「店長なんだから、もっと責任を持って仕事をしてほしい」
飲食店を経営していると、そう感じる場面はありませんか?
売上目標を達成してほしい。スタッフを育ててほしい。お客様の満足度を高めてほしい。店長には、店舗運営の中心となって活躍してほしいものです。
一方で、店長の立場からすると、「責任はあるけれど、自分の判断では決められない」という状況に陥っていることもあります。
たとえば、売上を伸ばす責任があるのに販促施策を自由に決められない。スタッフを育成する責任があるのに、シフトや教育方法を十分に調整できない。店舗の利益を改善する責任があるのに、仕入れや経費について判断できる範囲が限られている。
このような状態では、店長が責任を果たそうとしても、できることに限界があります。
店長が主体的に店舗を運営できるようにするためには、責任を持たせることと同時に、その責任を果たすための権限を渡せているかを考える必要があります。
1. 責任を持ってほしいなら、権限も渡せているか?
責任とは、任された仕事や役割を果たすことです。
権限とは、その責任を果たすために認められた判断や行動の範囲を指します。
店長に店舗運営を任せるのであれば、売上や利益、スタッフの育成、お客様への対応など、何を実現してほしいのかを明確にすることが大切です。
しかし、目標や責任を伝えるだけでは十分ではありません。
その目標を実現するために、店長が自分で判断してよいことは何か。どこまで変更できるのか。どのような場合に経営者や上司への相談が必要なのか。こうした点も明確にしておく必要があります。
たとえば、売上向上を店長の責任とする場合、次のような権限が考えられます。
- 店舗独自の販促施策を提案・実施する権限
- 接客方法や店舗オペレーションを改善する権限
- スタッフの教育計画を立て、実行する権限
- 決められた予算の範囲内で経費を使う権限
- お客様への対応について、一定の範囲で判断する権限
もちろん、すべてを店長の判断に任せればよいわけではありません。ブランド全体の方針や予算、人事制度など、会社として統一すべき事項もあります。
大切なのは、責任の大きさに合わせて、店長が実際に行動できる権限を用意することです。
「結果を出してほしい」と期待するのであれば、「結果を出すために何を任せるのか」まで考えてみましょう。
2. 店長自身も、自分の責任と権限を理解しよう
責任と権限のバランスを考えるのは、経営者や上司だけの仕事ではありません。店長自身も、自分が任されている役割を正しく理解する必要があります。
店長になったからといって、すべてを自由に決められるわけではありません。一方で、上司に確認しなければ何も決められないという状態では、主体的な店舗運営は難しくなります。
まずは、自分の仕事について次の3つを整理してみましょう。
① 自分が責任を持つことは何か
売上や利益、顧客満足度、スタッフ育成、店舗の衛生管理など、自分に期待されている役割を具体的にします。
「店舗をうまく運営する」といった曖昧な理解ではなく、「何を実現することが求められているのか」まで考えることがポイントです。
② 自分で判断してよいことは何か
日々のオペレーションやスタッフへの指導、お客様への対応など、どこまで自分で判断できるのかを確認します。
判断できる範囲が明確になれば、必要以上に上司の指示を待つことなく、行動に移しやすくなります。
③ どのような場合に相談・承認が必要か
予算を超える支出、人事上の重要な判断、会社全体に影響する変更など、事前の相談や承認が必要な事項を確認します。
自分で判断できることと、上司に相談すべきことを区別できれば、独断によるトラブルを防ぎながら、スピード感を持って仕事を進められます。
この3つを整理するだけでも、店長としての行動は変わってきます。
「これは自分で決めてよいのだろうか」と迷うことが多いなら、上司との認識が一致していない可能性があります。遠慮せずに確認し、責任と権限の境界線を明確にしていきましょう。
3. 責任に対して権限が足りない部分は、改善提案のタネになる
仕事をしていると、「この目標を達成するには、今のやり方では難しい」と感じることがあります。
