― 原因は数字が苦手だからではなく「数字が怖くなる組織」にある ―
「数字の話をするとスタッフの反応が悪くなる」
「売上や原価率を共有しても興味を持たない」
「店長候補なのに数字に関心を持とうとしない」
店長や経営者から、このような悩みを聞くことがあります。
現場の仕事は一生懸命やっている。
接客も真面目。
責任感もある。
それなのに、数字の話になると途端に苦手意識を示したり、避けたりする。
すると、
「数字に弱い人なんだ」
「経営者向きではない」
「意識が低い」
と考えてしまいがちです。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
実は、数字を見ようとしない人の多くは、数字が嫌いなのではありません。
数字を見ることによって、
「怒られる」
「責められる」
「評価を下げられる」
という経験をしてきた可能性があります。
つまり、
数字を評価ではなく罰として捉えている
のです。
本来、数字とは人を責めるためのものではありません。
現状を把握し、より良い行動を考えるための情報です。
今回は、数字を見ようとしない組織の問題と、数字を活用できる店長になるための考え方について考えていきます。
数字を見ない組織が抱える3つの問題
1. 感覚や経験だけで判断するようになる
数字を見ない組織では、
「たぶん大丈夫」
「なんとなく忙しかった」
「最近売れている気がする」
という感覚で判断するようになります。
しかし、感覚と現実は一致するとは限りません。
忙しくても利益は減っているかもしれません。
客数が増えても客単価が下がっているかもしれません。
数字を見なければ、本当の問題は見えてきません。
2. 改善活動が場当たり的になる
数字がなければ改善の効果も分かりません。
売上を伸ばすためにキャンペーンを行った。
新メニューを導入した。
接客を改善した。
しかし、
「それで本当に良くなったのか?」
が分からなければ、改善は経験や勘に頼ることになります。
数字は、改善の成果を確認するための道具でもあります。
3. 次世代リーダーが育たない
店長やリーダーに必要なのは、現場を回す能力だけではありません。
現状を分析し、
課題を発見し、
行動を決める。
このサイクルを回せることが重要です。
数字を見ない習慣が続くと、将来のリーダー候補も育たなくなります。
理想は「数字を使って会話する組織」
理想は、全員が財務諸表を読めることではありません。
高度な経営分析ができる必要もありません。
目指すべきは、
数字から考え、行動を決められる組織
です。
例えば、
「客数が減っているから新規集客を強化しよう」
「客単価が下がっているからおすすめ商品の案内を見直そう」
「人件費率が上がっているからシフトを調整しよう」
というように、
数字を見て、
考えて、
行動する。
このサイクルが自然に回ることが理想です。
数字は目的ではありません。
行動を決めるための情報なのです。
数字嫌いを生む会社組織の3つの課題
1. 数字を罰として使っている
売上が下がると怒られる。
予算未達だと責められる。
目標を達成できないと評価が下がる。
こうした環境では、人は数字を見ること自体を避けるようになります。
数字を見ると嫌な思いをするからです。
本来、数字とは人を責めるものではなく、問題を発見するためのものです。
2. 数字の意味を教えていない
売上。
利益率。
客数。
原価率。
人件費率。
KPI。
これらの数字を共有しても、意味が分からなければ活用できません。
「何を見るのか」
だけでなく、
「なぜ見るのか」
を理解することが重要です。
3. 数字と行動が結び付いていない
数字を報告して終わり。
会議で共有して終わり。
これでは数字は単なる資料になります。
数字を見たら、
「だから何をするのか」
まで考える仕組みが必要です。
店長自身が陥りやすい3つの落とし穴
1. 数字だけを追いかけてしまう
売上。
利益率。
客数。
これらは重要です。
しかし数字だけを追いかけると、
「数字のための仕事」
になってしまいます。
数字は結果であり、本当に変えるべきは行動です。
2. 数字を説明せずに共有している
店長自身は理解していても、
スタッフには分からない。
これは非常によくあります。
「売上が前年比95%だった」
と言われても、
何が問題なのか。
どうすればいいのか。
分からなければ行動できません。
数字を読み取ってアクションを考えるサポートこそ必要なのです。
3. 数字を評価の道具にしてしまう
数字を使うことと、
数字で人を責めることは違います。
数字が悪かった時に、
「誰の責任だ」
という話になると、人は数字を隠すようになります。
見るべきなのは人ではなく仕組みです。
数字を味方にするための5つの方法
少数の重要な数字に絞る
全ての数字を見る必要はありません。
まずは、
・売上
・客数
・客単価
・利益率
など、重要な数字から始めましょう。
数字の意味を共有する
数字の名前ではなく、
その数字が何を表しているのか。
何に影響するのか。
を共有します。
数字から行動を考える習慣を作る
数字を見る。
原因を考える。
改善策を考える。
行動する。
振り返る。
この流れを習慣化します。
良い数字も悪い数字も共有する
悪い結果だけを見ると、数字は恐怖になります。
良い結果も共有し、
成果を一緒に喜ぶことが大切です。
数字を人ではなく仕組み改善に使う
数字が悪い時は、
「誰が悪いか」
ではなく、
「何を改善するか」
を考えます。
これが改善文化につながります。
「数字が嫌いな店長候補」が変わったきっかけ
ある飲食店で、副店長候補のスタッフがいました。
現場能力は高く、人望もあります。
しかし、売上や利益率の話になると、
「数字は苦手なので…」
と言って避けていました。
店長は、
「経営意識が低いのではないか」
と感じていました。
しかし詳しく話を聞くと、そのスタッフは過去に数字未達を厳しく責められた経験がありました。
数字とは怒られるもの。
失敗を突きつけられるもの。
そう認識していたのです。
そこで店長は数字の見方を変えました。
「数字が悪いからダメ」
ではなく、
「数字が教えてくれていることは何だろう?」
と一緒に考えるようにしたのです。
すると徐々に、
「客単価が下がっていますね」
「おすすめ商品の案内を変えてみましょうか」
という提案が出るようになりました。
変わったのは能力ではありません。
数字との付き合い方だったのです。
最後に
数字を見ようとしない原因は、数字が苦手だからとは限りません。
数字を罰として扱う文化。
数字の意味が分からない状態。
数字と行動が結び付いていない環境。
こうした問題が、数字から人を遠ざけていることがあります。
本来、数字とは人を責めるためのものではありません。
現状を知り、
未来を良くするための情報です。
そして店長の役割は、
数字を読むことだけではありません。
数字を読み取り、
そこから行動につなげることを支援することです。
数字を使って人を管理する組織ではなく、
数字を使ってみんなで改善していく組織。
そのような文化が育った時、店長自身もプレイヤーからリーダーへと成長していくことができるのです。


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