「店長になったけれど、経営者への報告が苦手……」
「上司に何を報告すればいいのか分からない」
「報告するとき、いつも緊張してしまう」
「自分なりに頑張っているのに、上司から『で、結果は?』と言われてしまう」
飲食店の店長には、店舗を運営するだけでなく、経営者やエリアマネジャー、上司に店舗の状況を伝える仕事があります。
ところが、店舗の現場に一番近い店長と、会社全体を見る経営者では、見えているものが違います。
店長は、
「昨日は忙しかった」
「スタッフが頑張ってくれた」
「最近、お客様が増えた気がする」
と感じているかもしれません。
一方、経営者が知りたいのは、
「売上はいくらなのか?」
「利益はどうなっているのか?」
「なぜその数字になったのか?」
「今後どうするのか?」
ということです。
この違いを理解すると、報告の仕方は大きく変わります。
店長成長コーチングの「経営者・上司への報告」では、報告を単なる連絡業務ではなく、店舗と会社をつなぐための経営スキルとして捉えます。
ポイントは大きく3つ。
数字で話すこと。会社や上司の目標を理解すること。そして、上司を必要以上に怖がらないこと。
この3つができるようになると、店長と上司のコミュニケーションはかなり変わります。
「頑張りました」だけでは、経営者には店舗の状況が見えない
まず考えてみましょう。
店長から経営者に、
「今月はスタッフみんなで頑張りました」
という報告があったとします。
もちろん、頑張ったこと自体は悪いことではありません。
しかし、経営者からすると、
「それで、店舗の業績はどうなったの?」
という疑問が残ります。
例えば、
「今月は忙しかったです」
よりも、
「今月の売上は500万円で、目標450万円に対して111%でした」
の方が、状況がはっきりします。
さらに、
「客数が前年比105%、客単価が前年比106%となったことが売上増加の主な要因です」
まで伝えれば、何が起きているのかが分かります。
そして、
「来月は客単価をさらに3%上げるため、追加注文の提案を強化します」
まで言えれば、店長が次に何をしようとしているのかも分かります。
つまり、良い報告とは、
「何が起きたか」だけではなく、「数字でどうなり、なぜそうなり、次に何をするのか」まで伝えること
なのです。
報告・相談は「数字」で話す
店長にとって数字は、経営者に評価されるためだけのものではありません。
店舗の状況を正確に共有するための共通言語
です。
例えば、
「最近、リピーターが増えています」
という報告があったとします。
これを数字にすると、
「先月のリピーター来店数は320人、今月は360人で、約12%増えています」
となります。
「人件費が高いです」
なら、
「今月の人件費率は32%で、目標の28%を4ポイント上回っています」
となります。
「客単価が下がっています」
なら、
「平均客単価が3,200円から3,050円に下がっています」
となります。
数字にすると、話が具体的になります。
さらに重要なのは、数字を使うことで、
「何を改善すればいいのか」
を考えやすくなることです。
店長が数字で報告すると、相談の質も変わる
数字で話すメリットは、報告だけではありません。
相談するときにも大きな違いが生まれます。
例えば、
「最近、スタッフが足りなくて困っています。どうしましょう?」
という相談。
これでは、上司も判断しにくいかもしれません。
そこで、
「現在の人員は必要人数に対して週20時間不足しています。特に金曜日と土曜日の18時以降に不足しています。採用活動をしていますが、充足まで1か月程度かかる見込みです」
と伝えます。
さらに、
「そこで、当面は営業時間を一部調整する案と、他店舗から応援をもらう案を考えています。私は後者をおすすめします」
と伝える。
ここまで来ると、相談の内容が一気に具体的になります。
上司も、
「では、他店舗から応援を出そう」
「採用予算を増やそう」
「営業時間を変更しよう」
など、判断しやすくなります。
つまり、
数字は「報告するため」だけではなく、「会社から必要な支援を引き出すため」にも使える
のです。
店長が見るべき数字は「会社の目標」とつながっている
もう一つ重要なのが、
会社が何を目指しているのかを理解すること
です。
店長が店舗の数字だけを見ていても、会社の方向とずれてしまえば、良い報告や相談にはなりません。
例えば、会社が、
「今年は利益率を改善する」
