毎日、営業準備をして、お客様を迎え、スタッフに指示を出し、売上を確認する。飲食店の店長は、日々やるべき仕事がたくさんあります。
忙しい毎日を過ごしていると、目の前の仕事をこなすことが中心になりがちです。しかし、ふと振り返ったとき、「先月と比べて何が良くなったのだろう?」「この店を、これからどうしていきたいのだろう?」と答えに迷うことはありませんか?
もし思い当たることがあるなら、一度考えてみてほしいことがあります。それは、目標を持って店舗を運営できているかということです。
目標がなければ、今の状態を良くする必要性にも気づきにくくなります。改善すべき課題が見えなければ、具体的な行動も生まれにくくなります。
店長として店舗を成長させるためには、日々の営業をこなすだけでなく、「どこを目指すのか」を明確にすることが大切です。
今回は、店長成長コーチングプログラムのマインドセット編「目標思考」について、目標の立て方や従業員への広げ方を紹介します。
1. 目標がなければ、意欲も課題も生まれにくい
目標を持つことには、単に数字を達成する以上の意味があります。
目標があるからこそ、現状とのギャップに気づき、何を改善すればよいかを考えられるようになります。
たとえば、「お客様に喜んでもらえる店にしたい」という思いだけでは、日々の営業で何を変えるべきかが曖昧なままです。
一方で、「今月はお客様アンケートの満足度を前月より高める」と決めたら、接客のどこを改善するか、料理の提供時間に問題はないか、スタッフの声かけは十分か、といった具体的な視点が生まれます。
目標があることで、現状を確認する理由ができ、課題を発見し、行動を起こすきっかけが生まれるのです。
反対に、目標がないまま営業を続けていると、日々の仕事は「いつもどおりに営業すること」そのものになりがちです。
売上が上がっても下がっても、忙しくても暇でも、「今日は営業できた」で終わってしまう。これでは、良くなったことも、改善すべきことも見過ごしてしまうかもしれません。
もちろん、毎日の営業を安定して続けることは大切です。しかし、店舗を成長させたいのであれば、営業すること自体を目的にするのではなく、営業を通じて何を実現したいのかを考える必要があります。
目標があるから、現状との違いが見える。違いが見えるから、課題が生まれる。課題があるから、次の行動を考えられる。
この流れを意識することが、目標思考の第一歩です。
2. 目標はSMARTゴールで表現しよう
目標を立てるときに気をつけたいのは、曖昧な表現のまま終わらせないことです。
たとえば、「売上を伸ばす」「接客を良くする」「スタッフを成長させる」といった目標は、方向性としては間違っていません。しかし、何をどこまで実現すれば達成なのかが明確ではありません。
そこで活用したいのが、SMARTゴールという考え方です。
SMARTは、目標を具体的で実行可能なものにするための5つの観点です。
- S:Specific(具体的) — 何を達成するのかが明確か
- M:Measurable(測定可能) — 達成したかどうかを測れるか
- A:Achievable(達成可能) — 現実的に達成を目指せるか
- R:Relevant(関連性がある) — 店舗や会社の方針、自分の役割に合っているか
- T:Time-bound(期限がある) — いつまでに達成するのかが決まっているか
この5つの観点から、曖昧な目標を具体的な目標に変えてみましょう。
たとえば、「接客を良くする」という目標を考えます。
このままでは、どのような接客を目指すのか、何をもって改善したと判断するのかがわかりません。
そこで、次のように設定してみます。
「今月末までに、来店時の挨拶と退店時のお見送りを全スタッフが実践できるようにし、店長が週1回チェックする」
この目標では、取り組む内容が具体的で、実践状況を確認でき、期限も決まっています。また、接客の質を高めるという店舗の方針にもつながっています。
別の例も見てみましょう。
曖昧な目標: 売上を上げる。
SMARTを意識した目標: 今後3か月で、月間売上を現在の500万円から550万円に引き上げる。毎週、客数と客単価を確認し、必要な改善策を実行する。
※数字は設定例です。実際には、店舗の現状や商圏、繁忙期などを踏まえて決めます。
このように、目標を具体的に表現すると、日々何を確認すればよいのか、どのような行動を取ればよいのかが見えやすくなります。
ただし、SMARTの条件を満たせば、どんな目標でもよいわけではありません。達成することに意味があり、本人が納得して取り組めることも重要です。数字だけを追いかけるのではなく、目標の先にある目的も意識しましょう。
3. 目標を立てたら、日々の行動につなげよう
目標を設定しても、紙に書いて掲示しただけでは店舗は変わりません。
大切なのは、目標を日々の行動に落とし込むことです。
たとえば、3か月後に売上を10%伸ばすという目標を立てたとします。
その目標を達成するために、まず売上を構成する要素を確認します。客数を増やすのか、客単価を上げるのか、リピーターを増やすのか。店舗の状況によって、取り組むべきことは変わります。
仮に、リピーターを増やすことに重点を置くなら、次のような行動目標を考えられます。
- 来店したお客様へのおすすめ商品の案内を実践する
- お客様の好みや要望をスタッフ間で共有する
- 週に一度、接客の振り返りを行う
