店長の注意・指導力を高める!スタッフの成長につながる伝え方と4つのポイント

コミュニケーション

飲食店の店長として働いていると、スタッフのミスやルール違反、接客態度など、注意や指導が必要になる場面は少なくありません。

しかし、いざ注意しようとすると、「嫌われたくない」「モチベーションを下げてしまうのではないか」と考えて、言いたいことを飲み込んでしまうことはありませんか?

反対に、何度注意しても同じミスが繰り返されたり、指導したスタッフが不機嫌になったりして、どう伝えればよいのか悩む店長もいるでしょう。

注意・指導は、単に相手の間違いを正すためのものではありません。スタッフが仕事に必要な知識やスキルを身につけ、よりよい行動を取れるようにするための大切なコミュニケーションです。

大切なのは、厳しく叱ることでも、優しく接することだけでもありません。相手の成長を考えながら、必要なことを適切に伝える力です。

この記事では、飲食店の店長が身につけたい注意・指導の基本と、スタッフの主体性を育てる具体的な方法を紹介します。

なぜ、店長には注意・指導する力が必要なのか?

飲食店では、衛生管理、接客、調理、金銭管理、スタッフ同士の連携など、守るべきルールや基準が数多くあります。

一人のスタッフの行動が、お客様の満足度や店舗全体の成果に影響することも珍しくありません。

例えば、次のような場面を考えてみましょう。

  • 手洗いや食材管理のルールが守られていない
  • お客様への挨拶や言葉遣いが適切でない
  • 忙しくなると、確認や報告を省略してしまう
  • 決められた作業手順を自己流に変えてしまう
  • 遅刻や無断のシフト変更など、勤務上のルールが守られない

こうした行動を放置すると、本人だけでなく、周囲のスタッフにも悪影響が広がります。「あの人は注意されないのに、自分だけ注意される」と感じれば、不公平感が生まれることもあります。

一方で、注意の仕方を間違えると、スタッフは萎縮し、ミスを隠したり、分からないことを質問しなくなったりする可能性があります。

つまり、注意しないことにも、注意しすぎることにも問題があるのです。

店長に求められるのは、必要なことを曖昧にせず伝えながら、スタッフが前向きに改善できるように関わることです。

注意・指導で押さえたい4つのポイント

1.ネガティブなことは1対1で伝える

スタッフのミスや改善してほしい行動を、ほかのスタッフがいる前で指摘していませんか?

人前で注意されると、本人は恥ずかしさや悔しさを感じ、指導の内容よりも「みんなの前で恥をかかされた」という気持ちが強くなることがあります。

その結果、素直に話を聞けなくなったり、店長に対して不信感を抱いたりすることもあります。

改善してほしいことは、原則として1対1で伝える。 これを基本にしましょう。

例えば、接客中にスタッフの言葉遣いが気になった場合、その場でお客様への対応に必要な指示を出すことは大切です。ただし、詳しい振り返りや本人の行動に対する指導は、バックヤードなどで落ち着いて話せるタイミングを選びます。

伝えるときは、次の順序を意識するとよいでしょう。

  1. 実際に起きたことを具体的に伝える
  2. その行動によって生じる影響を説明する
  3. どうすればよかったのかを一緒に考える
  4. 次から取ってほしい行動を確認する

例えば、忙しい時間帯にお客様への挨拶ができていなかったスタッフには、次のように伝えます。

「さっき、お客様が入店されたときに挨拶ができていなかったね。忙しいときでも、最初の挨拶はお客様に安心していただくために大切なんだ。次に同じ状況になったら、どう対応できそうかな?」

この伝え方なら、人格を否定することなく、改善してほしい行動に焦点を当てられます。

ただし、衛生・安全上の問題や、お客様に重大な迷惑がかかる状況では、その場で直ちに行動を止める必要があります。緊急時はまず安全確保と是正を優先し、その後の詳しい指導を1対1で行うと考えましょう。

2.全部教えるのではなく、「どこまで分かる?」と聞く

スタッフに仕事を教えるとき、最初から最後まで丁寧に説明していませんか?

