前向きなスタッフほど辞めてしまう?店長が考えたい「成長志向」

マインドセット

「仕事はきちんとできるし、周囲への気配りもできる。これからもっと活躍してくれそうだ」

そんな期待を寄せていたスタッフから、突然、退職の相談を受けたことはありませんか?

もちろん、従業員が辞める理由は人それぞれです。待遇や勤務時間、人間関係、家庭の事情など、さまざまな要因が考えられます。

しかし、見落としたくない理由の一つが、「この職場で働き続けても、自分は成長できるのだろうか」という不安です。

仕事を覚え、任された業務をこなし、周囲からも頼られるようになった。その一方で、毎日同じ仕事を繰り返すだけで、新しく学べることも、挑戦できることもない。そんな状態が続けば、成長意欲のある人ほど、別の環境に可能性を求めるかもしれません。

だからこそ、店長には、今の仕事を安定して回すだけでなく、従業員が未来に目を向け、成長を実感できる環境をつくることが求められます。

今回は、店長成長コーチングプログラムのマインドセット編「成長志向」をテーマに、従業員の成長を支える考え方と具体的な方法を紹介します。

1. 成長志向とは、未来に目を向けること

成長志向とは、今できていることだけで満足せず、これから何ができるようになりたいかを考え、行動していく姿勢です。

言い換えると、未来に目を向ける考え方です。

飲食店の仕事では、日々の営業を安定させることが欠かせません。決められた手順で料理を提供し、お客様に気持ちよく過ごしていただき、スタッフ同士で協力して営業を終える。こうした仕事を確実にこなすことは、とても大切です。

ただし、仕事に慣れてくると、毎日の業務が繰り返しになりやすいという側面もあります。

たとえば、入社したばかりのスタッフにとっては、注文を正確に取ることも、料理を運ぶことも、新しい学びです。しかし、仕事を覚えて一通りできるようになると、以前ほど新鮮さを感じなくなることがあります。

そこで必要なのが、「次に何ができるようになると、自分の仕事はもっと面白くなるだろう?」と考えることです。

  • お客様に合わせて、おすすめの商品を提案できるようになる
  • 新人スタッフに、わかりやすく仕事を教えられるようになる
  • 混雑時でも、周囲を見ながら適切に判断できるようになる
  • 店舗の売上や利益を理解し、改善策を考えられるようになる

このように、未来に向けた成長の方向性が見えてくると、日々の仕事の意味も変わってきます。

今まで単にこなしていた業務が、次の能力を身につけるための練習になります。目の前の仕事を通じて何を学ぶのかが明確になり、前向きに取り組む理由も生まれます。

大切なのは、全員に同じ成長を求めることではありません。接客を極めたい人もいれば、調理技術を高めたい人、後輩を育てたい人、将来は店長を目指したい人もいるでしょう。

一人ひとりが自分なりの未来を描けるように支援することが、成長志向を育てる第一歩です。

2. 従業員の成長を支える「職務拡大」と「職務充実」

従業員に成長を実感してもらうためには、本人の意識に働きかけるだけでは十分ではありません。実際に成長できる仕事や機会を用意することも大切です。

そのための考え方として、「職務拡大」と「職務充実」があります。

職務拡大:できる仕事の幅を広げる

職務拡大とは、これまで担当していた仕事に加えて、関連する別の仕事も任せることで、仕事の幅を広げる考え方です。

たとえば、ホールスタッフとして接客を担当している人に、レジ締めや開店準備、在庫確認なども経験してもらいます。

調理スタッフであれば、担当している料理だけでなく、別の調理工程や食材の管理にも挑戦してもらう方法があります。

仕事の幅が広がると、店舗全体の動きが見えるようになり、ほかのスタッフの仕事への理解も深まります。結果として、忙しいときに周囲をサポートしやすくなることも期待できます。

ただし、単に仕事を増やすだけでは、負担が増えたと感じられる可能性があります。なぜ新しい仕事を任せるのか、何を身につけてほしいのかを伝え、必要な教育やサポートを用意することが重要です。

職務充実:仕事の責任や判断の範囲を広げる

職務充実とは、仕事の量や種類を増やすだけでなく、より大きな責任や判断の機会を与え、仕事の中身を充実させる考え方です。

たとえば、これまでは店長の指示どおりに実施していた販促活動について、スタッフ自身に企画を考えてもらい、実施後の結果まで振り返ってもらいます。

新人教育でも、決められた手順を教えるだけでなく、相手の理解度を確認しながら、どのように教えればよいかを考えてもらうことができます。

職務充実では、自分で考え、判断し、結果を振り返る経験が重要になります。

「言われたことを正確に実行する」という段階から、「より良い結果を出すために、自分で工夫する」という段階へ進むことで、仕事への主体性や責任感も育ちやすくなります。

2つを組み合わせて成長機会をつくる

職務拡大と職務充実は、どちらか一方だけでなければならないものではありません。

たとえば、接客を担当していたスタッフにレジ締めも経験してもらうのが職務拡大です。そのうえで、締め作業のミスを減らす方法を自分で考え、改善策を提案してもらうのが職務充実に当たります。

