「何度説明しても、スタッフが自分で考えて動いてくれない」
「問題が起きると、すぐに店長である自分に答えを求めてくる」
「アドバイスをしているのに、なかなか行動が変わらない」
飲食店の店長として、こんな悩みを抱えていませんか?
スタッフに成長してほしいと思うほど、つい答えを教えたり、具体的な指示を出したりしたくなるものです。もちろん、正しい知識や手順を教えることは大切です。しかし、いつも店長が答えを与えていると、スタッフは自分で考える機会を失ってしまうかもしれません。
そこで重要になるのが、**相手に気づきを与え、自分から行動するきっかけをつくる「質問する力」**です。
質問は、単に情報を集めるためのものではありません。相手が自分の考えを整理し、問題の原因に気づき、次の行動を決めるための手段でもあります。
この記事では、飲食店の店長が身につけたい質問の基本と、現場で使える実践方法を解説します。
1. なぜ店長に「質問する力」が必要なのか?
飲食店では、毎日さまざまな判断が求められます。
お客様からの要望、スタッフ同士の連携、売上目標への対応、新人教育など、店長がすべての問題に答えを出していては、時間がいくらあっても足りません。
また、店長が不在のときに判断できるスタッフが育たなければ、店舗運営はいつまでも店長個人の能力に依存してしまいます。
そこで大切なのが、スタッフ自身が考え、判断し、行動できるように育てることです。
答えを教えるだけでは、自分で考える力が育ちにくい
例えば、ランチタイムに料理の提供が遅れているとします。
店長が「ホールの人員を増やして」「キッチンに早く出すように伝えて」と指示すれば、その場の問題は解決するかもしれません。
しかし、スタッフはなぜ提供が遅れているのか、どこに原因があるのかを理解しないまま、指示されたことだけを実行する可能性があります。
一方で、次のように質問したらどうでしょうか。
- 「今、提供が遅れているのはどの商品かな?」
- 「なぜ、その商品が遅れていると思う?」
- 「どうすれば、提供時間を短縮できそう?」
このように問いかけることで、スタッフは状況を振り返り、自分なりに原因や解決策を考えることができます。
もちろん、緊急時や安全に関わる場面では、店長がすぐに指示を出す必要があります。しかし、考える時間を取れる場面では、質問を活用することでスタッフの成長を促せます。
質問の目的は、正解を言わせることではない
質問するときに気をつけたいのは、店長が期待する答えを言わせることが目的にならないようにすることです。
「人員が足りないから提供が遅れたんだよね?」
「もっと早く準備しておけばよかったと思わない?」
こうした聞き方は、質問の形をしていても、実際には店長の考えを伝えているだけです。
スタッフは店長の期待を察して答えるようになり、本当の考えを話さなくなるかもしれません。
大切なのは、相手の考えを知り、新しい視点に気づいてもらい、自分で次の行動を選べるようにすることです。
2. 気づきと行動を引き出す「What・Why・How」の質問
質問の仕方に迷ったときは、**What(何が起きているか)→ Why(なぜ起きているか)→ How(どうするか)**の順番を意識してみましょう。
状況を整理してから原因を考え、最後に具体的な行動を決める流れです。
<text color=”secondary” size=”sm”>※ここでのWhat・Why・Howは、店長が現場で使いやすい質問の基本形です。すべての場面で必ずこの順番にする必要はありません。</text>
STEP1:What「何が起きているのか?」を聞く
最初は、現状や事実を整理する質問です。
いきなり原因を尋ねても、相手が状況を整理できていなければ、具体的な答えは出てきません。
例えば、売上目標を達成できなかったスタッフとの面談なら、次のように聞いてみます。
- 「今月の売上は、目標に対してどのくらいだった?」
- 「先月と比べて、変わったことはある?」
- 「営業中に、うまくいったことと難しかったことは何かな?」
ここでは、すぐに評価やアドバイスをしないことがポイントです。
スタッフの話を聞きながら、何が起きていたのかを一緒に整理していきます。
店長から見ると明らかな問題でも、本人は別の部分に注目しているかもしれません。まずは相手の見ている景色を理解しましょう。
STEP2:Why「なぜ起きたのか?」を聞く
現状が整理できたら、次は原因や背景を考える質問に移ります。
例えば、客単価が目標に届かなかった場合です。
- 「客単価が伸びなかった理由は、何だと思う?」
- 「おすすめ商品の注文が少なかったのは、なぜだろう?」
- 「お客様におすすめするとき、どんなことを意識していた?」
ここで重要なのは、原因を一つに決めつけないことです。
おすすめの説明が不足していたのかもしれません。お客様のニーズを十分に把握できていなかった可能性もあります。そもそも、商品の魅力をスタッフ自身が理解できていなかったのかもしれません。
店長が先回りして原因を決めるのではなく、相手が自分の経験を振り返り、複数の可能性を考えられるように質問します。
また、「なぜできなかったの?」という聞き方は、責められていると感じさせる場合があります。
そんなときは、「うまくいかなかった背景には、どんなことがあったと思う?」など、相手が安心して考えられる表現に変えてみましょう。