もちろん、初めての作業や重大なリスクがある仕事では、必要な手順をきちんと説明しなければなりません。

しかし、相手がすでに知っていることまで毎回説明していると、教える側も時間がかかり、教わる側も受け身になってしまいます。

教えるのが苦手な人は、相手の理解度を確認せずに、知っていることをすべて説明しがちです。

一方、教えるのが上手な人は、まず相手がどこまで理解しているかを確認します。

例えば、新人スタッフにレジ締めの方法を教える場面を考えてみましょう。

教えるのが苦手な人は、次のように説明します。

「まずレジの画面を開いて、このボタンを押して、次に売上を確認して……」

教えるのが上手な人は、最初にこう質問します。

「レジ締めは、どこまでやったことがある?」

「売上の確認までは分かるんだね。じゃあ、その次の作業から一緒に確認しようか」

このように質問することで、相手の理解度に合わせて教える内容を調整できます。

スタッフにとっても、自分が理解している部分を改めて聞かされる時間が減り、分からないところを質問しやすくなります。

ポイントは、質問すること自体を目的にしないことです。相手が分かっている部分と、まだ分からない部分を見極め、必要な支援を提供することが目的です。

3.先回りして説明するのではなく、先回りして質問する

店長は経験が豊富だからこそ、スタッフが困りそうな場面を予測できます。

そのため、問題が起きる前にすべての注意点を伝えておきたくなるものです。

例えば、週末のピークタイムを迎える前に、

「注文が重なったら、先に厨房に確認してね。料理が遅れそうだったらホールにも伝えて。お客様から質問されたら……」

と、起こりそうなことを一つひとつ説明するケースです。

もちろん、事前に重要事項を伝えることは必要です。しかし、店長がすべての場面を想定して答えを教えていると、スタッフは自分で考える機会を失ってしまいます。

教えるのが上手な人は、先回りして答えを教えるのではなく、先回りして質問し、相手に考える機会をつくります。

例えば、次のように聞いてみましょう。

「週末のピークタイムに注文が重なったら、どう対応するか分かる?」

「料理の提供が遅れそうなとき、お客様や厨房にはどう伝える?」

「レジの金額が合わなかったら、最初に何を確認する?」

「新人スタッフが作業に迷っていたら、どうサポートする?」

こうした質問をすることで、スタッフは自分の知識や考えを整理できます。店長は、どこまで理解しているのか、何を補足すべきなのかを把握できます。

もし答えが間違っていても、すぐに正解を伝えるのではなく、まずは考え方を確認してみましょう。

「なるほど、そう考えたんだね。では、その対応をしたらお客様にはどんな影響がありそうかな?」

このような問いかけによって、スタッフ自身が考え、納得して行動する力を育てられます。

ただし、質問だけで指導を終わらせてはいけません。本人が分からないことや、誤った理解をしていることが分かったら、正しい知識や手順を明確に教えましょう。

考えさせることと、必要なことを教えること。この両方があってこそ、スタッフは成長します。

4.注意・指導には一貫性を持たせる

注意・指導で見落とされがちなのが、一貫性です。

あるスタッフには厳しく注意するのに、別のスタッフには何も言わない。昨日は問題ないと言ったことを、今日は突然注意する。店長によってルールの解釈が違う。

こうしたことが続くと、スタッフは何を基準に行動すればよいのか分からなくなります。

「店長のお気に入りだから注意されないのでは?」

「今日は店長の機嫌が悪いから怒られたのでは?」

そんな疑念が生まれれば、指導内容に納得できなくなり、信頼関係にも影響します。

一貫性を持たせるためには、次の3点を意識しましょう。

① 会社や店舗のルールを明確にする

衛生管理、接客、報告、勤務態度など、守るべき基準を言語化します。店長の個人的な好みではなく、会社や店舗として大切にする行動を基準に指導しましょう。

② 人によって基準を変えない

新人だから、ベテランだから、仕事ができるからといって、基本的なルールを都合よく変えないことが大切です。経験や習熟度に応じて教え方を変えることと、守るべき基準を変えることは別です。

③ 指導した後も確認する

一度注意したからといって、改善するとは限りません。次の勤務や同じ作業の場面で、行動が変わったかを確認しましょう。改善できていれば、その変化を具体的に認めることも重要です。

また、複数店舗を展開する企業では、店長ごとに指導基準が違うと、店舗間でスタッフの不公平感が生まれる可能性があります。

会社の理念やビジョン、行動指針を共有し、それを共通の判断基準にすることで、どの店舗でも一貫した指導を行いやすくなります。

注意・指導がうまくいかない店長にありがちな3つの問題

ここまでのポイントを踏まえ、現場で起こりやすい問題を整理してみましょう。

問題1.感情的になってしまう

何度注意しても改善されないと、ついイライラしてしまうことがあります。

「何回言ったら分かるんだ!」

「前にも説明したよね?」

こうした言葉は、スタッフを責めることにはつながっても、具体的な改善方法を伝えるものではありません。

感情が高ぶっているときは、まず自分の気持ちを落ち着かせ、事実と感情を分けて考えてみましょう。

何が起きたのか。何が問題なのか。次にどんな行動を取ってほしいのか。この3点を整理するだけでも、伝え方は変わります。

問題2.相手の理解度を確認しない

「一度説明したから、もうできるはず」と思い込んでしまうことも、指導がうまくいかない原因です。

説明を聞いて理解することと、実際の現場でできることは別です。

教えた後には、「分かった?」と聞くだけでなく、「じゃあ、実際にやってみてもらえる?」「次に同じ状況になったら、どうする?」と確認してみましょう。

スタッフが自分の言葉で説明したり、実際に行動したりできれば、理解度をより具体的に把握できます。

問題3.注意した後のフォローがない

注意した直後は改善しても、数日後には元に戻ってしまうことがあります。

これは、本人の意識だけが原因とは限りません。作業手順が分かりにくい、忙しいと実行できない、周囲のスタッフが異なる方法で教えているなど、環境に問題がある可能性もあります。

