「スタッフをほめたほうがいいのは分かっているけれど、何をほめればいいのか分からない」
「ほめても、その場では喜ぶけれど、なかなか行動が変わらない」
「頑張っているスタッフと、そうでないスタッフを、どう評価すればいいのだろう?」
飲食店の店長として、こんな悩みを感じたことはありませんか?
忙しい営業中は、どうしてもミスや問題点に目が向きがちです。注文ミスがあれば注意し、提供が遅れれば改善を指示する。店舗を運営するうえで、こうした対応は欠かせません。
しかし、問題を指摘するばかりでは、スタッフは「怒られないように働く」ことを優先するようになるかもしれません。自分から工夫したり、周囲を助けたりする行動も生まれにくくなります。
そこで大切になるのが、スタッフのよい行動や成長を見つけ、言葉や態度で伝える「ほめる・認める力」です。
ただし、何でもほめればよいわけではありません。大切なのは、日々の小さな行動をこまめに認めること、よい行動をしたらすぐに伝えること、そして会社のビジョンや行動指針と結びつけることです。
この記事では、飲食店の店長が実践したい「ほめる・認める」の基本と、スタッフの成長や店舗の成果につなげる具体的な方法を紹介します。
1. なぜ店長に「ほめる・認める力」が必要なのか?
店長の仕事は、スタッフのミスを減らすことだけではありません。スタッフが自分で考え、行動し、店舗の成果に貢献できるように育てることも重要な役割です。
そのためには、改善点を伝えるだけでなく、よい行動にも目を向ける必要があります。
注意されることばかりでは、スタッフは受け身になりやすい
例えば、ランチタイムの営業を想像してみてください。
スタッフが料理の提供を間違えたとき、店長は「注文をよく確認して」と注意します。清掃が不十分なら「もっときれいにして」と指摘します。
一方で、混雑しているときに周囲を見て料理を運んだスタッフや、新人が困っていることに気づいて助けたスタッフには、何も声をかけていません。
このような状態が続くと、スタッフは何をすれば評価されるのか分からなくなります。
それどころか、「余計なことをして注意されるくらいなら、指示されたことだけやろう」と考える可能性もあります。
反対に、よい行動に気づいてもらい、具体的に認めてもらえると、スタッフは自分の行動が役に立ったことを実感できます。
「周りを見て動くことが大切なんだ」
「新人をサポートすることも、自分の仕事なんだ」
このように、期待されている行動への理解が深まるきっかけになります。
「ほめる」と「認める」は、少し違う
「ほめる」と「認める」は似ていますが、店長のコミュニケーションでは、少し意識を分けて使うと効果的です。
ほめるとは、相手のよい行動や成果を評価し、肯定的に伝えることです。
例えば、「今日の接客、笑顔が自然でよかったね」「おすすめ商品の説明が分かりやすかったよ」といった言葉です。
一方、認めるとは、相手の行動や努力、成長、貢献などに気づき、それを事実として伝えることです。
例えば、「忙しいなかでも、最後まで新人のフォローをしてくれたね」「先月より、売上の数字を意識して動けるようになったね」といった声かけです。
結果が出たときだけでなく、結果に至るまでの努力や変化にも目を向けられるのが、「認める」ことの大切なポイントです。
2. スタッフの成長につながる「ほめる・認める」3つの基本
ほめることを特別なイベントにする必要はありません。日々の仕事のなかで、少し意識を変えるだけでも実践できます。
① こまめにほめる・認める
店長がスタッフをほめるとき、月末の面談や目標達成のタイミングだけになっていないでしょうか。
もちろん、大きな成果を評価することは大切です。しかし、スタッフの成長を促すには、日々の小さな行動にも目を向ける必要があります。
例えば、次のような行動です。
- 忙しい時間帯に、周囲を見て自分からサポートに入った
- お客様の様子に気づき、必要な対応を先回りして行った
- 新人スタッフに、分かりやすく仕事を教えた
- ミスをしたあと、原因を振り返って改善しようとした
- 自分の担当業務が終わったあと、ほかのスタッフを手伝った
こうした行動は、売上のように数字で表れないこともあります。しかし、店舗を円滑に運営するうえで欠かせないものです。
店長がこうした行動を見つけて言葉にすることで、スタッフは「自分の仕事を見てもらえている」と感じやすくなります。
また、こまめに認めることは、店長自身がスタッフのよいところを発見する練習にもなります。
「何かほめることはないか」と探すのではなく、「スタッフのどんな行動が店舗に貢献しているか」を観察する。
この意識を持つことから始めてみましょう。
② よい行動をしたら、すぐにほめる
ほめるときは、タイミングも重要です。
