部下の話を聴いていますか?店長に必要な「聴く力」の磨き方

コミュニケーション

飲食店の店長として、部下とコミュニケーションを取るとき、こんな経験はありませんか?

スタッフが悩みを相談してきたので、良かれと思ってアドバイスをした。ところが、相手の反応はいまひとつ。話を聞いているうちに「それは違う」「こうすればいいのに」と思い、つい自分の意見を伝えてしまった。

あるいは、スタッフに「何か困っていることはある?」と聞いても、「特にありません」としか返ってこない。

こうしたとき、見直したいのが店長自身の「聴く力」です。

部下との信頼関係を築くためには、上手に話すことだけでなく、相手の話をしっかり聴くことが欠かせません。

店長成長コーチングのコミュニケーション編では、聴く力を、単に相手の言葉を耳に入れる技術ではなく、相手に興味を持ち、理解しようとする姿勢として捉えています。

この記事では、飲食店の現場で実践できる「聴く力」の磨き方を紹介します。

部下の話を聴くことが、信頼関係の第一歩

店長は、毎日さまざまな判断を求められます。

売上の確認、シフト調整、接客指導、クレーム対応、新人教育。忙しい時間帯には、スタッフの話をじっくり聴く余裕がないこともあるでしょう。

そのため、スタッフから相談を受けると、つい早く解決しようとしてしまいます。

「それなら、こうすればいいよ」

「前にも説明したよね」

「そんなに悩まなくても大丈夫」

どれも、店長としては相手を助けようとする言葉かもしれません。

しかし、相手が求めているのは、必ずしも解決策とは限りません。

まずは自分の気持ちを分かってほしい。何に困っているのかを整理したい。安心して話せる相手がほしい。

そんな気持ちで話し始めることもあります。

相手の話を十分に聴かずにアドバイスをすると、「分かってもらえなかった」と感じさせてしまう可能性があります。

反対に、途中で否定せず、最後まで関心を持って聴いてもらえると、「この人には話しても大丈夫だ」と感じやすくなります。

聴く力は、部下が安心して本音を話せる関係をつくるための土台なのです。

聴く力を高めるために必要な3つの意識

1.相手に興味を持つ

聴く力を伸ばすために、最初に必要なのはテクニックではありません。相手に興味を持つことです。

「この人は何を考えているのだろう?」

「どうして、そう感じたのだろう?」

「この人にとって、何が大切なのだろう?」

そんな好奇心を持って相手の話を聴いてみてください。

例えば、スタッフが「最近、仕事がきついです」と話したとします。

ここですぐに「人手不足だから仕方ないよ」「もっと効率よく動こう」と返すのではなく、まずは、何がきついと感じているのかに関心を向けます。

同じ「きつい」という言葉でも、仕事量が多いのか、人間関係に悩んでいるのか、失敗が続いて自信をなくしているのかによって、背景は異なります。

相手を理解する前に、自分の経験や価値観で答えを決めつけないことが大切です。

2.自分の意見をいったん脇に置く

話を聴いていると、自分の考えや意見が浮かぶものです。

「それは違うのでは?」

「自分ならこうするのに」

「その考え方は甘いのでは?」

こうした考えが浮かぶこと自体は自然なことです。

大切なのは、考えが浮かんでも、すぐに口に出さないことです。

相手が話している間は、自分の意見を伝えることより、相手が何を伝えようとしているのかを理解することに集中します。

特に店長は、指導する立場にあるため、無意識に「正しいことを教えなければ」と考えがちです。

しかし、話を聴く時間と、指導する時間は分けて考えることができます。

まずは聴く。その後、必要であれば一緒に考える。

この順番を意識するだけでも、コミュニケーションは変わってきます。

3.聴くだけに徹する時間をつくる

聴く力を身につけるには、実際に「聴くだけに徹する」経験を積むことが効果的です。

相手の話を途中で遮らない。アドバイスをしない。批判しない。自分の経験談にすり替えない。

そして、相手が話し終わるまで待ちます。

沈黙が生まれても、すぐに質問や説明で埋める必要はありません。

相手が考えを整理している時間かもしれないからです。

もちろん、何も反応せずに無表情で聞き続ければよい、ということではありません。うなずいたり、相手の言葉を繰り返したりしながら、話を受け止めていることを伝えます。

「そうだったんですね」

「それは大変でしたね」

「なるほど、そこが気になっていたんですね」

こうした短い反応で十分な場合もあります。

目指すのは、相手が「自分の話をちゃんと聴いてもらえた」と感じられる時間です。

耳だけでは分からない。相手のサインを受け取る

聴く力というと、相手の言葉を正確に聞き取ることをイメージするかもしれません。

しかし、人は言葉だけで気持ちを伝えているわけではありません。

表情、しぐさ、声のトーン、話すスピード、沈黙、何度も繰り返す言葉。こうしたさまざまな情報にも注意を向けることで、相手を理解する手がかりが増えていきます。

例えば、スタッフが「大丈夫です」と答えていても、いつもより声が小さかったり、視線が落ちていたり、返事までに間があったりするかもしれません。

その場合、「大丈夫と言っているから問題ない」と決めつけず、気になったことを確かめてみます。

「そうなんですね。少し元気がないように見えたので、気になりました。何かありましたか?」

ただし、表情や声のトーンだけで、相手の気持ちを断定してはいけません。疲れているだけかもしれませんし、別のことを考えている可能性もあります。

あくまで、相手を理解するための手がかりとして受け取り、本人に確かめることが重要です。

特に注目したいのは、相手がこだわっているキーワード

会話の中で、何度も出てくる言葉や、話すときに強く反応する言葉はありませんか?

