「計画を立てたけれど、思ったような結果が出なかった」
「新しい施策をやってみたけれど、売上が上がらなかった」
「スタッフに任せてみたけれど、うまくいかなかった」
店舗運営をしていれば、こうしたことは珍しくありません。
むしろ、何をやっても一度も失敗しない店舗のほうが少ないでしょう。
それなのに、PDCAを「計画通りに実行して、うまくいくための方法」だと考えてしまうと、うまくいかなかったときに、
「自分の計画が悪かった」
「スタッフの能力が足りなかった」
「今回は仕方なかった」
と終わってしまいます。
しかし、本来のPDCAは違います。
うまくいかなかったことも含めて、次の行動を良くしていくための仕組みです。
だからこそ、店長にとってPDCAを回すうえで重要なのは、「失敗しないこと」ではありません。
失敗したときに、めげずに次の改善につなげること。
そして、そのために特に重要なのが、
「履歴・記録を残すこと」
です。
何を考え、何をやり、何が起き、次に何を変えるのか。
これを記録できる店長は、同じ失敗を繰り返しにくくなります。
今回は、店長成長コーチングの「PDCA・問題解決」という経営スキルについて、基本的な考え方から、飲食店の現場でどう使うのかまで解説します。
そもそもPDCAと問題解決とは?
まずは、PDCAと問題解決について一般的な考え方を整理してみましょう。
PDCAとは何か
PDCAは、
- Plan:計画
- Do:実行
- Check:評価・確認
- Action:改善
の頭文字を取ったものです。
簡単に言えば、
「考える → やってみる → 結果を見る → 改善する」
というサイクルです。
例えば、飲食店で「平均客単価を上げたい」という目標があったとします。
Plan
おすすめ商品の提案を増やす。
Do
スタッフに提案方法を伝え、1週間実施する。
Check
平均客単価や提案数などを確認する。
Action
効果があった方法は続け、うまくいかなかった部分を変更する。
そして、また次のPlanにつなげます。
ここで重要なのは、
Checkで「うまくいったか、失敗したか」を判断して終わりではない
ということです。
「なぜそうなったのか?」
を考え、
「次はどうするか?」
につなげます。
問題解決とは何か
問題解決は、単純に「問題に対する答えを出すこと」ではありません。
まず、
「本当に解決すべき問題は何なのか?」
を明確にします。
例えば、
「売上が悪い」
という状態だけでは、問題の中身が分かりません。
売上が悪い理由は、
- 見込客が少ない
- 成約率が低い
- 平均リピート回数が少ない
- 平均客単価が低い
- 利益率が低い
など、さまざまな可能性があります。
そこで、数字や現場の状況を確認し、
問題を具体化する → 原因を考える → 解決策を決める → 実行する → 結果を見る
という流れを作ります。
つまり、PDCAと問題解決は別々のものではありません。
問題を見つけ、
解決策を考え、
実行し、
結果を確認し、
さらに問題を発見して改善する。
この繰り返しによって、店舗は少しずつ良くなっていきます。
PDCAには「失敗すること」が最初から含まれている
ここは、店長にぜひ知っておいてほしいポイントです。
PDCAには、
「最初から正解を出す」
という考え方は含まれていません。
むしろ、
「やってみないと分からないことがある」
という前提があります。
例えば、
「この時間帯におすすめ商品の提案を増やせば、平均客単価が上がるはず」
と考えたとします。
実際にやってみた。
ところが、数字はほとんど変わらなかった。
これは「失敗」でしょうか?
