「もっと経営者視点を持ってほしい。」
飲食店を経営していると、一度は店長に対してそう感じたことがあるのではないでしょうか。
売上は気にしているのに利益には関心がない。人件費や原価率を意識せずシフトや発注を決めてしまう。トラブルが起きても「本部が決めてください」「会社の判断です」と、自分ごととして捉えられない。
こうした姿を見ると、「当事者意識が足りない」と考えてしまいがちです。
しかし、本当にそうでしょうか。
私は多くの店長育成に携わる中で、「経営者視点がない店長」の多くは、意欲が低いのではなく経営を学ぶ機会がなかっただけだと感じています。
さらに言えば、「利益責任を与えずに利益責任だけを求める」「教えずに任せる」という状態も少なくありません。
今回は、店長が経営者視点を持てない本当の原因と、利益を生み出せる店長へ育てる方法について考えていきます。
「店長が経営者視点を持てない」が引き起こす3つの問題
① 売上だけを追い、利益が残らない
売上は伸びているのに利益が増えない。
これは「店長 経営者視点」が不足している店舗でよく見られます。
例えば、
- 値引きを簡単に行う
- 人件費を気にせずシフトを組む
- 原価率を考えず発注する
売上は増えても利益は減ってしまいます。
経営者が見ているのは売上ではなく「利益」です。
利益責任を理解できていない店長は、良かれと思って行動しても会社に利益を残せません。
② 判断基準が「現場」だけになる
店長は現場責任者です。
しかし、現場しか見えていないと、
「スタッフがかわいそうだから人を増やそう」
「忙しいから値引きをしよう」
という短期的な判断が増えます。
経営者視点では、
- 利益は残るか
- 将来につながるか
- 他店舗にも展開できるか
という視点が必要です。
現場最適と会社全体最適は必ずしも一致しません。
③ 多店舗展開できる店長が育たない
多店舗展開では、現場作業が上手なだけでは不十分です。
必要なのは、
- 数字を見る力
- 人を育てる力
- 利益を作る力
です。
経営者視点を持った店長が増えなければ、多店舗展開は難しくなります。
理想は「利益を考えながら現場を動かせる店長」
理想の店長とは、経営者の代わりになる人ではありません。
会社の理念やビジョンを理解し、
「この判断は利益につながるか」
「将来の店舗づくりにつながるか」
まで考えて行動できる人です。
売上・利益・人材育成・顧客満足をバランスよく考えられる状態が理想です。
そのような店長が育つことで、
- 飲食店離職率の低下
- 部下が育たない問題の改善
- 多店舗展開の実現
にもつながっていきます。
店長が経営者視点を持てない会社側の課題3つ
① 利益責任を理解させる教育がない
一番多い原因です。
「利益を出して」
と言われても、
利益とは何か
利益率とは何か
人件費率とは何か
を教わっていない店長は少なくありません。
数字を知らなければ経営判断はできません。
② スキル育成より精神論になっている
「もっと当事者意識を持て」
「経営者目線で考えろ」
と言われても、具体的な方法が分からなければ成長できません。
店長教育方法として必要なのは、
- 数字の読み方
- 問題分析
- 改善方法
- 利益構造
というスキル教育です。
精神論だけでは人は育ちません。
③ 丸投げになっている
「この店は任せたから」
と言って放置してしまうケースもあります。
任せることと丸投げは違います。
任せるなら、
- 判断基準
- 優先順位
- 数字の見方
- 定期的な振り返り
までセットで支援する必要があります。
店長自身が乗り越えるべき3つの課題
① 利益責任を自分ごとにする
利益は会社だけのものではありません。
利益があるから、
- 人を採用できる
- 給与を上げられる
- 新しい設備を導入できる
- 店舗を増やせる
つまり、利益は未来への投資です。
この視点を持つことが経営者視点の第一歩です。
② 数字から逃げない
「数字が苦手だから」
では成長できません。
最初は、
- 売上
- 人件費率
- 原価率
- 客単価
だけでも十分です。
数字は経営者の共通言語です。
毎日見ることで必ず慣れていきます。
③ 自分の仕事を現場だけに限定しない
店長とは、
現場責任者ではなく、
店舗経営者です。
だからこそ、
- スタッフ育成
- 利益改善
- 採用
- リピーターづくり
まで視野に入れる必要があります。
経営者視点を育てるための5つの実践方法
① 利益の仕組みを学ぶ
まずは利益構造を理解しましょう。
売上だけでなく、
- 原価
- 人件費
- 固定費
- 営業利益
まで理解できると判断力が大きく変わります。
② 数字会議を改善会議にする
数字を責めるためではなく、
「なぜそうなったのか」
を考える時間にします。
数字は結果。
改善策が目的です。
③ 店舗ビジョンを共有する
利益だけでは人は動きません。
店舗ビジョン例として、
「地域で一番愛される店」
「スタッフが成長できる店」
など未来像を共有すると、数字にも意味が生まれます。
④ 小さな経営判断を経験させる
例えば、
- 販促企画
- 人件費改善
- 発注改善
などを店長自身に考えてもらいます。
経験が経営者視点を育てます。
⑤ 振り返りを習慣化する
毎週、
「利益はどうだったか」
「原因は何か」
「来週どう改善するか」
を一緒に考えるだけでも成長速度は大きく変わります。
【事例】「店長だから現場だけ見ればいい」と考えていた店長が利益改善を実現
ある飲食店では、現場での評価が高い店長がいました。
しかし、利益率は全店舗で最下位でした。
理由を聞くと、
「売上が上がればいいと思っていました。」
とのことでした。
そこで、
毎週30分、
- 人件費率
- 原価率
- 客単価
- 営業利益
を一緒に確認し、
「この数字は何を意味しているのか」
を考える時間を設けました。
さらに、改善策を自分で考え、翌週に結果を振り返るサイクルを繰り返しました。
半年後には利益率が改善し、数字を見ることを苦痛ではなく「店舗を良くするためのヒント」と捉えられるようになりました。
「経営者視点」とは、生まれ持った資質ではなく、学びと実践によって身につく力なのです。
最後に
「店長に経営者視点がない。」
そう感じたとき、本人の意識だけを問題にしてしまうことがあります。
しかし実際には、
- 利益責任の理解不足
- 経営スキルの育成不足
- 任せるではなく丸投げになっている
といった組織側の課題が背景にあるケースも少なくありません。
店長は最初から経営者ではありません。
だからこそ、「利益とは何か」「数字をどう読み、どう判断するか」を学び、小さな経営経験を積み重ねることで、少しずつ経営者視点を身につけていきます。
本当に目指すべきなのは、「経営者のように考えろ」と求めることではなく、「経営者のように考えられるよう育てる仕組み」をつくることです。
それが、店長が育ち、多店舗展開を支え、利益を生み続ける組織への第一歩になるでしょう。


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