「接客も悪くない。料理も美味しい。価格も妥当。それなのに、なかなか高評価レビューが増えない」
飲食店を経営していると、こんな悩みを感じることがあります。
もちろん、低評価が多いわけではありません。大きなクレームもなく、店舗としては一定の品質を保っている。それなのに、Googleマップなどを見ると、思ったほど高評価の口コミが増えていかない。
実は、ここには「お客様の期待値」と「実際の体験」の関係が大きく影響しています。
お客様は、期待を大きく下回ったときに不満を感じます。一方で、期待を大きく上回ったときには「感動した」「また来たい」「誰かに教えたい」という反応が生まれます。
そして、意外と見落とされているのが、期待通りだった場合です。
料理が美味しい。接客が普通に良い。店内もきれい。注文した商品が予定通り提供された。
これはもちろん大切なことです。しかし、「期待通りだった」というだけでは、わざわざレビューを書こうとは思わない人も多いでしょう。
つまり、高評価レビューを増やしたいなら、「問題をなくす」だけでは足りません。
今回は、飲食店で高評価レビューが増えない原因と、店長が取り組むべき「期待を超える店舗づくり」について考えてみます。
高評価レビューが増えないことで起こる3つの問題
1.良い店舗なのに、良さが伝わらない
店舗側からすると、「うちはちゃんとやっている」と感じていても、その価値がお客様に伝わっているとは限りません。
例えば、
- 注文から提供まで適切な時間だった
- スタッフが丁寧だった
- 料理の味に問題がなかった
- 店内が清潔だった
これらは店舗運営の基本です。
しかし、お客様からすると「それくらいは当然」と感じている可能性があります。
良い仕事をしていることと、顧客から「良い体験だった」と評価されることは、必ずしも同じではありません。
2.新規顧客へのアピール材料が増えない
飲食店を選ぶとき、口コミやレビューを参考にする人は少なくありません。
そのため、実際には満足しているお客様が多くても、その満足がレビューとして蓄積されなければ、新規顧客から見える情報にはなりません。
「実際のお客様からどう評価されているか」は、店舗の大切な資産です。
高評価レビューが少ないということは、店舗の実力が外部に伝わる機会を逃している可能性があります。
3.「満足させる」ことだけが目標になる
もう一つの問題は、店舗の目標が「クレームを出さない」「不満を持たせない」というところで止まってしまうことです。
もちろん、クレームを減らすことは重要です。
しかし、それだけでは「普通に良い店」から抜け出せません。
店長には、「問題を起こさない店舗」をつくるだけでなく、「また来たいと思われる店舗」をつくる視点が必要になります。
理想は「期待通り」ではなく「期待を超える」店舗
顧客満足を考えるうえで、非常にシンプルな考え方があります。
お客様が事前に持っている期待と、実際に体験した価値を比較するという考え方です。
期待を下回れば、不満につながります。
期待通りなら、「普通だった」という評価になりやすい。
そして、期待を上回ると、「良かった」「嬉しかった」「感動した」という反応につながります。
ここで重要なのは、高評価レビューを増やすために、何でもかんでもサービスを追加すればいいわけではないということです。
例えば、無料サービスを増やしたり、スタッフに過剰な接客を求めたりすると、現場の負担が増えてしまいます。
大切なのは、
「お客様は何を期待して来店しているのか?」
「その期待に対して、どこなら少し上回れるのか?」
を考えることです。
会社側にある3つの課題
1.「美味しい・丁寧・清潔」で止まっている
飲食店では「料理を美味しくする」「接客を丁寧にする」「店をきれいにする」といった改善が行われます。
これらは重要ですが、それだけでは競合店との差別化が難しくなります。
「美味しい」は飲食店として当然。
「丁寧な接客」も多くの店舗が目指しています。
その先にある、「この店だからこそ嬉しかった」という体験を考える必要があります。
2.店舗のコンセプトが現場に落ちていない
店舗コンセプトや理念があっても、それがスタッフの日々の行動に反映されていなければ、顧客体験にはつながりません。
例えば、
「家族のように温かい店」
というコンセプトがあったとします。
では、具体的に「家族のように温かい接客」とは何でしょうか。
スタッフによって解釈が違えば、提供されるサービスもバラバラになります。
理念やコンセプトを、具体的な行動に落とし込むことが重要です。
3.レビューを結果だけで見ている
「今月は星5レビューが何件だった」
「先月より評価が下がった」
という数字を見るだけでは、改善にはつながりません。
レビューには、お客様が何に価値を感じたのか、何に不満を感じたのかという情報が含まれています。
レビューを単なる評価ではなく、「顧客体験を改善するための情報」として扱うことが必要です。
店長自身が抱えやすい3つの課題
1.「クレームがない=問題ない」と考えてしまう
店長は日々、多くの問題に対応しています。
そのため、「今日はクレームがなかった」「大きなトラブルがなかった」という状態を見ると、店舗運営が順調だと感じやすくなります。
しかし、問題がないことと、期待を超える体験ができていることは別です。
店長には、マイナスをゼロにする視点だけでなく、ゼロをプラスにする視点が求められます。
2.スタッフに「もっと接客を頑張ろう」とだけ伝えてしまう
高評価レビューが増えないと、
「もっと笑顔で」
「もっと丁寧に」
「もっとお客様を見て」
とスタッフに伝えることがあります。