注意した後は、行動が改善したかを確認するとともに、改善を妨げている原因がないかを考えましょう。

スタッフの努力だけに頼るのではなく、必要に応じてマニュアルや作業の仕組みを見直すことも、店長の大切な役割です。

飲食店で実践する注意・指導の具体例

ここでは、実際の店舗で起こりやすい場面を使って、注意・指導の方法を考えてみましょう。

事例1.同じミスを繰り返すスタッフ

例えば、スタッフが何度もオーダーの入力ミスをしてしまうケースです。

「何度も同じミスをしないで」と注意するだけでは、本人も何を変えればよいのか分からないかもしれません。

まずは、次のように質問します。

「注文を入力するとき、どのあたりで間違えやすいと感じる?」

「入力した後に確認する習慣はある?」

そのうえで、確認手順を一緒に決め、実際にできるかを確認します。

入力画面が分かりにくい、注文の復唱が習慣化されていないなど、ミスの原因が見つかれば、本人への指導だけでなく、業務の仕組みも改善できます。

事例2.後輩への指導が不適切なスタッフ

経験のあるスタッフが、新人に対して強い口調で注意している場面を見かけたとします。

まずは必要に応じて、その場で新人への不適切な対応を止めます。その後、当人と1対1で話をしましょう。

「さっき、新人スタッフに強い口調で伝えていたね。何があったのか、教えてもらえる?」

相手の話を聞いたうえで、指導の目的と望ましい伝え方を確認します。

「ミスを減らしたいという気持ちは大切だね。そのうえで、相手が理解して次に行動できる伝え方にするには、どうしたらよいと思う?」

一方的に叱るのではなく、本人の意図を確認しながら、改善すべき行動を明確にします。

事例3.ルールを守らないスタッフ

例えば、決められた清掃手順を省略するスタッフがいるとします。

ここで、忙しいときは注意せず、余裕があるときだけ注意していると、基準が曖昧になります。

まずは、なぜその手順が必要なのかを説明し、守るべき基準を明確にします。

「この清掃手順は、衛生状態を保つために必要なんだ。忙しいときでも省略せずに実施してほしい。作業時間が足りないと感じるなら、やり方や人員配置も一緒に見直そう」

ルールを守ることを求めながら、実行できない原因にも目を向ける。この姿勢が、納得感のある指導につながります。

店長の注意・指導力を高めるために、今日からできること

注意・指導の力は、知識を身につけるだけでは高まりません。日々の現場で実践し、振り返ることが大切です。

まずは、次の3つから始めてみましょう。

1.注意する前に、伝える内容を整理する

感情のままに話すのではなく、「何が起きたか」「何が問題か」「どう改善してほしいか」を整理します。

2.教える前に、一度質問する

「どこまで分かる?」「どうすればよいと思う?」と聞き、相手の理解度や考えを確認してから教えます。

3.指導後に、行動の変化を確認する

注意して終わりにせず、次の勤務で改善できているかを確認します。できるようになったことは、具体的な言葉で認めましょう。

例えば、営業終了後に「今日の指導で、相手が自分で考える機会をつくれたか」「人前で必要以上に注意していなかったか」「スタッフによって基準を変えていなかったか」を振り返るだけでも、次の行動につながります。

店長同士で指導の成功例や難しかった事例を共有することも効果的です。一人で悩まず、よりよい伝え方を組織全体で学ぶ機会をつくりましょう。

まとめ:注意・指導は、スタッフの成長を支えるコミュニケーション

店長の注意・指導は、スタッフの間違いを正すためだけのものではありません。スタッフが必要な知識やスキルを身につけ、自分で考えて行動できるようにするための重要な役割です。

今回紹介したポイントを振り返りましょう。

  • ネガティブなことは、原則として1対1で伝える
  • すべてを説明する前に、「どこまで分かる?」と確認する
  • 先回りして答えを教えるのではなく、質問して考える機会をつくる
  • 会社や店舗のルールを基準に、一貫性のある指導を行う
  • 注意した後も、改善状況を確認して必要な支援を続ける

こうした関わりを続けることで、スタッフは注意を単なる叱責ではなく、自分の成長につながるフィードバックとして受け止めやすくなります。

もちろん、質問すれば必ずスタッフが自分で答えを出せるわけではありません。必要な知識や技術はきちんと教え、本人が考えるべきところでは考える機会をつくる。その使い分けが重要です。

そして、注意・指導の基準が店長ごとに異なれば、スタッフの成長や職場の信頼関係にも影響します。会社のビジョンや行動指針に基づき、一貫した関わり方を組織全体で共有していきましょう。

店長のコミュニケーション力を高め、スタッフが主体的に動く店舗へ

「何度注意しても改善されない」「スタッフが自分で考えて行動してくれない」「店長によって指導の仕方が違う」——こうした悩みは、注意の仕方だけでなく、信頼関係やスタッフ育成の仕組みとも深く関係しています。

ミルラボの「店長成長コーチング」では、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの側面から、店長が店舗を経営者目線で捉え、スタッフの主体性を引き出せるよう支援します。

店長の指導力を高め、スタッフが自ら考え、行動できる店舗を目指したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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