仕事の幅を広げると同時に、自分で考え、工夫する機会をつくることで、従業員は新しい能力を身につけやすくなります。

もちろん、いきなり大きな責任を任せればよいわけではありません。本人の経験や意欲、習熟度を確認しながら、少しずつ挑戦の範囲を広げていきましょう。

3. 成長を実感できなくなると、前向きな従業員ほど辞めることがある

従業員の定着を考えるうえで、店長に知っておいてほしいことがあります。

それは、成長意欲がある従業員ほど、今の職場で成長できないと感じたときに、別の環境を探す可能性があるということです。

もちろん、前向きな従業員が必ず辞めるわけではありません。また、退職の理由を成長機会の不足だけで説明することもできません。

しかし、仕事を覚え、周囲から頼られ、店舗に貢献できるようになった人が、その先に目指せるものを見つけられなかったらどうでしょうか。

毎日同じ仕事を繰り返し、新しい役割を任されることもなく、自分の工夫や提案が仕事に反映されることもない。そんな状況では、「ここで働き続ける意味はあるのだろうか」と感じることがあるかもしれません。

特に、仕事に前向きで、自分の能力を高めたいと考えている人にとって、成長できる環境かどうかは重要な判断材料になり得ます。

一方で、成長の機会がある職場では、従業員が自分の変化を実感しやすくなります。

以前はできなかった仕事ができるようになった。自分の提案が採用された。後輩から頼られるようになった。店長から仕事を任せてもらえるようになった。

こうした経験は、自分が職場で役立っているという感覚にもつながります。

そのため、店長は従業員の仕事ぶりを見るだけでなく、どのような成長を望んでいるのか、今の仕事に物足りなさを感じていないかにも目を向ける必要があります。

「最近、仕事でできるようになったことは何かある?」

「これから挑戦してみたい仕事はある?」

「今の仕事で、もっと工夫できそうだと思うことはある?」

こうした会話を通じて、本人の成長への思いや、現在の仕事で感じていることを知ることができます。

従業員の成長を支えることは、単に退職を防ぐための取り組みではありません。一人ひとりが能力を高め、より大きな役割を担えるようになることは、店舗全体の力を高めることにもつながります。

4. 店長自身も、成長し続ける姿を見せよう

従業員に成長志向を持ってもらいたいのであれば、店長自身が成長し続ける姿を見せることも大切です。

店長が毎日の営業をこなすだけで、新しいことを学ぼうとしなかったら、従業員はどのように感じるでしょうか。

反対に、店長が自分の課題を認識し、改善に取り組み、新しい知識やスキルを身につけようとしていたら、従業員にとって一つのモデルになります。

たとえば、売上の数字を確認するだけでなく、客数や客単価の変化から課題を考えてみる。スタッフへの指示の出し方を振り返り、もっと伝わりやすい方法を試してみる。面談で相手の話を十分に聞けていたかを振り返る。

こうした日々の取り組みも、店長自身の成長です。

また、店長がすべての答えを知っている必要はありません。わからないことを学び、うまくいかなかったことから改善点を見つける姿勢そのものが、成長志向を表しています。

「自分もまだ勉強中だから、一緒に考えてみよう」

そう言える店長であれば、従業員も失敗を過度に恐れず、挑戦しやすくなるかもしれません。

成長志向は、特別な才能ではなく、未来に向けて学び続ける姿勢です。店長自身がその姿勢を実践することで、店舗にも成長を大切にする文化が生まれていきます。

5. 従業員の成長を支えるために、明日からできる3つのこと

ここまで紹介した考え方を、日々の店舗運営に取り入れるために、まずは次の3つから始めてみましょう。

① 一人ひとりの「これから」を聞く

従業員と話すときに、現在の仕事の進捗や問題点だけでなく、これから挑戦したいことも聞いてみましょう。

将来の希望が明確な人もいれば、まだ何をしたいかわからない人もいます。すぐに答えが出なくても、本人が未来について考えるきっかけをつくることが大切です。

② 少し先の仕事を任せてみる

本人の習熟度に合わせて、今の能力より少し先の仕事に挑戦する機会をつくります。

その際は、任せる目的や期待することを伝え、必要な支援を行いましょう。仕事を任せたら終わりではなく、実施後に振り返る時間も確保します。

③ 成長したことを具体的に伝える

従業員が成長していても、本人が気づいていないことがあります。

「最近、忙しい時間帯でも周りを見て動けるようになったね」

「新人への説明が前よりわかりやすくなったね」

このように、以前と比べて何ができるようになったのかを具体的に伝えてみましょう。

自分の成長を認識できると、次の挑戦に向けた意欲につながることがあります。

大きな制度を導入しなくても、日々の会話や仕事の任せ方を少し変えることで、成長の機会を増やすことはできます。

6. 成長志向が、従業員と店舗の未来をつくる

成長志向とは、今の状態にとどまらず、これから何ができるようになりたいかを考え、未来に向けて行動する姿勢です。

従業員が成長を実感できるようにするためには、本人の意欲だけに期待するのではなく、新しい仕事を経験する「職務拡大」と、自分で考え判断する機会を増やす「職務充実」の両面から、成長できる環境を整えることが重要です。

そして、成長の実感が得られない状態が続くと、意欲のある従業員が別の環境を求める可能性もあります。

店長として、従業員が今どのような仕事をしているかだけでなく、その仕事を通じて何を学び、どんな未来を描けるのかにも目を向けてみてください。

あなたの店舗では、従業員が「ここで働き続ければ、もっと成長できる」と感じられる機会をつくれていますか?

まずは一人の従業員に、これから挑戦してみたいことを聞いてみる。その小さな会話が、本人の成長と店舗の未来を変えるきっかけになるかもしれません。

店長の経営スキルやコミュニケーション、マインドセットを体系的に育てたい方は、店長成長コーチングでも、店舗の課題に合わせた取り組みをご相談いただけます。

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