ことを重要目標にしているとします。
それなのに店長が、
「売上を増やすために、とにかく広告費を増やしましょう」
と提案したらどうでしょうか。
売上は増えるかもしれません。
しかし、広告費を大きく増やしたことで利益がほとんど残らないのであれば、会社の目標とはずれてしまいます。
逆に、
「売上は前年比103%ですが、利益率が2ポイント改善しています。広告費を増やさず、既存客のリピート施策を強化した結果です」
という報告なら、会社の目標とのつながりが見えます。
だから店長には、
「自分の店舗の目標」だけではなく、「会社・経営者・上司が何を目指しているのか」
を理解することが求められます。
「会社の目標」を「店舗の行動」に翻訳する
経営者が、
「利益を上げたい」
と言っただけでは、現場は動きません。
店長の役割は、その目標を店舗の具体的な行動につなげることです。
例えば、
会社の目標
利益率を改善する
↓
店舗で見る数字
原価率、人件費率、平均客単価など
↓
店舗の課題
特定商品の原価率が高い
↓
店長の行動
商品構成を見直す、ロスを減らす
↓
結果
利益率を改善する
という流れです。
こうして考えると、店長は単に「会社から言われたことをやる人」ではなくなります。
会社の目標を、現場で実現する人
になります。
これこそ、経営者視点を持った店長の姿です。
上司と話すときに「萎縮」する必要はない
ここは、店長成長コーチングの中でも大切にしたい考え方です。
店長の中には、
「社長に話しかけるのは緊張する」
「上司に意見を言うのは怖い」
という人もいます。
もちろん、立場の違いはあります。
経営者には会社全体に対する責任があります。
エリアマネジャーには複数店舗を管理する役割があります。
店長には店舗を管理する役割があります。
しかし、
立場が違うことと、人として上下があることは別です。
上司は、店長より偉い人というより、
会社の中で役割が違う人
と考えることができます。
店長が店舗について一番詳しいこともあります。
現場でしか分からない問題もあります。
スタッフの変化に最初に気づくのも店長かもしれません。
だからこそ、店長には現場の情報を上司に伝える役割があります。
「萎縮」も「反発」も必要ない
上司との関係で避けたいのは、両極端になることです。
一つは、
萎縮すること。
「社長が言ったから、とにかくやります」
「自分の意見なんて言えません」
という状態です。
もう一つは、
反発すること。
「現場のことを知らないから分かっていない」
「本部はいつも無理なことばかり言う」
という状態です。
どちらも、会社と店舗の間に必要なコミュニケーションが生まれません。
目指したいのは、その中間です。
「会社の目標は理解する。そのうえで、現場から事実と意見を伝える」
これが店長の役割です。
例えば、
「会社として売上を伸ばしたいという方針は理解しています。ただ、現在の人員状況では営業時間を延ばすと人件費率が悪化する可能性があります。私は営業時間を延ばすより、現在の時間帯の客単価を上げる方が効果的だと考えています」
という伝え方です。
反発ではありません。
かといって、言われたことをそのまま受け入れているわけでもありません。
経営者と同じ目標を見ながら、自分の役割から意見を出している
のです。
良い報告は「事実→原因→対策→相談」で考える
報告の型を一つ持っておくと、店長はかなり話しやすくなります。
例えば、
①事実
「今月の売上は500万円で、目標に対して95%でした」
②原因
「客数が目標より8%少なかったことが主な要因です」
③対策
「来月は既存客の再来店を増やすため、来店後の案内を変更します」
④相談
「そのため、店内POPの制作費として3万円の予算をお願いしたいです」
この形なら、経営者も判断しやすくなります。
単に、
「売上が悪かったです。どうしましょう?」
ではなく、
「自分はここまで考えました。ここについて判断・支援をお願いします」
という相談になります。
これは店長自身の成長にもつながります。
「報告するために数字を見る」のではない
ここで注意したいのが、
「経営者に報告するために数字を確認する」
という考え方です。
本来は逆です。
店舗を良くするために数字を見る。その結果を上司にも共有する。
という順番です。
数字を見て、
「何が起きている?」
「なぜ起きている?」
「何を変えればいい?」
を考える。
そして、その内容を会社と共有する。