STEP3:How「どうすればよいか?」を聞く
原因や背景が見えてきたら、最後は行動につなげる質問です。
- 「次は、どんな工夫ができそう?」
- 「まず一つ変えるとしたら、何をする?」
- 「いつから実践してみようか?」
- 「実行するために、何かサポートが必要かな?」
ここで目指すのは、話し合って終わるのではなく、具体的な行動を決めることです。
例えば、「おすすめ商品の注文を増やしたい」という話になったなら、「次の営業から、お客様の注文内容に合わせておすすめ商品を一つ提案してみる」といった行動に落とし込みます。
さらに、次の面談や営業後の振り返りで実践結果を確認すれば、経験が次の学びにつながります。
Whatで現状を整理し、Whyで原因を考え、Howで行動を決める。
この流れを意識するだけでも、店長の質問はスタッフの成長を支えるものに変わっていきます。
3. 質問するときに気をつけたい3つのポイント
質問の型を覚えても、使い方によっては相手の考えを引き出せないことがあります。特に意識したいのが、次の3つです。
① 自分の答えに誘導しない
質問をするとき、店長の頭の中には、すでに解決策が浮かんでいることがあります。
例えば、スタッフの遅刻が続いているときに、
「もっと早く家を出ればいいんじゃない?」
と聞いたとします。
これは質問というより、店長の考えを伝えている状態です。スタッフは「そうですね」と答えるかもしれませんが、それで本当に問題が解決するとは限りません。
代わりに、次のように聞いてみましょう。
- 「最近、遅刻につながっていることは何かある?」
- 「時間どおりに出勤するために、どんな方法が考えられる?」
- 「その中で、実際にできそうなのはどれかな?」
もちろん、店長の考えを伝えること自体が悪いわけではありません。必要な場面では、経験に基づく助言も役立ちます。
ただし、最初から答えを決めて質問すると、相手が自分で考える機会を奪ってしまいます。
まずは相手の考えを聞く。そのうえで必要に応じて、自分の意見や選択肢を伝える。この順番を意識しましょう。
② 答えが出るまで待つ
質問したあと、相手がすぐに答えられないことがあります。
その沈黙が気まずくなり、店長がつい「こういうことじゃない?」と答えを補ってしまうことはないでしょうか。
しかし、考えている時間も、相手にとっては大切な時間です。
普段から自分で考える機会が少ないスタッフほど、質問されてもすぐには言葉にできないことがあります。
そんなときは、すぐに答えを教えず、少し待ってみましょう。
必要であれば、「すぐに答えが出なくても大丈夫。一緒に整理してみよう」と伝えるのも有効です。
質問は、投げかけた瞬間に効果が出るものではありません。相手が考えをまとめる時間も含めて、質問のプロセスだと考えてみてください。
③ 質問だけで解決しようとしない
質問する力を身につけようとすると、何でも質問で解決しようとしてしまうことがあります。
しかし、飲食店の現場では、知識や経験が不足しているために答えられないケースもあります。
例えば、新人スタッフに衛生管理の正しい手順を質問しても、そもそも知識がなければ適切な答えは出てきません。
その場合は、まず正しい知識や手順を教えることが必要です。
教えたあとに、「なぜ、この手順が必要だと思う?」「忙しい時間帯でも守るには、どんな工夫ができる?」と質問すれば、知識を理解し、実践する力につなげられます。
教えるべきことは教え、考えてもらいたいことは質問する。
この使い分けが、店長の育成力を高めるポイントです。
4. 飲食店の現場で質問力を活用する具体例
それでは、実際の店舗運営では、どのように質問を使えばよいのでしょうか。
ここでは、よくある場面を3つ紹介します。
事例1:売上目標を達成できなかったとき
店長:「今月の売上は目標に届かなかったね。どんなことがあった?」
スタッフ:「平日の来店が少なかったです」
店長:「平日の来店が少なかったのは、なぜだと思う?」
スタッフ:「新規のお客様が少なかった気がします」
店長:「新規のお客様を増やすために、できそうなことはある?」
スタッフ:「近隣の会社にランチメニューを知ってもらうのはどうでしょうか」
店長:「いいね。まず、どんな方法なら実行できそう?」
この会話では、店長が最初から販促施策を指示していません。スタッフ自身が現状を振り返り、原因を考え、対策を提案しています。
もちろん、スタッフの考えが必ず正しいとは限りません。必要に応じてデータを確認し、実行する施策を一緒に検討しましょう。
大切なのは、考えるプロセスを経験してもらうことです。
事例2:新人スタッフのミスが続いているとき
新人スタッフが注文を間違えることが続いているとします。
店長:「最近、注文の間違いが何度かあったね。自分では、どんなときに間違いやすいと感じる?」
スタッフ:「忙しくなると、注文を覚えきれなくなります」
店長:「忙しいときに、特に難しいと感じるのはどんなところ?」
スタッフ:「注文を聞きながら、ほかのお客様にも対応しようとして混乱します」
店長:「そうなんだね。間違いを減らすために、どんな方法が考えられるかな?」
スタッフ:「注文を復唱して、端末に入力してから次の対応に移るようにしたいです」
店長:「いいね。次の営業で試してみよう。やってみて、難しいところがあったら一緒に考えよう」
この会話では、ミスを注意するだけでなく、本人が困っている状況を把握しています。
