「お客様は満足しているはずなのに、紹介がほとんど発生しない」
「常連客はいるけれど、新しいお客様を連れてきてくれない」
「口コミは多少あるものの、知人への紹介にはつながらない」
飲食店を経営していると、こんな悩みを感じることがあります。
紹介は、広告費をかけずに新しいお客様を連れてきてくれる、とても魅力的な集客方法です。
しかも、既存のお客様からの紹介であれば、紹介された側も「○○さんがおすすめしていた店」という安心感を持って来店できます。
ところが、「紹介してください」とお願いするだけでは、なかなか紹介は発生しません。
ここで考えたいのが、**「紹介してもらう方法」ではなく「誰かに教えたくなる理由があるか」**ということです。
人は、普通に満足しただけでは、わざわざ誰かに伝えようとはしません。
「これは人に教えたい」
「今度、一緒に連れてきたい」
「○○さんにも体験してほしい」
と思うような何かがあって、初めて紹介という行動につながります。
そして、もう一つ重要なのが紹介導線です。
どれだけ「紹介したい」と思っても、誰に、どのように伝えればいいのか分からなければ、行動には移りません。
今回は、飲食店で紹介が発生しない原因を、感動の仕掛けと紹介導線という2つの視点から考えていきます。
紹介が生まれないことで起こる3つの弊害
1.既存客の価値を十分に活かせない
一度来店してくれたお客様は、単なる「1人の売上」ではありません。
そのお客様が、
「この店、良かったよ」
「今度一緒に行こうよ」
と誰かに伝えてくれれば、新しいお客様を連れてきてくれる可能性があります。
つまり、既存客には新規客を生み出す力があります。
しかし、紹介の仕組みがなければ、その力を十分に活かせません。
2.新規集客を広告に頼り続ける
紹介が発生しない店舗では、
- SNS
- 広告
- クーポン
- グルメサイト
- キャンペーン
など、新規客を獲得するための施策を繰り返すことになります。
もちろん、これらは重要です。
しかし、既存のお客様が新しいお客様を連れてきてくれる状態ができれば、集客の選択肢が一つ増えます。
3.「良い店なのに知られていない」という状態になる
料理もおいしい。
接客も悪くない。
店内の雰囲気も良い。
それなのに、新規客が増えない。
こうした店舗では、「知られていない」ことそのものが問題になっている可能性があります。
どれだけ良い商品・サービスを提供しても、知られていなければ選ばれることはありません。
紹介とは、既存のお客様の力を借りて、店舗の魅力を新しい人へ届ける活動でもあるのです。
理想は「満足」から「誰かに教えたい」へ
紹介を増やしたいなら、まず考えたいのは、
「お客様は、誰かにこの店のことを話したくなるほどの体験をしているか?」
ということです。
例えば、
「料理がおいしかった」
「店員さんが感じ良かった」
「価格が適正だった」
というのは大切です。
しかし、これらはお客様にとって「期待通り」の体験かもしれません。
期待通りなら満足はします。
でも、わざわざ人に話すとは限りません。
一方で、
「こんなサービスをしてくれた」
「店員さんがこんなことを覚えていてくれた」
「こんな面白い商品があった」
「こんなサプライズがあった」
という期待を超える体験があれば、話したくなる可能性が高まります。
紹介を生み出すには、
満足させることだけでなく、記憶に残ること
が重要です。
紹介が発生しない会社組織側の3つの課題
1.紹介を「お願いすれば起こる」と考えている
「お友達にも紹介してください」
「口コミをお願いします」
と伝えるだけでは、紹介はなかなか増えません。
なぜなら、
「なぜ紹介したいのか?」
が設計されていないからです。
紹介を増やす前に、
「誰に紹介したくなるのか?」
「どんな体験なら話したくなるのか?」
を考える必要があります。
2.顧客体験の設計ができていない
紹介につながるのは、料理だけとは限りません。
来店前から、
- 店を知る
- 予約する
- 来店する
- 注文する
- 食事する
- 会計する
- 退店する
- 再来店する
という一連の顧客体験があります。
このどこかに、
「人に話したくなるポイント」
をつくることができます。
例えば、商品そのものではなく、
「注文時のちょっとした演出」
「スタッフとの会話」
「退店時の一言」
などが記憶に残る場合もあります。
3.紹介導線が存在しない
紹介したいと思っても、
「どうやって紹介すればいいの?」
となれば、そこで終わります。
例えば、
「この店を友人に教えたい」
と思ったとき、店舗のSNSや公式LINE、紹介カードなど、簡単に情報を渡せるものがあれば行動しやすくなります。
つまり、
感動の仕掛け × 紹介導線
の両方が必要なのです。
店長自身が抱えやすい3つの課題
1.目の前のお客様を満足させることで精一杯
店長は日々、
「今日の売上」
「人員配置」
「クレーム」
「仕込み」
「スタッフ教育」
など、さまざまな問題に対応しています。
そのため、
「このお客様が、誰かを連れてきてくれるには?」
という一段先の視点を持つ余裕がなくなることがあります。
しかし、店長とは単に今日の営業を成立させる人ではありません。
明日の売上をつくる仕組みを考えることも、店長の重要な仕事です。
2.「良い接客」の基準が曖昧
「お客様に喜んでもらいましょう」
だけでは、スタッフは具体的に行動できません。