例えば、スタッフがお客様に適切な声かけをした場面があったとします。
その場で「今の声かけ、よかったね」と伝えるのと、数日後に「そういえば、この前の接客がよかったね」と伝えるのでは、相手にとっての分かりやすさが違います。
時間がたつほど、何を評価されたのかが曖昧になることもあります。
そのため、よい行動に気づいたら、できるだけ早く伝えましょう。
飲食店では、営業中に長い話をする必要はありません。
- 「今のフォロー、助かったよ」
- 「お客様への説明、分かりやすかったね」
- 「先に準備してくれたおかげで、スムーズに営業できたよ」
このように、短い言葉でも十分です。
ただし、お客様対応中やスタッフが集中している場面など、声をかけるタイミングには配慮が必要です。営業の妨げにならない範囲で、行動と評価を結びつけて伝えましょう。
③ 具体的な行動を伝えてほめる
「すごいね」「さすがだね」といった言葉も、うれしいものです。
しかし、それだけでは何がよかったのかが伝わらない場合があります。
例えば、新人スタッフが仕事を覚えてきたときに、
「最近、頑張っているね」
と伝えるだけでなく、
「前は注文を受けるときに迷うことが多かったけれど、今日は落ち着いて復唱できていたね。練習した成果が出ているね」
と伝えてみましょう。
具体的な行動や変化を伝えることで、本人は自分の成長を実感しやすくなります。
また、改善してほしい行動がある場合でも、できている部分を見つけて伝えることは可能です。
「まだ提供時間は目標に届いていないけれど、仕込みの準備を前倒しできるようになったね。次は営業中の連携を改善していこう」
このように、現在の成長を認めながら次の課題を共有すれば、本人の努力を否定せずに改善へつなげられます。
3. KPIや目標の達成は、みんなに見える形で承認する
日々の小さな行動を認めることに加えて、店舗やスタッフの成果を組織全体で共有することも重要です。
特に、売上や利益などのKPI、会社や店舗で設定した目標については、達成した事実を本人だけに伝えて終わらせない工夫が必要です。
成果を見える化すると、努力が伝わりやすくなる
例えば、店舗で「おすすめ商品の販売数を増やす」という目標を設定したとします。
目標を達成したスタッフに、店長が個別に「よく頑張ったね」と伝えることは大切です。
さらに、朝礼やミーティングで、本人の了承や職場の状況に配慮しながら成果を共有すれば、ほかのスタッフもその取り組みを知ることができます。
- 「今週は、おすすめ商品の販売数が目標を上回りました」
- 「お客様の注文に合わせて提案を工夫したことが、成果につながりました」
- 「この取り組みを、ほかのメンバーもぜひ参考にしてみてください」
こうした共有は、単に個人を称賛するためだけのものではありません。店舗として望ましい行動を共有し、ほかのスタッフが学ぶ機会にもなります。
また、店舗全体の目標を達成した場合も、結果だけでなく、達成に貢献した工夫や協力を具体的に取り上げましょう。
KPIは、結果だけでなく行動も承認する
KPIを活用するときに注意したいのは、数字の結果だけでスタッフを評価しないことです。
例えば、売上目標を達成できたスタッフがいたとしても、その理由はさまざまです。来店客数が多かったのかもしれませんし、スタッフの提案力が向上したのかもしれません。
逆に、本人が努力していても、天候や客数などの影響で目標に届かないこともあります。
そこで、結果と行動の両方を見ることが重要です。
例えば、店舗のKPIとして次のような指標を管理している場合です。
- 見込客
- 成約率
- 平均リピート回数
- 平均客単価
- 利益率
これらの数字を確認しながら、スタッフが成果につながる行動を取れているかを見ていきます。
平均客単価の向上を目指しているなら、お客様のニーズに合った商品提案を工夫した行動を認める。利益率の改善を目指しているなら、食材のロスを減らす工夫や適切な在庫管理を評価する。
このように、目標と行動を結びつけて承認することがポイントです。
目標を達成できたかどうかだけでなく、目標に向けてどんな工夫をしたのかにも目を向けることで、スタッフは次に何を意識すればよいのかを理解しやすくなります。
なお、KPIは個人を競わせるためだけのものではありません。数字を使って現状を把握し、よい取り組みを見つけ、改善につなげるために活用しましょう。
承認の場は、スタッフ同士の学びの場にもなる
成果を共有する場としては、朝礼、終礼、店舗ミーティング、社内掲示板などが考えられます。
大切なのは、形式を整えることよりも、よい行動や成果が自然に共有される仕組みをつくることです。
例えば、週に一度のミーティングで「今週、店舗に貢献した行動」を一つずつ共有する方法があります。