もちろん、期待した結果が出なかったという意味では失敗です。
しかし、PDCAの視点では、ここからが重要です。
「おすすめ商品の提案を増やしても、今回の条件では客単価は上がらなかった」
という事実が分かりました。
これは次の施策を考えるための情報です。
例えば、
「提案する商品が悪かったのか?」
「提案するタイミングが悪かったのか?」
「スタッフの伝え方が悪かったのか?」
「そもそも客単価を上げることより、別のKPIを改善した方がいいのか?」
と考えられます。
つまり、
失敗は、次の改善のための材料になる。
これがPDCAの考え方です。
店長に必要なのは「めげない」というスキル
店舗改善を続けるうえで、意外と重要なのが「めげないこと」です。
これは精神論に聞こえるかもしれません。
しかし、経営スキルとして考えてみると、かなり重要な能力です。
なぜなら、店舗改善には、
一回やっただけでは結果が出ないことが多い
からです。
例えば、新しい接客方法を試した。
結果が出なかった。
「じゃあ、やめよう」
ではなく、
「何が原因だったのか?」
を考える。
もう一度やってみる。
それでも結果が出なければ、別の方法を試す。
この繰り返しです。
もちろん、何でも続ければいいわけではありません。
効果がない施策を永遠に続けるのではなく、
「結果を見て、やめる」「変える」「続ける」
を判断することが大切です。
だからこそ、
「失敗したら終わり」ではなく、「失敗したら次の判断材料が増えた」
と考えられることが、店長の成長につながります。
PDCAで一番重要なのは「記録」かもしれない
PDCAというと、
「計画を立てること」
「行動すること」
に注目されがちです。
しかし、店舗経営という観点から見ると、特に大切なのが、
履歴・記録を残すこと
です。
なぜなら、記録がなければ、
「前に何をやったのか?」
「そのとき、どういう結果だったのか?」
「なぜ、その方法をやめたのか?」
が分からなくなるからです。
例えば、ある店長が異動してきたとします。
前任者が、
「以前、このキャンペーンをやったけど効果がなかった」
と言っていた。
しかし、なぜ効果がなかったのかは分からない。
どんな条件で実施したのかも分からない。
何人のお客様に実施したのかも分からない。
これでは、同じ施策を再び試してしまう可能性があります。
一方、
「○月○日〜○月○日、○○を実施。対象は○○。実施前の平均客単価は○円、実施後は○円。結果として大きな変化は見られなかった。次回は○○の条件で検証する」
と残っていれば、話は変わります。
その記録は、店舗の財産になります。
記録は「店舗の経験」を「会社の資産」に変える
店長が経験したことは、その店長だけのものにしてはいけません。
例えば、ある店長が、
「雨の日は○○という提案が効果的だった」
という発見をしたとします。
店長の頭の中だけにあれば、その店長が異動したら消えてしまいます。
しかし、
- いつ
- どんな状況で
- 何をやって
- どんな結果になったか
を記録しておけば、次の店長が活用できます。
これは多店舗展開をする会社にとって、非常に重要です。
一店舗で生まれた成功や失敗を、他店舗でも活用できるからです。
つまり、
記録することは、店舗を仕組み化することにもつながります。
「日報」は報告書ではなく、改善のためのデータにする
飲食店では日報を作っている会社も多いでしょう。
しかし、日報が単なる「今日の報告」で終わっているケースもあります。
例えば、
「本日の売上○万円」
「来店○名」
「特に問題なし」
だけでは、未来の改善にはあまり使えません。
もちろん基本的な記録としては必要です。
そこに、
- 今日気づいたこと
- 数字の変化
- うまくいったこと
- うまくいかなかったこと
- その原因についての仮説
- 明日試すこと
などを残していくと、日報の意味が変わります。
例えば、
「雨天のため来店数は少なかった。一方、スタッフがおすすめ商品を積極的に提案した結果、平均客単価は通常より高かった。明日も同じ方法を継続して数字を確認する。」
ここまで残っていれば、翌日の行動につながります。
日報が、
「過去を報告するもの」から「未来の行動を決めるもの」
に変わるわけです。
問題解決では「原因」と「症状」を間違えない
PDCAを回すとき、もう一つ重要なのが問題の捉え方です。
例えば、
「スタッフがミスをする」
という問題があったとします。
そこで、
「もっと注意してください」
と伝える。
しかし、これでは問題が解決しないかもしれません。
なぜなら、
「ミスが多い」というのは症状であって、原因ではない可能性がある
からです。
例えば、
「新人がミスする」
↓
「教育が十分ではない」
↓
「教育内容が人によって違う」
↓
「新人教育の基準が決まっていない」
というところまで掘り下げれば、
「新人の能力を上げる」
ではなく、
「新人教育の仕組みを整える」
という課題が見えてきます。
もちろん、ここでも最初から原因を決めつけてはいけません。
実際の現場を見て、話を聞いて、記録や数字を確認する。
そのうえで仮説を立てる。
これが問題解決の基本です。
店長が問題解決するときの5つの問い
現場で問題が起きたときは、次の問いを使ってみてください。
①何が起きている?
まずは事実を確認します。
「スタッフのやる気がない」ではなく、
「朝礼で発言するスタッフが3人から1人に減った」
など、できるだけ具体的にします。
②いつから起きている?
最近なのか、以前からなのか。
時期によって原因が変わることがあります。
③なぜ起きている?
すぐに答えを決めず、複数の可能性を考えます。
④自分たちで変えられることは何か?
会社や本部に依頼することと、店長が自分でできることを分けます。
⑤次に何を試す?