こうすれば、報告が単なる作業ではなくなります。
店長自身が、
「数字を見る→考える→行動する→結果を見る→報告・相談する」
というサイクルを回せるようになります。
経営者が知りたいのは「問題がない店舗」ではない
店長の中には、
「悪い数字を報告したくない」
という気持ちになる人もいます。
しかし、経営者からすると、
「悪い数字が出ていること」
よりも、
「悪い数字が出ているのに、何が起きているのか分からないこと」
の方が問題です。
例えば、
「売上が前年比90%です」
という報告だけでは不十分ですが、
「前年比90%です。客数が15%減少しています。一方で客単価は8%上がっています。現在、平日の新規客が減っていると考えており、来週から○○を試します」
なら、状況が分かります。
問題があること自体は、必ずしも悪いことではありません。
問題を発見し、
原因を考え、
対策を実行し、
必要なら上司に相談する。
これができる店長の方が、経営者にとって頼りになる存在です。
事例:上司への報告を変えたら、相談が変わった店長
ある店長は、上司への報告が苦手でした。
毎月の報告でも、
「今月は忙しかったです」
「スタッフは頑張ってくれました」
「来月も頑張ります」
という内容になりがちでした。
上司からすると、
「それで、店舗はどうなっているの?」
という状態です。
そこで、報告内容を変えることにしました。
まず、売上、客数、客単価などの数字を確認する。
次に、目標との差を確認する。
そして、
「なぜ差が出たのか?」
を考える。
最後に、
「次に何をするのか?」
を決める。
最初の報告では、
「売上は目標比94%でした。客数が目標比90%だったことが主な要因です。特に平日の18時以前が弱くなっています。来月は平日の早い時間帯の来店を増やす施策を試します」
と伝えました。
上司からの反応も変わりました。
「じゃあ、その施策をやってみよう」
「必要なものはある?」
「結果を来月教えて」
という会話になったのです。
店長自身も、
「怒られるために報告する」
のではなく、
「店舗を良くするために上司と一緒に考える」
という感覚を持てるようになりました。
これが、報告の大きな変化です。
店長は「現場」と「経営」をつなぐ存在
店長は、スタッフに一番近い立場です。
同時に、会社の方針を現場に落とし込む立場でもあります。
だからこそ、
現場の情報を経営に伝えること
と、
経営の考えを現場に伝えること
の両方が必要です。
経営者から見ると、
「現場のことは店長に任せたい」
という気持ちがあります。
一方で店長から見ると、
「会社が何を目指しているのか分からない」
と動きにくくなります。
ここをつなぐのが店長です。
報告や相談は、そのための重要なコミュニケーションになります。
最後に
店長の報告・相談で大切なのは、話し方のテクニックだけではありません。
まず、
数字で話すこと。
そして、
会社・経営者・上司が何を目指しているのかを理解すること。
さらに、
上司を必要以上に怖がらず、かといって反発するのでもなく、立場の違う対等な仕事仲間として話すこと。
この3つが大切です。
店長は、会社の中で経営者と同じ仕事をするわけではありません。
しかし、店舗を任されている以上、
「この店舗をどう良くするか?」
を考えることはできます。
そして、その考えを数字と事実を使って上司に伝え、必要な支援を求める。
これは、単なる報告ではありません。
店舗を経営するための仕事の一部です。
もし今、上司への報告で、
「何を言えばいいか分からない」
「いつも怒られるのではないかと緊張する」
「現場の状況をうまく伝えられない」
と感じているなら、まず次の報告から一つだけ変えてみてください。
「頑張りました」ではなく、「数字はどうだったか?」から話す。
そして、
「なぜそうなったのか?」
「次に何をするのか?」
まで考えてみる。
それだけでも、上司との会話は変わり始めます。
店長成長コーチングでは、数字の見方だけでなく、実際の店舗の課題を題材にしながら、**「何を報告し、何を相談し、どんな支援を求めるのか」**まで一緒に整理していきます。
経営者に萎縮する店長でも、会社に反発する店長でもない。
会社の目標を理解し、現場の事実を伝え、自分の考えを持って店舗を動かせる店長。
そんな店長を増やすことが、経営者と現場の両方にとって、強い店舗づくりにつながっていきます。


コメント