「また人件費が上がった……。」
最低賃金の引き上げや人手不足の影響で、多くの飲食店が人件費の高騰に悩んでいます。
店長会議でも「人件費を削減しろ」「シフトを見直そう」という話題は頻繁に出るでしょう。
しかし、本当に考えるべきなのは人件費そのものではありません。
重要なのは、「人件費率」と「生産性」です。
例えば、人件費が20万円増えても、それ以上に売上や付加価値が増えていれば、会社は利益を残すことができます。
逆に、人件費だけを減らした結果、サービス品質が下がり、お客様が離れてしまえば本末転倒です。
店長は価格を決める立場ではないことも多いですが、人件費の使い方や生産性を高めることは現場で大きく改善できます。
今回は、お金の基礎として知っておきたい「人件費が高騰する本当の問題」と、その改善方法について考えていきます。
人件費高騰が引き起こす3つの悪循環
1. 利益率が下がり、投資ができなくなる
人件費は店舗経営において最も大きな固定費の一つです。
売上が変わらないまま人件費だけが上昇すると、利益率は低下します。
利益が減れば、
- 新しい設備への投資
- 人材育成
- 福利厚生の充実
- 店舗改善
といった未来への投資が難しくなります。
結果として、お店の魅力は少しずつ失われていきます。
2. 人件費削減が目的になってしまう
利益が苦しくなると、
「人を減らそう」
「シフトを削ろう」
という発想になりがちです。
もちろん適正な人員配置は重要です。
しかし、人件費だけを削ると、
- 接客品質の低下
- スタッフの疲弊
- 離職率の上昇
につながります。
飲食店離職率が高い店舗ほど、この悪循環に陥っているケースは少なくありません。
3. 店長が数字を見ることを避ける
人件費率を見るたびに怒られる。
そんな経験をすると、数字を見ること自体が嫌になります。
しかし数字は評価ではなく、改善のヒントです。
経営者視点を持つ店長ほど、数字から次の行動を考えています。
理想は「人件費が高くても利益が残る店舗」
人件費が高いこと自体は問題ではありません。
優秀なスタッフが集まり、高い給与を払いながら利益を出している会社は数多くあります。
違いは何でしょうか。
それは一人ひとりが生み出す価値です。
例えば、
- 接客品質が高い
- 客単価が上がる
- リピート率が高い
- オペレーションが効率化されている
こうした店舗では、人件費が増えても利益率を維持できます。
目指すべきなのは「人件費を下げる店」ではなく、「人件費以上の価値を生み出す店」です。
人件費が高騰し続ける会社組織の3つの課題
1. 生産性を管理していない
「人件費率が高い」
という結果だけを見ても改善はできません。
見るべきは、
- 一人あたり売上
- 時間帯別売上
- 客席回転率
- 作業効率
など、生産性に関する数字です。
数字を分解することで、改善ポイントが見えてきます。
2. 教育不足で一人前になるまで時間がかかる
人材が育たない原因の一つは教育の仕組み不足です。
教育期間が長ければ、生産性は上がりません。
一方で、店長教育方法や育成の仕組みが整っている店舗では、短期間で戦力化できます。
教育はコストではなく、生産性向上への投資です。
3. 現場任せの運営になっている
忙しい店舗ほど、
「なんとか今日を乗り切ろう」
という運営になります。
しかし長期的には、
- 作業改善
- レイアウト改善
- マニュアル整備
- システム導入
などの改善が必要です。
こうした仕組み化が、人件費率改善につながります。
店長自身が持ちたい3つの経営者視点
1. 人件費ではなく「人への投資」と考える
スタッフはコストではありません。
お客様に価値を届ける存在です。
人件費を払っているのではなく、
価値を生み出す人へ投資している。
その考え方が重要です。
2. 人件費率を見る習慣を持つ
人件費額だけを見ると、
「高い」
で終わってしまいます。
しかし、
売上とのバランスを示す人件費率を見ることで、
改善ポイントが見えてきます。
店長とは、数字から現場改善を考える役割でもあります。
3. 生産性を高める仕事をする
生産性とは、
「少ない人数で働く」
ことではありません。
「同じ人数でより大きな価値を生み出す」
ことです。
例えば、
- 動線改善
- 教育効率向上
- 作業標準化
- ピーク時間の役割分担
など、小さな改善が積み重なることで人件費率は改善していきます。
人件費率を改善するために今日からできる5つのこと
1. 人件費額ではなく人件費率を見る
売上とのバランスを見る習慣を持ちましょう。
数字は改善のスタートラインです。
2. 生産性を測る指標を一つ決める
例えば、
- 一人あたり売上
- 客数
- 客単価
- 提供時間
などです。
一つでも継続して見るだけで改善意識が高まります。
3. 教育時間を投資と考える
教育している時間は利益を生まないように見えます。
しかし未来の利益を作っています。
飲食人材育成は、人件費率改善にも直結する重要な仕事です。
4. 作業を仕組み化する
「この人しかできない仕事」
を減らすことが生産性向上につながります。
マニュアル化や役割分担を見直しましょう。
5. 「人件費を下げる」ではなく「価値を上げる」を考える
ここが最も重要です。
人件費を上げても、人件費率を下げる方法はあります。
例えば、
- 客単価を上げる
- リピート率を上げる
- 回転率を上げる
- 作業時間を短縮する
こうした改善によって、一人あたりが生み出す価値を高めることができます。
人件費を削ることだけが答えではありません。
【事例】「シフト削減」ではなく「生産性改善」で利益率を回復した店舗
ある飲食店では、人件費率が目標を大きく上回っていました。
当初、本部からはシフト削減の指示が出ましたが、店長は別の方法を考えました。
まず、ピーク時間の動線を見直し、仕込み手順を標準化。
新人教育用のチェックリストを作成し、誰でも同じ品質で仕事ができる仕組みを整えました。
さらに、おすすめ商品の声掛けを徹底し、客単価向上にも取り組みました。
その結果、人員数をほとんど変えることなく売上が伸び、人件費率は改善。
スタッフからも「以前より働きやすい」という声が増え、離職率も下がりました。
店長は後にこう話しています。
「人件費を減らすことばかり考えていましたが、本当に必要だったのは、一人ひとりが価値を発揮できる環境を作ることでした。」
最後に
人件費の高騰は、今後もしばらく続く可能性があります。
だからこそ、「人件費を削る」発想だけでは限界があります。
店長に求められるのは、人件費をコントロールすることではなく、生産性を高めることです。
価格を決める権限がなくても、現場の改善によって利益率は変えられます。
そのためには、数字を恐れず、人件費率や生産性を改善のヒントとして活用することが大切です。
「人件費が高いから利益が出ない」のではなく、「人件費以上の価値を生み出せているか」という視点を持つこと。
それが経営者視点を持つ店長への第一歩であり、多店舗展開でも活躍できる店長へ成長するためのお金の基礎となるでしょう。


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