例えば、
「お客様が前回話していたことを覚えている」
「おすすめした商品を次回来店時に覚えている」
「誕生日や記念日のお客様に一言添える」
など、行動レベルまで落とすことが必要です。
飲食人材育成では、精神論だけではなく、再現できる行動にすることが重要です。
3.紹介数だけを評価してしまう
「今月は紹介が5件だった」
という結果だけを見てしまうと、スタッフは紹介を増やすことばかりを意識します。
すると、
「友達を連れてきてください」
と無理にお願いしたり、紹介特典を乱発したりする可能性があります。
重要なのは、
紹介という結果の前に、紹介につながる行動ができているか
を見ることです。
紹介を増やすための5つのステップ
STEP1:誰に紹介してほしいのかを決める
まず「紹介してください」ではなく、
「どんな人に来てもらいたいのか?」
を明確にします。
例えば、
「30代の子育て世代」
「接待で使える店を探している人」
「記念日のお店を探している人」
などです。
紹介してほしい相手が具体的になるほど、既存客も、
「あの人に教えてあげよう」
とイメージしやすくなります。
STEP2:お客様が人に話したくなるポイントをつくる
次に、感動の仕掛けを考えます。
例えば、
- 驚きのある商品
- 思わず写真を撮りたくなる盛り付け
- スタッフとの印象的な会話
- お客様の好みを覚えておく
- 記念日にちょっとした演出をする
- 他店にはないサービス
などです。
ここで重要なのは、高額な設備や大きなイベントが必須ではないということです。
「そこまでしてくれるの?」
という小さな感動でも十分です。
STEP3:店舗の独自価値を言語化する
「この店を人に紹介するとしたら、何と言いますか?」
この質問をお客様やスタッフにしてみるのも有効です。
「料理がおいしい」
だけでは、競合店との差別化が難しいかもしれません。
一方、
「○○ならこの店」
という独自価値が明確なら、紹介するときの言葉も生まれます。
これは、店長が経営者視点を持つうえでも重要です。
STEP4:紹介しやすい導線をつくる
感動したお客様が、
「友人にも教えたい」
と思った瞬間に行動できるようにします。
例えば、
- LINEで簡単に店舗情報を送れる
- SNS投稿をしやすくする
- 紹介カードを用意する
- 紹介専用ページをつくる
- 店舗の特徴が一言で分かる画像を用意する
などがあります。
ポイントは、紹介する人の手間を減らすことです。
STEP5:紹介につながった行動を測定する
「紹介が増えた気がする」で終わらせず、
- 紹介人数
- 紹介経由の来店数
- 紹介客のリピート率
- 紹介につながった施策
などを確認します。
そして、
「何をすると紹介が増えるのか?」
を検証します。
これができると、紹介が「偶然起きるもの」から「改善できるもの」に変わります。
「紹介してください」をやめたら、紹介が増えた店舗
ある飲食店では、以前からスタッフに、
「お客様に紹介をお願いしよう」
と伝えていました。
しかし、紹介数はほとんど増えません。
そこで、店長は紹介をお願いする前に、
「この店を人に紹介するとしたら、何を紹介する?」
とスタッフに質問しました。
すると、
「料理がおいしい」
「駅から近い」
「雰囲気が良い」
など、当たり前の回答が中心でした。
そこで、実際のお客様にも、
「この店のどんなところが好きですか?」
と聞いてみました。
すると、
「店員さんが顔を覚えてくれている」
「子どものことを覚えてくれている」
「忙しくてもちゃんと声をかけてくれる」
など、スタッフ自身が気づいていなかった価値が出てきました。
そこで、その価値を意識してさらに磨くことにしました。
さらに、
「初めて来る方には、こういうところを楽しんでもらおう」
とスタッフ間で共有。
紹介してくれたお客様には、
「○○さんから紹介されて来てくれたんですね。ありがとうございます」
と伝えるようにしました。
すると、紹介されたお客様だけでなく、紹介した側のお客様にも、
「紹介して良かった」
という体験が生まれました。
ここで重要なのは、紹介を「お願いする営業活動」として扱わなかったことです。
「誰かを連れてきたくなる店をつくる」ことから始めたのです。
最後に
紹介が発生しないとき、
「もっと紹介をお願いしよう」
と考えるのは簡単です。
しかし、その前に考えてみてください。
「この店を、誰かに教えたくなる理由は何だろう?」
そして、
「教えたいと思った人が、簡単に紹介できる導線はあるだろうか?」
紹介は、
感動の仕掛け × 紹介導線
によって生まれやすくなります。
「料理がおいしい」「接客が良い」という基本的な品質はもちろん重要です。
そのうえで、
「この店を知っていることを誰かに教えたい」
「今度あの人を連れてきたい」
と思ってもらえる体験を設計する。
そして、その気持ちが生まれた瞬間に紹介できる仕組みを用意する。
これができれば、紹介は「スタッフが頑張ってお願いするもの」から、お客様自身が自然に起こしてくれるものへ変わっていきます。
店長が経営者視点を持つということは、今日の営業を回すだけではありません。
「お客様が次のお客様を連れてきてくれる仕組み」をつくることも、店舗を成長させる店長の重要な仕事なのです。



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