- 週ごとに再来店の状況を確認し、施策を見直す
こうした行動が積み重なることで、目標達成に近づいていきます。
また、目標に向けた取り組みが計画どおりに進んでいるか、定期的に確認することも必要です。
結果が出ていなければ、努力が足りないと決めつけるのではなく、目標の設定が適切だったのか、行動の内容は正しかったのか、実行するための時間や人員が確保できているかなどを振り返ります。
目標は、一度決めたら絶対に変えてはいけないものではありません。状況を確認し、必要に応じて行動や計画を見直すことで、目標が成長のための道具になります。
店長自身がこのサイクルを実践することが、目標思考を身につけるうえで重要です。
4. 店長だけでなく、従業員にも目標を持ってもらおう
目標思考は、店長だけに必要なものではありません。従業員一人ひとりが目標を持つことで、店舗全体の成長につながります。
ただし、ここで注意したいのは、店長が一方的に目標を与えるだけにならないことです。
たとえば、「今月はおすすめ商品の販売数を増やすから、全員もっと売ってください」と伝えたとします。
これでは、従業員にとっては指示を受けただけであり、自分自身が何を目指すのか、なぜ取り組むのかが見えにくいかもしれません。
そこで、まずは本人に問いかけてみましょう。
「今の仕事で、もっとできるようになりたいことはある?」
「お客様に喜んでもらうために、自分が工夫できそうなことは何だろう?」
「来月までに、一つできるようになるとしたら何に挑戦したい?」
このような問いかけを通じて、本人が自分の成長や仕事について考える機会をつくります。
たとえば、新人スタッフなら「お客様から質問されたとき、自信を持ってメニューを説明できるようになる」。接客経験のあるスタッフなら「お客様の好みに合わせて、おすすめの商品を提案できるようになる」。アルバイトリーダーなら「新人スタッフに仕事を教え、一人でできる業務を増やす」といった目標が考えられます。
目標は、必ずしも売上や販売数などの数字である必要はありません。習得したいスキルや、できるようになりたい行動も立派な目標です。
もちろん、個人の目標を店舗全体の目標とつなげることも大切です。
たとえば、店舗の目標が顧客満足度の向上であれば、あるスタッフは料理の説明力を高めること、別のスタッフはお客様への気配りを増やすことを目標にできます。
全員が同じことを目指す必要はありません。それぞれの役割や経験に合った目標を設定し、店舗全体の目標に貢献できる状態を目指しましょう。
5. 目標を振り返る時間をつくろう
目標を立てることと同じくらい重要なのが、振り返ることです。
目標を設定しても、その後まったく確認しなければ、日々の忙しさの中で忘れてしまうことがあります。
そこで、朝礼や終礼、定期的な面談などを活用し、目標に向けた取り組みを確認する機会をつくりましょう。
振り返りでは、次の3つを確認すると取り組みやすくなります。
① 目標に対して、どこまで進んだか
できたことや、数字の変化など、事実を確認します。
② うまくいったこと、難しかったことは何か
結果だけでなく、取り組みの過程にも目を向けます。できなかったことがあれば、原因や障害を整理します。
③ 次に何をするか
振り返りを反省だけで終わらせず、次の具体的な行動を決めます。
たとえば、「おすすめ商品の販売数が目標に届かなかった」という結果が出たとします。
そのとき、「もっと頑張ろう」で終わらせるのではなく、「商品を案内するタイミングが遅かったのではないか」「商品の特徴を十分に説明できていなかったのではないか」と考えてみます。そして、次の営業で試す行動を決めます。
こうした振り返りを繰り返すことで、目標は単なる数字やスローガンではなく、日々の仕事を改善するための基準になります。
また、従業員の目標を振り返る際には、達成できたかどうかだけで評価しないことも大切です。挑戦したこと、工夫したこと、以前よりできるようになったことにも目を向けましょう。
目標を持つことが、失敗を恐れる理由ではなく、成長する機会になるように関わることが、店長に求められる役割です。
6. 目標思考が、店長と店舗の成長をつくる
目標を持たずに日々の営業を続けていると、目の前の仕事をこなすことが中心になり、現状を変えるための課題や行動が見えにくくなります。
一方で、目指す姿が明確になれば、現状とのギャップに気づき、改善すべきことを考え、具体的な行動につなげられます。
そのために、まずは店長自身がSMARTゴールを意識して目標を設定し、日々の営業の中で実践と振り返りを繰り返してみましょう。
そして、その考え方を従業員にも広げ、一人ひとりが自分の成長や店舗への貢献について考えられる機会をつくっていきましょう。
目標思考は、特別な能力ではありません。「どこを目指すのか」「そのために何をするのか」を考える習慣です。
あなたの店舗は、毎日の営業を通じて何を実現したいのでしょうか?
まずは、店長自身の目標を一つ、具体的な言葉にしてみてください。そこから、店舗を成長させるための新しい行動が始まります。
店長の経営スキルやコミュニケーション、マインドセットを体系的に育てたい方は、店長成長コーチングでも、店舗の課題に合わせた取り組みをご相談いただけます。


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