「最近、広告費がどんどん増えているのに、売上が思ったほど伸びない」
「新しい広告を出せば集客できると思って、次々に広告を追加している」
「SNS、グルメサイト、チラシ、クーポン……いろいろやっているけれど、どれが効果的なのか分からない」
飲食店の経営者から、このような相談を受けることがあります。
広告そのものが悪いわけではありません。問題は、「広告を出した」という事実だけで満足し、その広告がどれだけ売上につながったのかを測定していないことです。
特に多店舗展開をしている会社では、店舗ごとに広告を出しているものの、結果を比較できていないケースもあります。
広告費は「使った金額」だけを見るのではなく、「いくらの売上を生み出したのか」「どんなお客様を連れてきたのか」まで見る必要があります。
そして、ここには店長の「経営者視点」が大きく関係します。
店長とは、単に店舗を運営する人ではありません。会社から預かった人・商品・設備・お金を使い、店舗の成果をつくる責任者です。
だからこそ、広告についても「本部が決めたからやる」ではなく、「この広告によって、店舗にどんな変化を起こしたいのか」という視点が必要になります。
広告費だけが増えると起こる3つの問題
1.売上が増えても利益が残らない
広告によって新規客が増えれば、一見すると成功しているように見えます。
しかし、広告費を10万円増やして売上が15万円増えたとしても、その15万円すべてが利益になるわけではありません。
食材費、人件費などの変動費を考えれば、広告費を含めた結果として利益がほとんど残っていない可能性もあります。
「売上が増えたから広告は成功」と判断するのではなく、広告費に対してどれだけ利益を生み出したかを見ることが重要です。
2.効果のない広告を続けてしまう
効果測定をしていないと、「昔からやっているから」という理由で広告を続けてしまいます。
チラシ、グルメサイト、SNS広告、地域情報誌など、さまざまな広告手段があります。
しかし、それぞれが本当に新規客の獲得につながっているのでしょうか。
分からないまま広告費を使い続ければ、いつの間にか「広告費を払うこと」が目的になってしまいます。
3.改善する材料がなくなる
広告の効果を測定していなければ、次の広告をどう改善すればいいのかも分かりません。
「もっと広告費を増やそう」
「別の媒体も試してみよう」
というように、根拠のない対策を繰り返すことになります。
結果として、広告費だけが増えていくことになります。
理想は「広告費」ではなく「投資」として考える状態
広告を完全になくせばいいわけではありません。
むしろ、広告は店舗を成長させるための重要な投資です。
重要なのは、広告を出す前に「何を測るのか」を決めておくことです。
例えば、
- 広告を見た人数
- 問い合わせ数
- クーポン利用数
- 新規来店数
- 新規客の客単価
- 再来店率
- 広告経由の売上
- 広告費
- 広告経由の利益
などです。
特に重要なのは、「広告を見た人が実際に来店したか」を把握することです。
「広告を見て来店しました」と分かる仕掛けを用意できれば、効果測定の精度は大きく上がります。
例えば、広告限定クーポンや広告専用コードを設定する方法があります。
「このクーポンを持ってきたお客様は、今回の広告を見て来店した」
と判断できれば、広告ごとの比較ができます。
会社組織側にある3つの課題
広告費が増えてしまう原因は、店長だけにあるとは限りません。
1.広告の目的が曖昧
「新規客を増やすために広告を出す」
だけでは不十分です。
新規客を何人増やしたいのか。
いつまでに増やすのか。
その結果、売上や利益をいくら増やしたいのか。
ここまで決めなければ、広告の良し悪しを判断できません。
2.効果測定の仕組みがない
広告を出した後に、
「今月はどうだった?」
「たぶん効果ありました」
という会話だけで終わっていないでしょうか。
これでは改善につながりません。
広告ごとに成果を記録し、過去と比較できる仕組みをつくることが必要です。
3.店長が広告を「自分の仕事」と認識していない
本部が広告を決め、店長は店舗で運営するだけ。
この状態では、広告と店舗運営が分断されます。
店長自身が「広告によって来店したお客様に、どう満足してもらい、どう再来店につなげるか」まで考える必要があります。
店長自身が抱えやすい3つの課題
1.「集客は本部の仕事」になっている
店長が「広告は本部がやるもの」と考えてしまうと、広告の結果に対して当事者意識を持ちにくくなります。
もちろん広告戦略を本部が担当する会社も多いでしょう。
それでも店長には、
「この広告によって来店したお客様をどう迎えるか」
「広告で増えたお客様をどうリピーターにするか」
という店舗側の責任があります。
2.数字を見る習慣がない
「広告費10万円」と聞いても、それが高いのか安いのか判断できなければ改善できません。
店長には、広告費そのものではなく、