店長が一方的にスタッフを評価するだけでなく、スタッフ同士が互いの工夫や貢献に気づけるようにすると、承認が店長だけの役割ではなくなっていきます。
ただし、順位づけや公開表彰が全員にとって心地よいとは限りません。人前での評価を負担に感じるスタッフもいます。本人の希望や職場の雰囲気に配慮し、個別に伝える方法も使い分けましょう。
4. ビジョンや行動指針に沿ってほめることで、一貫性を持たせる
こまめにほめることも、成果を見える形で承認することも大切です。
しかし、店長の気分や個人的な好みで評価が変わってしまうと、スタッフは何が大切なのか分からなくなります。
そこで重要になるのが、会社のビジョンや行動指針に沿って、ほめる・認めることです。
会社が大切にする行動を、日々の言葉で伝える
例えば、会社のビジョンが「お客様に喜ばれる店舗をつくる」だとします。
この場合、お客様に喜んでもらうための工夫や、スタッフ同士の協力など、ビジョンにつながる行動を見つけて認めます。
「今日の接客、よかったね」だけでなく、
「お客様が迷っていることに気づいて、先に声をかけてくれたね。お客様に喜んでもらうという私たちの考え方を、行動で示してくれたと思うよ」
と伝えることができます。
また、行動指針に「仲間を尊重する」という項目があれば、新人をサポートした行動や、忙しいスタッフを手伝った行動を認めることができます。
このように、会社が大切にしている価値観と日々の行動を結びつけると、スタッフは理念を単なる掲示物ではなく、実際の仕事で使う判断基準として理解しやすくなります。
店長によって評価が変わらないようにする
複数店舗を運営する企業では、店舗ごとに店長の価値観やマネジメントスタイルが異なることがあります。
ある店長は売上を重視し、別の店長は接客態度を重視する。さらに別の店長は、指示に従うことを高く評価する。
こうした違いが大きくなると、スタッフは店舗によって求められる行動が変わると感じるかもしれません。
もちろん、業態や店舗の状況に応じて重点を変えることは必要です。しかし、会社として大切にしたい価値観まで店長ごとに変わってしまうと、組織全体の一貫性が失われます。
そこで、会社のビジョンや行動指針を基準にして、どのような行動を認めるのかを共有しておきましょう。
例えば、店長同士で「最近、会社の行動指針に沿ったよい行動はあったか」を話し合う機会をつくる方法があります。
それぞれの店舗の事例を共有すれば、評価の視点をそろえるだけでなく、ほかの店舗で実践できる取り組みも見つかります。
行動指針が曖昧なら、具体的な行動に落とし込む
「主体性を大切にする」「お客様を大切にする」といった言葉だけでは、具体的に何をすればよいのかが分かりにくいことがあります。
その場合は、行動指針を現場の行動に置き換えてみましょう。
例えば、「主体性を大切にする」なら、次のような行動が考えられます。
- 指示を待つだけでなく、自分で優先順位を考える
- 問題に気づいたら、改善策を考えて提案する
- 自分の担当業務が終わったら、周囲の状況を確認する
こうした具体的な行動を店長同士で共有しておけば、スタッフの行動を認めるときにも、より一貫した判断ができるようになります。
5. 飲食店の現場で使える「ほめる・認める」実践例
ここまでの考え方を、実際の店舗運営に当てはめてみましょう。
事例1:新人スタッフが成長してきたとき
新人スタッフが、以前よりスムーズに接客できるようになったとします。
店長:「最近、接客が落ち着いてきたね」
スタッフ:「ありがとうございます」
店長:「今日は注文を受けるときに、きちんと復唱して確認できていたね。前に練習したことを実践できていたと思うよ」
スタッフ:「間違いがないように意識していました」
店長:「その意識は大切だね。これからも続けていこう」
ここでは、単に「成長したね」と伝えるのではなく、具体的に何ができるようになったのかを認めています。
新人スタッフにとっては、自分の努力が成果につながっていると実感でき、次に何を続ければよいのかも分かりやすくなります。
事例2:目標達成に向けて工夫したとき
店舗で客単価の向上を目指しているものの、目標達成にはまだ届いていないとします。
店長:「今週は目標に少し届かなかったけれど、お客様の好みに合わせておすすめを工夫していたね」
スタッフ:「はい。お客様の注文に合わせて提案するようにしました」
店長:「その工夫はよかったと思うよ。実際に注文につながった場面もあったね。来週は、どんな提案が喜ばれたのかも振り返ってみよう」
このように、目標に届かなかった場合でも、よい行動を認めることはできます。
結果を確認しながら、成果につながった行動を見つけ、次の改善につなげていくことが重要です。
事例3:行動指針に沿った行動があったとき
会社が「仲間を尊重し、助け合うこと」を大切にしているとします。