しかし、これでは具体的な行動になりません。
「どんなお客様に、どんなタイミングで、何をすると喜ばれるのか」
まで具体化する必要があります。
3.店長だけが考えてしまう
顧客体験を改善するとき、店長だけでアイデアを考える必要はありません。
むしろ、毎日お客様と接しているスタッフのほうが、細かな変化に気づいていることもあります。
「最近、お客様からどんなことを言われた?」
「どんなときにお客様が嬉しそうだった?」
「自分がお客様だったら、何をされたら嬉しい?」
こうした問いを使い、スタッフと一緒に考えることが、飲食人材育成にもつながります。
高評価レビューを増やすための4つのステップ
STEP1.お客様の期待を洗い出す
まず、「お客様はこの店に何を期待しているのか」を考えます。
例えば、
- 美味しい料理
- 素早い提供
- 丁寧な接客
- 清潔な店内
- 手頃な価格
- 居心地の良さ
などです。
ここで大切なのは、「自分たちが提供したいもの」ではなく、「お客様が期待しているもの」から考えることです。
STEP2.期待通りと期待超過を分ける
次に、サービスを「当然」と「期待を超える」に分けてみます。
例えば、
「注文した料理が出てくる」
これは基本的には期待通りです。
一方、
「小さなお子様連れのお客様に、スタッフが自然に取り皿を用意する」
「誕生日のお客様に、店舗のコンセプトに合った一言を添える」
などは、状況によって期待を上回る体験になるかもしれません。
重要なのは、高額なサービスを追加することではありません。
小さな気づきや工夫でも、「思っていたより良かった」という体験はつくれます。
STEP3.スタッフ全員で「喜ばれる行動」を考える
店長が一方的にルールを決めるのではなく、スタッフと一緒に考えてみましょう。
「最近、お客様が喜んでいた場面は?」
「お客様が困っていそうな場面は?」
「自分がお客様なら、何をされたら嬉しい?」
こうした会話から、店舗独自の「期待を超える行動」を見つけます。
これは飲食人材育成としても有効です。
自分たちで考えた行動だからこそ、単なる「やらされる接客」ではなく、「お客様に喜んでもらうための接客」になっていきます。
STEP4.レビューを改善材料として使う
高評価レビューがあったら、「星が5だった」で終わらせません。
「なぜ、このお客様は5点をつけてくれたのか?」
「どの部分を評価してくれたのか?」
を考えます。
逆に低評価レビューも、単に落ち込む材料にするのではなく、改善のヒントとして使います。
レビューから顧客が評価したポイントを集め、店舗の強みとして再現できるようにしていくことが重要です。
事例:レビューが増えなかった店舗が見つけた「小さな感動」
ある飲食店では、料理の評価も接客評価も悪くありませんでした。
しかし、レビューの投稿数はなかなか増えません。
店長は「もっと丁寧な接客をしよう」とスタッフに伝えていましたが、大きな変化はありません。
そこで、店長はスタッフと一緒に過去のレビューを分析しました。
すると、評価の高いレビューには共通点がありました。
料理そのものよりも、
「子どもへの対応が嬉しかった」
「店員さんがこちらの状況を見てくれていた」
「忙しい時間なのに気にかけてもらえた」
といった内容が目立っていたのです。
そこで、スタッフ全員で「この店らしい、ちょっと嬉しい接客」を考えることにしました。
例えば、お客様の状況を見て必要なものを先回りして用意すること。
注文に迷っているお客様には、単におすすめ商品を伝えるだけではなく、人数や好みを聞いて提案すること。
小さな子どもがいるお客様には、必要に応じて取り皿などを先に準備すること。
こうした行動を、無理のない範囲で店舗のガイドラインとして整理しました。
結果として、スタッフの接客に対する意識も変わりました。
「店長に言われたから接客する」のではなく、
「どうしたらお客様に喜んでもらえるか?」
を考えるようになったのです。
そして、レビューにも具体的な接客について触れられるケースが増えていきました。
ポイントは、レビューを書いてもらうことだけを目的にしなかったことです。
レビューを書きたくなるような体験を、先に設計した。
ここが大きな違いです。
最後に
高評価レビューを増やしたいと考えると、「どうすればお客様にレビューを書いてもらえるか?」と考えがちです。
もちろん、レビューを依頼する仕組みを整えることも一つの方法です。
しかし、その前に考えておきたいことがあります。
それは、
「お客様は、わざわざ誰かに伝えたくなるほどの体験をしているだろうか?」
ということです。
期待を下回れば、不満が生まれます。
期待通りなら、特に何も感じないかもしれません。
そして、期待を上回ったとき、「良かった」「また来たい」「誰かに教えたい」という感情が生まれます。
だからこそ、店長に必要なのは「クレームを減らす」という視点だけではありません。
お客様の期待を理解し、その期待を少し超える体験を、スタッフと一緒につくっていくことです。
これは、単なる接客改善ではありません。
店長がスタッフを育て、店舗の強みをつくり、顧客満足を高めていくための「店舗運営」そのものです。
もし今、「うちの店は悪くないのに、なぜか高評価レビューが増えない」と感じているなら、まずはスタッフと一緒に問いかけてみてください。
「この店に来たお客様が、誰かに話したくなる瞬間はどこにあるだろう?」
その答えの中に、レビューだけでなく、リピーターや口コミを増やすヒントも隠れているかもしれません。



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