例えば、スタッフが次のように話しているとします。

「仕事が多いのも大変なんですけど、結局、誰も自分の頑張りを見てくれていない気がするんです」

このスタッフにとって重要なのは、仕事量だけではなく、「頑張りを見てもらえていない」という感覚かもしれません。

ここで「仕事を効率化しよう」と話を進めてしまうと、本人が一番伝えたかったことを取りこぼす可能性があります。

「頑張っていることを分かってもらえていない、と感じているんですね」

そう返すことで、相手は自分の気持ちをさらに話しやすくなるかもしれません。

繰り返される言葉は、相手が大切にしていることや、困っていることを知るヒントになります。

言葉そのものだけでなく、どの言葉に力が入るのか、どこで表情が変わるのかにも意識を向けてみましょう。

アドバイスも批判も解決も、すぐには必要ない

部下の話を聴いていると、店長として何かしてあげたくなるものです。

悩みを解決してあげたい。間違いを正したい。良い方向に導きたい。

その気持ちは大切です。

しかし、話を聴く場面では、必ずしもアドバイスや解決策を提示する必要はありません。

例えば、スタッフが「最近、新人とうまくコミュニケーションが取れない」と相談してきたとします。

店長は経験から、すぐに解決策を思いつくかもしれません。

「もっと具体的に指示を出せばいいよ」

「最初は誰でも苦労するから、気にしなくていいよ」

けれども、まずは次のように返してみます。

「そうなんですね。どんなときに、うまくいかないと感じますか?」

その後も相手の話を聴き、必要に応じて言葉を返していきます。

すると、スタッフ自身が話しながら、問題の原因や自分の気持ちを整理できることがあります。

「自分の伝え方が曖昧だったのかもしれません」

「実は、嫌われるのが怖くて注意できなかったんです」

ここまで話せれば、最初に店長が想像していた問題とは違うものが見えてくるかもしれません。

聴くことは、何もしないことではありません。相手が自分の考えや気持ちを整理できるように、関心を持って関わることです。

話を受け止めてもらうだけで、気持ちが落ち着いたり、不安が和らいだりすることもあります。

相手が求めているものが、すぐに答えをもらうことではなく、安心して話せることだからです。

もちろん、緊急の問題や安全に関わること、すぐに対応が必要な業務上の問題は別です。必要な指示や支援を行うべき場面では、店長として適切に対応します。

それ以外の場面では、すぐに解決しようとせず、まず聴くことを選んでみてください。

聴く力を伸ばすための3つの実践習慣

1.一日一回、相手の話を遮らずに聴く

まずは一日一回、スタッフの話を最後まで聴くことを意識してみましょう。

長い面談でなくても構いません。休憩中の会話や、営業後の短いやり取りでも実践できます。

2.相手の言葉以外にも注意を向ける

話の内容だけでなく、表情、声のトーン、話すスピード、繰り返す言葉などにも意識を向けます。

ただし、自分の解釈を事実と決めつけず、気になったことは質問して確かめましょう。

3.会話の後に、自分の聴き方を振り返る

「途中でアドバイスをしていなかったか?」

「自分の価値観で判断していなかったか?」

「相手が大切にしている言葉を受け取れたか?」

この3点を振り返るだけでも、次の会話で意識することが明確になります。

聴く力は、生まれ持った性格だけで決まるものではありません。意識して実践し、振り返ることで、少しずつ磨いていける能力です。

最後に:聴く力は、部下の成長と店長自身の成長につながる

店長にとって、聴く力は単なるコミュニケーション技術ではありません。

スタッフの本音を知り、問題を早く発見し、信頼関係を育て、主体的に動けるチームをつくるための重要な能力です。

そして、その第一歩は、店長自身が「話すこと」よりも「理解すること」を優先することです。

相手に興味を持つ。

言葉だけでなく、さまざまなサインを受け取る。

アドバイスや批判を急がず、まずは聴く。

この積み重ねが、スタッフに安心感を与え、相談しやすい関係をつくっていきます。

もし、部下が本音を話してくれない、スタッフとの関係が深まらないと感じているなら、まずは自分の聴き方を振り返ってみませんか?

店長成長コーチングでは、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つを組み合わせ、店長自身の成長と、スタッフが主体的に動ける店舗づくりを支援しています。

「もっとスタッフの話を聴けるようになりたい」「信頼関係を深め、チームを成長させたい」とお考えの方は、ぜひ一度、店長としてのコミュニケーションを見直す機会をつくってみてください。

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