売上は伸ばしたい。でも利益も残したい。
そう考えたとき、多くの飲食店が直面するのが「値上げ」というテーマです。
しかし、「お客様が離れるかもしれない」「近くの競合より高くなる」「本部が決めることだから関係ない」といった理由から、価格について考える機会は意外と少ないものです。
実際、多くの店長は価格を決める権限を持っていません。
それでも、価格がどのような考え方で決まり、なぜ値上げが必要になるのかという構造を理解することは、店長にとって非常に重要です。
なぜなら、価格は単なる数字ではなく、お店が提供する価値そのものを表しているからです。
店長が経営者視点を持つためにも、「価値と価格」の関係を理解することは、お金の基礎として欠かせません。
今回は、「値上げできない店」が抱える課題と、利益を生み出す店舗づくりの考え方についてお伝えします。
値上げできない店舗で起こる3つの悪循環
1. 利益が減り続ける
原材料費、人件費、光熱費。
これらは年々上昇しています。
それにもかかわらず価格を変えなければ、利益率は下がり続けます。
売上は変わらなくても利益は減り、会社の体力は少しずつ失われていきます。
利益が減れば、人材育成や設備投資にも十分なお金を回せません。
結果として、お客様への価値も下がってしまうのです。
2. 「安さ」でしか勝負できなくなる
価格を下げることは、誰でもできます。
しかし価格競争は終わりがありません。
もっと安い店が現れれば、また値下げをしなければならなくなります。
本来競争すべきなのは、
- サービス
- 品質
- 接客
- 店舗体験
などの価値です。
価格だけで選ばれる店は、価格で離れられる店にもなります。
3. 店長が利益への関心を失う
「価格は本部が決めるもの。」
その通りです。
しかし、それを理由に価格や利益を考えなくなると、店長は経営者視点を持てません。
価格を決める権限がなくても、
「この価値なら、この価格は適正だろうか」
「もっと価値を高められないか」
と考えることはできます。
それが、利益を生み出す店長への第一歩です。
理想は「価値を高めて価格を受け入れてもらえる店舗」
お客様は、必ずしも一番安い店を選んでいるわけではありません。
多少価格が高くても、
- 接客が良い
- 清潔である
- 居心地が良い
- 商品がおいしい
- また来たいと思える
そんな価値を感じれば、お客様は価格に納得します。
つまり、お客様が支払っているのは「商品」だけではありません。
価値全体に対してお金を払っているのです。
店長は、価格ではなく価値を高める仕事をする。
その結果として、価格も受け入れられる店舗になっていきます。
値上げできない会社組織の3つの課題
1. 価値より価格で勝負している
「競合より安く。」
これだけが戦略になっている会社は少なくありません。
しかし、この考え方では利益率は改善しません。
価格ではなく、
「なぜこの店を選ぶのか」
という価値を明確にすることが重要です。
店舗ビジョンやブランドの方向性が明確であるほど、お客様は価格ではなく価値で選んでくれます。
2. 利益構造を共有していない
店長やスタッフが利益構造を知らなければ、
「売上さえ増えればいい」
という考えになります。
利益率や原価率を共有することで、
値上げが必要な背景や会社の考え方も理解しやすくなります。
3. 人材育成への投資ができない
利益が出なければ、人材育成も後回しになります。
教育が十分にできなければサービス品質は下がり、さらに価格競争へ向かう…。
この悪循環は、多くの飲食店で見られます。
飲食人材育成はコストではなく、価値を高める投資です。
店長自身が身につけたい3つの経営者視点
1. 「価値と価格」の関係を理解する
価格は会社が決めます。
しかし価値は現場でつくっています。
接客。
笑顔。
料理提供。
清掃。
雰囲気。
そのすべてが価格を支える価値になります。
価格だけを見るのではなく、
「価格に見合う価値を提供できているか」
という視点を持ちましょう。
2. 値上げではなく価値向上を考える
「値上げします。」
これだけではお客様は納得しません。
しかし、
サービス改善
メニュー改善
提供スピード改善
店舗の居心地改善
こうした価値向上があれば、価格への納得感は高まります。
店長ができる仕事は、まさにここです。
3. 利益を自分ごととして考える
価格変更は本部が決める。
だから利益も本部の仕事。
そう考えてしまうと、店長の成長は止まります。
利益は、
廃棄削減
原価管理
人件費管理
客単価向上
など、現場でも改善できます。
利益は店長の仕事でもあるという意識が、店長当事者意識を育てます。
今日からできる利益と価値を高める5つの取り組み
1. 「価格」ではなく「価値」を毎日一つ改善する
接客でも清掃でも構いません。
小さな価値改善が積み重なるほど、価格への納得感も高まります。
2. お客様が選ぶ理由を書き出す
なぜ常連のお客様は来店してくれるのでしょうか。
価格でしょうか。
それともスタッフでしょうか。
理由を言語化することで、お店の価値が見えてきます。
3. 利益率を確認する習慣を持つ
価格変更ができなくても、利益改善はできます。
利益率を見ることは経営者視点を育てる第一歩です。
4. スタッフへ価値を伝える
「料理を運ぶ」
ではなく、
「お客様の楽しい時間を提供する」
そんな目的を共有するだけでも、サービス品質は変わります。
価値を共有することは、人材育成にもつながります。
5. 値上げを恐れるのではなく、価値不足を恐れる
価格が高いことよりも、
価格以上の価値を感じてもらえないことの方が問題です。
価値向上を続ける店舗ほど、お客様から選ばれ続けます。
【事例】価格ではなく価値を見直したことで利益率が改善した店舗
ある飲食店では、原材料費の高騰が続いていました。
本部は値上げを検討していましたが、現場からは
「お客様が離れるから反対です。」
という声が多く上がっていました。
そこで店長は、まず価格ではなく価値を見直すことにしました。
料理説明を丁寧にする。
提供前の見た目を改善する。
店内の清掃レベルを上げる。
スタッフ同士のあいさつも徹底しました。
その結果、お客様アンケートの満足度が向上し、常連客も増加。
その後、本部は一部商品を値上げしましたが、大きな客数減少は起きませんでした。
店長は後にこう話しました。
「価格は本部が決めました。でも、お客様に価格以上の価値を感じてもらうのは、現場の仕事だと気づきました。」
最後に
値上げできない理由は、本当に「価格」なのでしょうか。
実はその背景には、価値と価格の関係を正しく理解できていないことが隠れている場合があります。
もちろん、多くの店長は価格を決める立場ではありません。
だからといって、このテーマが無関係というわけではありません。
価格がどのような構造で決まり、利益がどのように生まれるのかを理解することは、店長が経営者視点を身につけるうえで欠かせない学びです。
現場で価値を高めることは、店長にしかできません。
その積み重ねが、お客様から選ばれる理由になり、利益を生み出し、多店舗展開でも活躍できる店長への成長につながります。
「価格を変えられないから何もできない」のではなく、「価値なら今日から変えられる」。
その視点を持つことが、お金の基礎を身につける第一歩です。



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