そのとき、単に「自分には権限がないからできない」と考えてしまうと、行動が止まってしまいます。
しかし、見方を変えれば、そこには店舗や会社をより良くするための改善のヒントがあります。
たとえば、店長が人材育成に責任を持っているのに、教育に使える時間を確保できないとします。
この場合、「教育する時間がありません」と伝えるだけでは、問題の共有にとどまります。
一歩踏み込んで、次のように考えてみます。
- 教育時間を確保するために、どの業務を見直せるだろうか
- シフトの組み方を変えることで、時間をつくれないだろうか
- 店長が担当している業務の一部を、他のスタッフに任せられないだろうか
- 教育時間を確保するために、上司にどのような判断や協力を求めればよいだろうか
こうして考えると、単なる不満が具体的な改善提案に変わります。
ほかにも、店舗の利益改善を任されているのに仕入れ先を変更する権限がない場合は、仕入れ先の見直しを提案できます。販促を工夫したいのに予算の使い方に制限がある場合は、費用対効果を示して予算配分の変更を提案することもできます。
ここで大切なのは、権限がないことを理由に諦めるのではなく、責任を果たすために何が必要なのかを整理し、相談や提案につなげることです。
もちろん、店長が提案したことをすべて認めてもらえるとは限りません。それでも、必要な権限や支援を具体的に伝えることは、店長としての重要な仕事の一つです。
経営者や上司にとっても、現場で働く店長からの改善提案は、店舗の課題を知る貴重な機会になります。
4. 経営者・上司は、店長に何を任せるかを明確にしよう
経営者や上司が店長の主体性を育てたいのであれば、「もっと自分で考えてほしい」「責任感を持ってほしい」と伝えるだけで終わらせないことが重要です。
店長が自分で考え、判断し、行動できる環境を整える必要があります。
そのために、次の3点を確認してみましょう。
① 期待する成果を具体的に伝える
売上を伸ばす、利益率を改善する、スタッフの育成を進めるなど、店長に何を実現してほしいのかを明確にします。
② 任せる範囲を具体的に決める
店長が自分で決めてよいこと、事前相談が必要なこと、経営者や上司が判断することを整理します。
③ 必要な権限や支援が足りているか確認する
店長が責任を果たそうとする中で、判断できずに困っていることや、実行に必要な支援が不足していることがないかを確認します。
たとえば、定期的な面談で「今の責任を果たすために、自分で決められるようにしてほしいことはありますか?」と尋ねてみるのもよいでしょう。
店長から具体的な要望が出てきたら、すぐに認めるか否かを決めるのではなく、会社の方針やリスクを踏まえながら、どこまで任せられるかを一緒に考えます。
任せる範囲を明確にし、必要な支援を行い、実際の行動を振り返る。この積み重ねが、店長の成長につながっていきます。
5. 責任と権限を整理することが、店長の成長につながる
責任を持って仕事をすることは、店長にとって欠かせない姿勢です。しかし、責任を持つことと、何でも自分一人で背負うことは違います。
自分が果たすべき役割を理解し、そのために必要な判断や行動を考える。そして、自分の権限だけでは難しいことがあれば、必要な支援や権限を求め、改善提案につなげていく。
こうした行動ができる店長は、指示を待つだけでなく、自ら店舗をより良くするために動けるようになります。
経営者や上司も、店長に責任を求めるときには、その責任を全うするための権限を渡せているかを振り返ってみてください。
店長自身も、自分の責任と権限を整理し、曖昧な部分は上司と話し合ってみましょう。
責任と権限のバランスを整えることは、単に仕事を進めやすくするだけではありません。店長が自分で考え、判断し、成長していくための土台になります。
店長が主体的に動ける組織をつくるために、まずは「何を任せ、どこまで判断できるのか」を明確にするところから始めてみませんか。
店長の経営スキルやコミュニケーション、マインドセットを育てたい方は、店長成長コーチングでも、現場の課題に合わせた取り組みをご相談いただけます。


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