一度に全部変えようとせず、まず試すことを決めます。
そして、
「何を試したのか」を記録する。
ここまでやって初めて、次のPDCAにつながります。
「記録→改善」を習慣にする
PDCAを特別な会議だけで行おうとすると、なかなか定着しません。
おすすめなのは、普段の店舗運営に組み込むことです。
例えば、
毎日
「今日気づいたこと」を1つ記録する。
毎週
数字と現場の変化を確認する。
毎月
「何を試して、何が分かったか」を振り返る。
次月
改善テーマを1つ決める。
これだけでも、店舗の改善スピードは変わります。
大切なのは、たくさん記録することではありません。
次の判断に使える記録を残すことです。
事例:売上が落ちた店長が「失敗」を次の施策に変えた
ある店舗で、売上が数か月続けて低下していました。
店長は「新規のお客様を増やそう」と考え、店舗独自のキャンペーンを実施しました。
しかし、結果は期待したほど伸びませんでした。
以前の店長なら、
「キャンペーンは失敗だった」
で終わっていたかもしれません。
しかし今回は、実施内容を記録していました。
- 実施期間
- 対象となるお客様
- 施策内容
- 実施人数
- 売上
- 平均客単価
- お客様の反応
- スタッフの感想
これらを振り返ると、キャンペーンそのものよりも、
「既存のお客様には反応が良かった」
ということが分かりました。
そこで店長は、次の施策として「新規客を増やす」ことだけにこだわらず、
「既存のお客様に、もう一度来てもらう」
ことに取り組むことにしました。
さらに、次の施策も同じように記録する。
結果を見る。
改善する。
また試す。
こうして、最初の「失敗」が、次の施策を考えるための材料になりました。
重要なのは、最初の施策が成功したかどうかだけではありません。
「その施策から何を学び、次に何を変えたのか」
です。
PDCAを回せる店長は「答えを知っている人」ではない
店長として成長すると、
「正解を知っている人にならなければ」
と思うかもしれません。
しかし、店舗経営では、すべての答えを最初から知ることはできません。
地域も違う。
お客様も違う。
スタッフも違う。
競合も違う。
だからこそ、
仮説を立てる → 試す → 結果を見る → 改善する
という能力が重要になります。
これは「何でも試せばいい」という意味ではありません。
数字や現場の情報を見て、仮説を立てる。
小さく試す。
結果を確認する。
そして、記録を残す。
その経験を次に活かす。
このサイクルを繰り返せる店長は、環境が変わっても対応しやすくなります。
「失敗しない店長」より「失敗を活かせる店長」
経営者から見れば、
「失敗しない店長」
は頼もしく見えるかもしれません。
しかし、私はそれ以上に、
「失敗を次の改善につなげられる店長」
が強い店長だと考えます。
新しいことに挑戦すれば、失敗することがあります。
スタッフに任せれば、うまくいかないことがあります。
施策を打っても、数字が動かないことがあります。
それは店舗経営では珍しいことではありません。
重要なのは、
「ダメだった」
で終わらないこと。
「なぜダメだったのか?」
「何が分かったのか?」
「次は何を変えるのか?」
を考えることです。
そして、その経験を記録に残す。
そうすれば、失敗は店舗の財産になります。
最後に
PDCAは、「計画通りに物事を進めるための方法」だけではありません。
むしろ店舗経営においては、
「思った通りにいかなかったとき、どう改善するか」
が重要です。
だから、PDCAには最初から失敗が含まれています。
うまくいかない。
だから考える。
もう一度試す。
それでもダメなら変える。
そのためには、めげないことも店長のスキルの一つです。
そして、もう一つ忘れてはいけないのが、
履歴・記録を残すこと。
何を考えたのか。
何を実行したのか。
どんな結果になったのか。
何が分かったのか。
次に何をするのか。
これを残しておけば、店長自身の経験が蓄積されていきます。
さらに、その記録は次の店長や他店舗にも引き継げる会社の資産になります。
店長成長コーチングでは、PDCAの知識を覚えるだけではなく、実際の店舗の問題を題材に、
「何が問題なのか」
「何が原因なのか」
「何を試すのか」
「結果から何を学ぶのか」
「次に何を変えるのか」
を一緒に考えます。
もし今、店舗で「同じ問題が何度も起きている」「施策をやっても次につながらない」と感じているなら、まず一つだけ記録してみてください。
「何をやったか」ではなく、「何をやって、何が分かったか」。
この記録が増えていくほど、店舗は「経験から学ぶ組織」に変わっていきます。
そして店長自身も、
「問題が起きたら困る人」から、「問題が起きても改善できる人」へ。
それが、PDCA・問題解決という経営スキルを身につける大きな意味です。



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