「10万円使って何人の新規客を獲得し、その後どれだけ売上・利益につながったのか」
を見る習慣が必要です。
3.結果だけで評価してしまう
「広告を出したけれど、お客様が増えなかった」
という結果だけを見てしまうのも危険です。
広告の内容が悪かったのか。
そもそも広告を見た人が少なかったのか。
広告は見られたけれど、来店する理由が弱かったのか。
来店したけれど、店舗のサービスに問題があったのか。
原因を分解しなければ、次の改善にはつながりません。
広告費を増やす前に「測定→分析→改善」を行う
広告費が増えている店舗では、いきなり広告費を削るのではなく、まず測定できる状態をつくりましょう。
STEP1:広告の目的を決める
まず、
「何のために広告を出すのか」
を決めます。
例えば、
「新規客を月100人増やす」
「平日の来店客を増やす」
「新しいランチ商品の認知を高める」
などです。
目的によって測る数字は変わります。
STEP2:広告経由の来店を把握する
可能であれば、
- 専用クーポン
- 専用QRコード
- 専用予約ページ
- 広告限定キャンペーン
- 来店時アンケート
などを活用します。
「広告を見て来店したことが分かる仕掛け」をつくることがポイントです。
STEP3:費用と成果を比較する
例えば、
広告費10万円
↓
広告経由の新規客100人
↓
1人あたり獲得コスト1,000円
というところまで分かれば、別の広告との比較ができます。
さらに、その100人が2回目、3回目と来店してくれれば、広告の価値はさらに高くなります。
つまり、広告の評価は「その日にいくら売れたか」だけではなく、獲得したお客様が将来的にどれだけ店舗の売上・利益に貢献するかまで考えることが理想です。
事例:広告費を増やす前に「何が効いているか」を見える化した店舗
ある飲食店では、新規客を増やすために複数の広告を利用していました。
毎月の広告費は徐々に増えていましたが、経営者は「どの広告が効果的なのか分からない」という状態でした。
店長にも聞いてみました。
「この広告から来たお客様は、どれくらいいますか?」
すると、
「正直、分かりません」
という回答でした。
そこで、まず広告ごとに専用クーポンを設定し、利用数を記録することにしました。
すると、広告Aは多くのクーポンを配布しているものの、実際の利用数は少ない。
一方、広告Bは配布数こそ少ないものの、来店につながる割合が高いことが分かりました。
さらに広告Bから来店したお客様の再来店率を確認すると、他の広告経由のお客様より高いことも判明しました。
そこで、単純に広告費を増やすのではなく、広告Bの内容を改善しながら予算を重点的に配分することにしました。
この店舗で起きた変化は、単純な「広告費削減」ではありません。
広告を「出すもの」から「改善するもの」に変えたことです。
そして店長も、
「広告費が高いか安いか」
ではなく、
「この広告から来たお客様に、どうすればまた来てもらえるか」
という視点で考えられるようになりました。
広告費の問題は「広告」だけを見てはいけない
広告費だけが増えているとき、つい「広告を減らそう」と考えてしまいます。
しかし、本当に見るべきなのは広告だけではありません。
広告を見た。
↓
来店した。
↓
注文した。
↓
満足した。
↓
再来店した。
↓
他の人にも紹介した。
この一連の流れのどこで問題が起きているのかを考える必要があります。
広告で新規客を獲得できても、店舗のサービス品質が低ければリピーターにはなりません。
逆に、広告から来たお客様が「また来たい」と思う店舗をつくることができれば、広告費は単なる出費ではなく、将来のお客様を獲得するための投資になります。
だからこそ、店長には「集客すること」だけではなく、集客したお客様を店舗のファンに変える経営者視点が求められます。
最後に
広告費が増えているのに売上や利益が伸びない。
そんなときに、すぐ「広告の費用対効果が悪い」と決めつける必要はありません。
まず確認したいのは、
「そもそも、広告の効果を測定できていますか?」
ということです。
何人に届いたのか。
何人が来店したのか。
いくら売上につながったのか。
その後、何人が再来店したのか。
そして、どの広告が一番成果につながったのか。
これらを測定できれば、広告費を増やすべきなのか、減らすべきなのか、別の方法に変えるべきなのかを判断できます。
飲食店の経営では、「広告を出すこと」よりも、「広告を出した結果から学び、次の行動を変えること」のほうが重要です。
そして、その改善を現場の店長自身が考えられるようになると、店舗は少しずつ変わっていきます。
店長が「広告をやらされる人」から、「広告を使って店舗の成果をつくる人」へ変わる。
これも、店長が経営者視点を身につけるための大切な一歩です。



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