなのは、特定の個人に依存する店舗ではなく、共通の基準を守ることでチーム全体が成果を出せる店舗です。
店長が実践したいチーム作りの4つの行動
では、日々の店舗運営で何から始めればよいのでしょうか。
1.店舗のルールを整理する
まずは、店舗で守るべきルールを整理しましょう。
衛生管理、接客、報告・連絡・相談、勤務態度、スタッフ間の協力など、特に重要な項目を洗い出します。
ルールが曖昧な場合は、店長の判断だけで決めるのではなく、会社の方針や既存のマニュアルと照らし合わせ、必要に応じて上司や本部と確認します。
2.朝礼やミーティングで方向性を共有する
店舗の目標や大切にしたい行動を、定期的にスタッフへ伝えましょう。
単にルールを読み上げるのではなく、「なぜそれが大切なのか」「実践するとお客様や仲間にどのような良い影響があるのか」まで共有します。
3.ルールを守る行動を認める
問題が起きたときだけ注意していると、スタッフは「怒られないためにルールを守る」という受け身の姿勢になりやすくなります。
決められた手順を守っている、困っている仲間を助けている、店舗の方向性に沿った行動をしている。そうした姿を見つけたら、具体的に認めましょう。
「忙しい中でも確認を省略しなかったね。ありがとう。あの行動が品質を守ることにつながっているよ」
このように、行動とその意味を結びつけて伝えることで、チームとして大切にする基準が浸透しやすくなります。
4.店長自身がルールを守る
スタッフにルールを守るよう求めながら、店長自身が守っていなければ、説得力はありません。
店長が忙しいときでも決められた手順を守り、必要な報告を行い、公平な基準でスタッフに接する。その姿勢が、チームの信頼につながります。
ルールの一貫性は、スタッフだけに求めるものではありません。店長自身が実践し続けることが重要です。
まとめ:一貫したルールが、成長し続けるチームを作る
飲食店のチーム作りで大切なのは、全員と仲よくすることだけではありません。共通の方向性を持ち、ルールを一貫して守り、チーム全体で成果を出せる環境をつくることです。
今回のポイントを振り返りましょう。
- チーム作りは、仲のよさだけでなく共通の目的と行動基準が重要
- ルールを場当たり的に変えず、誰に対しても一貫した基準を適用する
- ルールの目的を説明し、会社や店舗の方向性と結びつける
- 仕事ができる人でも、チームに悪影響を与える行動は放置しない
- 改善の機会や必要な支援を設け、それでも難しい場合は役割や配置を見直す
- 店長自身がルールを守り、望ましい行動を率先して実践する
ルールを一貫して守ることは、短期的には難しい判断を伴う場合があります。人手が足りないとき、売上が苦しいとき、優秀なスタッフが離れるかもしれないとき。そんな場面ほど、店長のリーダーシップが問われます。
もちろん、ルールを守ることだけが目的ではありません。現場に合わない仕組みは改善し、スタッフがルールを守りながら成果を出せる環境を整えることも必要です。
大切なのは、目先の都合で基準を曲げるのではなく、チームが長期的に成長できる判断を積み重ねることです。
店長一人が頑張る店舗から、スタッフ全員が共通の方向性を理解し、自ら考えて行動する店舗へ。その変化が、持続的な成長につながります。
店長のリーダーシップを高め、チーム全体で成果を出す店舗へ
「スタッフによってルールの守り方が違う」「注意すると不満が生まれる」「特定のスタッフがいないと店舗が回らない」——こうした悩みは、チームの方向性やルールの一貫性、店長のコミュニケーション力と深く関係しています。
ミルラボの「店長成長コーチング」では、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの側面から、店長が経営者目線で店舗を捉え、スタッフの主体性を引き出せるよう支援します。
個人の頑張りに依存するのではなく、チーム全体で成果を出し、継続的に成長できる店舗を目指したい方は、ぜひ一度ご相談ください。



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