その結果、本人に合った対策を考え、実践につなげることができています。
ただし、ミスの原因が教育不足や業務手順の問題にある場合は、個人の工夫だけで解決しようとせず、仕組みも見直す必要があります。
事例3:スタッフの主体性が感じられないとき
店長:「最近、指示を待っていることが多いように感じるんだけど、自分ではどう思う?」
スタッフ:「何をすればいいのか、よく分からないことがあります」
店長:「どんな場面で、そう感じることが多い?」
スタッフ:「お客様が少ない時間帯に、何を優先すればいいか迷います」
店長:「その時間帯に、店舗としてやっておきたいことは何だと思う?」
スタッフ:「清掃や備品の補充、仕込みの確認だと思います」
店長:「その中で、まず自分で判断して進められそうなことはあるかな?」
スタッフ:「清掃と備品の補充なら、自分で確認して進められそうです」
店長:「じゃあ、まずそこから任せてみよう。判断に迷ったときは相談してね」
スタッフが指示を待っている理由は、意欲がないからとは限りません。何をすればよいか分からない、判断してよい範囲が分からない、失敗が怖いなど、さまざまな背景が考えられます。
質問を通じて背景を理解すれば、単に「もっと主体的に動いて」と伝えるよりも、具体的な改善につなげやすくなります。
5. 質問する力は、すぐには身につかない
ここまで紹介した質問の方法は、理解するだけなら難しくないかもしれません。
しかし、実際の現場で自然に使えるようになるには、練習が必要です。
店長は忙しく、スタッフの問題を早く解決しなければならない場面も多くあります。相手の話を聞き、答えが出るまで待ち、さらに考えを深める質問をするのは、簡単なことではありません。
また、質問の仕方が適切でも、スタッフとの信頼関係が十分でなければ、本音を話してもらえない場合があります。
そのため、質問する力は、一度学んだら終わりというスキルではありません。日々のコミュニケーションの中で、少しずつ磨き続けることが大切です。
まずは1日1回、質問を変えてみる
最初から完璧な質問を目指す必要はありません。
例えば、次のような小さな取り組みから始めてみましょう。
- 指示を出す前に一度聞く:「今、何を優先したらいいと思う?」
- 失敗を責める前に聞く:「何が難しかった?」
- アドバイスをする前に聞く:「自分では、どうしたらよいと思う?」
- 話し合いの最後に聞く:「次に、まず何をやってみる?」
1日1回でも、質問を意識して使う機会をつくることが大切です。
そして、質問した結果、相手がどんな反応をしたのか、自分の聞き方はどうだったのかを振り返ってみましょう。
質問した後の振り返りが、成長につながる
質問をしたら、次の3点を振り返ってみてください。
- 相手は自分の考えを話せていたか?
- 自分の考えに誘導していなかったか?
- 話し合いの結果、具体的な行動につながったか?
うまくいかなかったとしても、問題ありません。
「質問が広すぎて、答えにくかったのかもしれない」
「すぐにアドバイスをしてしまった」
「原因を聞くだけで、次の行動まで決められなかった」
こうした気づきが、次の質問を改善する材料になります。
店長自身も、自分のコミュニケーションを振り返り、改善し続けることが大切なのです。
6. スタッフの成長を支える店長を目指そう
店長の仕事は、自分が成果を出すことだけではありません。スタッフが成長し、自分で考えて行動できる環境をつくることも重要な役割です。
そのためには、経営スキルや業務知識だけでなく、相手の考えを引き出すコミュニケーション力が欠かせません。
今回紹介した「質問する力」は、スタッフの気づきを促し、主体的な行動を後押しするためのスキルです。
Whatで現状を整理し、Whyで原因や背景を考え、Howで次の行動を決める。そして、相手の答えを誘導せず、考える時間を大切にする。
こうした関わりを積み重ねることで、スタッフが自分で考え、行動する機会を増やしていけます。
ただし、質問の技術だけですべてが解決するわけではありません。スタッフが安心して話せる信頼関係や、判断できる範囲が明確な仕組みも必要です。
質問する力は、すぐに身につくものではありません。焦らず、日々の現場で実践しながら磨き続けていきましょう。
店長が答えを出す店舗から、スタッフ自身が考えて答えを見つけられる店舗へ。
その変化が、店長自身の負担を減らし、スタッフの成長と店舗の成果につながっていきます。
店長の成長を、組織全体の成長につなげるために
店長の育成では、経営スキルを高めるだけでなく、スタッフとの信頼関係を築き、主体的な行動を引き出すコミュニケーション力を育てることも大切です。
ミルラボの「店長成長コーチング」では、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの側面から、店長が自ら考え、行動し、店舗の成果につなげられるよう支援しています。
「店長が指示待ちのスタッフを育ててしまっている」「店長自身が問題を抱え込み、スタッフが育たない」といったお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
店長一人の頑張りに頼るのではなく、スタッフとともに成長できる店舗づくりを考えていきましょう。


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