あるスタッフが、自分の仕事を終えたあと、新人スタッフのフォローに入っていました。
店長:「さっき、新人のフォローに入ってくれていたね。自分の仕事が終わったあとに周りを見て動いてくれて、助かったよ」
スタッフ:「まだ慣れていないようだったので、手伝いました」
店長:「ありがとう。仲間を助け合うという、うちが大切にしている行動そのものだと思うよ」
このように伝えることで、会社が大切にしている価値観を、具体的な行動と結びつけることができます。
スタッフは、自分の行動が店舗だけでなく、会社全体の考え方にもつながっていると理解しやすくなります。
6. 「ほめる・認める」を続けるために、店長自身も振り返ろう
ここまで読んで、「スタッフのよいところを見つけるのは、意外と難しい」と感じた方もいるかもしれません。
特に、店長自身が忙しいときや、店舗で問題が続いているときは、どうしても改善点ばかりに意識が向きがちです。
だからこそ、ほめる・認めることを、店長個人の気分や記憶だけに頼らない仕組みにしておくと実践しやすくなります。
毎日、スタッフのよい行動を一つ見つける
まずは、営業終了後に「今日、スタッフのよかった行動は何だったか」を一つ振り返ってみましょう。
大きな成果でなくても構いません。
「新人が自分から質問してくれた」
「忙しい時間帯に、周りを見て動いてくれた」
「ミスをしたあと、原因を確認して改善しようとしていた」
こうした行動を一つ見つけ、次の出勤時や振り返りのタイミングで伝えてみます。
毎日すべてのスタッフに必ず同じ数だけ声をかけることにこだわる必要はありません。特定のスタッフばかりを評価していないか、普段あまり目立たないスタッフの貢献を見落としていないかを確認することが大切です。
店長同士で、承認の事例を共有する
複数店舗を運営している企業なら、店長同士でスタッフのよい行動を共有する機会を設けるのも有効です。
例えば、店長会議で次のようなことを話し合います。
- 最近、スタッフの成長を感じた出来事は何か
- 会社のビジョンや行動指針に沿った行動はあったか
- KPIの改善につながった工夫は何か
- ほかの店舗でも取り入れられそうな取り組みはあるか
こうした情報を共有することで、店長自身もスタッフの行動を見る視点を増やすことができます。
また、会社として大切にしたい行動が明確になり、店舗ごとのマネジメントのばらつきを小さくすることにもつながります。
7. スタッフのよい行動を見つけ、成長につなげる店長へ
スタッフを育てるためには、問題点を指摘し、改善を促すことが必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。
よい行動に気づき、こまめに認め、できるだけ早く伝える。そして、KPIや目標の達成は、みんなに見える形で承認する。さらに、会社のビジョンや行動指針に沿って評価することで、スタッフが何を大切にして働けばよいのかを明確にできます。
今回紹介したポイントを整理すると、次の4つです。
- こまめに認める: 日々の小さな行動や成長にも目を向ける
- すぐに伝える: よい行動と評価を結びつける
- 成果を共有する: KPIや目標の達成を見える形で承認する
- 基準をそろえる: ビジョンや行動指針に沿って一貫性を持たせる
そして、忘れてはいけないのが、店長自身も継続して実践することです。
一度ほめたからといって、すぐにスタッフの行動が変わるとは限りません。大切なのは、日々のコミュニケーションを通じて、よい行動を見つけ、言葉にして伝え続けることです。
スタッフの成長を支える店長が増えれば、店舗の雰囲気やチームワークにも変化が生まれます。その積み重ねが、スタッフの主体性や定着、そして店舗の成果につながっていきます。
店長の育成を、店舗全体の成長につなげるために
店長がスタッフを育てるためには、経営スキルだけでなく、相手の考えを引き出す力や、よい行動を認めて成長を支えるコミュニケーション力が必要です。
ミルラボの「店長成長コーチング」では、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの側面から、店長が自ら考え、スタッフの力を引き出し、店舗の成果につなげられるよう支援しています。
「店長によってスタッフへの接し方が違う」「スタッフの主体性を高めたい」「頑張っているスタッフが定着する組織をつくりたい」といったお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
店長一人の頑張りに頼るのではなく、スタッフ一人ひとりの成長を組織の力に変えていく店舗づくりを、一緒に考えていきましょう。


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