「スタッフが指示どおりに動いてくれない」
「上司が現場のことをわかっていない」
「忙しいのだから、これ以上はできない」
店長として仕事をしていると、思いどおりにいかない場面に何度も直面します。自分なりに工夫しているのに成果が出なかったり、周囲の協力が得られなかったりすると、不満や言い訳が出てくることもあるでしょう。
そんなとき、自分の考え方を振り返ることはできていますか?
店長として成長するために大切なのは、いつも前向きでいることでも、何でも自分の責任として背負い込むことでもありません。自分の考え方や態度に気づき、より良い結果につながる行動を選ぶことです。
たとえば、「スタッフが動いてくれないから仕方ない」と考えたとき、「では、どうすればスタッフが動きやすくなるだろう?」と問い直してみる。
この小さな切り替えが、主体性を発揮する第一歩になります。
この記事では、店長に必要な当事者意識とは何か、非難・言い訳・現実逃避に気づいたときにどう考え直せばよいのか、そして相手の立場を理解するために何を意識すればよいのかを解説します。
1. 主体性とは、自分にできることを考え、行動すること
主体性とは、指示を待たずに自分から動くことだけではありません。
目の前の状況を自分に関係のある問題として捉え、より良い結果を生み出すために、自分にできることを考えて行動する姿勢です。
その土台になるのが「当事者意識」です。
たとえば、店舗の売上が目標に届かなかったとします。
そのとき、次のような考えが浮かぶかもしれません。
- 「天候が悪かったから、売上が下がったのは仕方ない」
- 「競合店がキャンペーンを始めたせいだ」
- 「スタッフがもっと頑張ってくれれば、結果は違ったはずだ」
これらは、実際に売上へ影響した要因かもしれません。外部環境やスタッフの働き方を無視する必要はありません。
ただし、原因を挙げるだけでは、次の行動につながりません。
そこで、考え方を少し変えてみます。
「天候が悪かった。では、天候が悪い日でも来店していただくために、何ができるだろう?」
「競合店がキャンペーンを始めた。では、自店を選んでいただくために、どんな価値を伝えられるだろう?」
「スタッフの動きに課題があった。では、スタッフが力を発揮できるように、店長として何を変えられるだろう?」
このように問い直すと、状況を受け止めたうえで、自分が取れる行動にも目を向けられます。
当事者意識を持つことは、すべての原因を自分のせいにすることではありません。問題の解決に向けて、自分にできることを探すことです。
自分だけでは解決できない問題なら、上司に相談したり、会社に改善を提案したりしてもよいのです。
大切なのは、「自分には何もできない」と決めつけず、状況を変えるために何ができるかを考えることです。
2. 非難・言い訳・現実逃避が出てきたら、考え直すチャンス
問題が起きたとき、人は自分を守ろうとすることがあります。
失敗を認めたくない。責任を負うのが怖い。これ以上仕事を増やしたくない。頑張っているのに報われない。
こうした気持ちから、誰かを非難したり、できない理由を並べたり、問題から目をそらしたりすることがあります。
店長として成長するためには、こうした考えを一切なくさなければならないのでしょうか。
そうではありません。
非難・言い訳・現実逃避が出てきたこと自体を理由に、自分を責める必要はありません。大切なのは、その考えに気づいたあと、次にどう考えるかです。
「今、自分は誰かのせいにしているな」
「できない理由ばかり考えているな」
「問題を直視したくないと感じているな」
まずは、そのことに気づくだけで十分です。
そして、少し落ち着いてから、自分に問いかけてみましょう。
「では、どうすれば良いのだろう?」
この問いが、思考を切り替えるきっかけになります。
① 非難:「スタッフが悪い」を「どうすればうまくいく?」に変える
たとえば、スタッフが何度教えても同じミスを繰り返しているとします。
「何度言えばわかるんだ」
「本人にやる気がないから仕方ない」
そんな気持ちになることもあるでしょう。
ここで、自分を責める必要はありません。まずは、スタッフに対して不満を感じていることに気づきます。
そのうえで、考え方を切り替えてみましょう。
「本人が理解できていないのは、どの部分だろう?」
「教え方や説明の順番を変えたら、できるようになるだろうか?」
「本人に改善してほしい行動を、具体的に伝えられているだろうか?」
こう考えることで、スタッフの姿勢だけでなく、自分の伝え方や教育方法にも目を向けられます。
もちろん、本人の努力や行動に改善が必要な場合もあります。その場合も、ただ非難するのではなく、期待する行動を具体的に伝え、改善を支援することが店長の役割です。
② 言い訳:「時間がないからできない」を「どうすれば時間をつくれる?」に変える
店長は日々の業務に追われがちです。
「忙しくてスタッフと面談する時間がない」
「通常業務で手いっぱいで、新しい取り組みまで手が回らない」
こうした状況は、実際にあるでしょう。時間や人員に限りがあることを無視して、何でも実行しようとする必要はありません。
ただ、「できない」という結論だけで終わってしまうと、改善の可能性も閉ざされてしまいます。
そこで、次のように問い直します。
「面談の時間を確保するために、減らせる作業はないだろうか?」
「一度にすべて取り組むのが難しいなら、優先順位をつけられないだろうか?」
「自分が抱えている仕事の中で、スタッフに任せられるものはないだろうか?」
状況によっては、業務量の調整や人員の追加が必要かもしれません。その場合は、必要な理由や具体的な影響を整理し、上司に相談することも大切です。
言い訳をしないことが目的ではありません。制約を認識したうえで、実行できる方法を探すことが目的です。
③ 現実逃避:「考えても仕方ない」を「まず何を確認する?」に変える
売上が思うように伸びない。スタッフの育成が進まない。改善を試しても、なかなか結果が出ない。
問題が続くと、「もう考えても仕方ない」「自分にはどうにもできない」と感じることがあります。
そんなとき、無理に前向きになろうとする必要はありません。
まずは、問題を小さく分けてみましょう。
売上が伸びないなら、来店客数、客単価、リピートなど、どこに課題があるのかを確認します。
スタッフの育成が進まないなら、教え方、練習する時間、本人の理解度、仕事を任せる範囲などを整理します。
そして、「今、自分が確認できることは何か」「最初に試せることは何か」を考えます。
問題を一度に解決しようとせず、最初の一歩を見つけることが大切です。
「~だからできない」を「どうすればできる?」へ
ここまでの3つに共通するのは、問いの向きを変えることです。
「スタッフが育たないから、仕事を任せられない」
「忙しいから、改善できない」
「上司が協力してくれないから、進められない」
こうした考えが浮かんだら、いったん立ち止まってみましょう。
そして、「では、どうすればできるだろう?」と問い直します。
すぐに答えが見つからなくても構いません。問いを変えることで、これまで見えていなかった選択肢が見つかることがあります。
どうしても自分だけでは難しいなら、誰に相談するか、何を協力してもらうかを考えればよいのです。
主体性とは、いつも前向きでいることではありません。後ろ向きな考えが浮かんでも、それに気づき、より良い方向へ考え直す力でもあります。
3. 相手の立場に立つ第一歩は「自分とは違う考えの人がいる」と知ること
主体性を発揮するうえで、もう一つ大切なのが、相手の立場に立って考えることです。
店長は、スタッフや上司、お客様など、さまざまな立場の人と関わりながら仕事を進めます。
しかし、同じ店舗で働いていても、役割や経験、知識、置かれている状況が違えば、物事の見え方も変わります。
たとえば、店長は「スタッフには、言われる前に気づいて動いてほしい」と考えているとします。
一方、スタッフは「勝手に判断して間違えるより、指示されたことを正確に行うほうがよい」と考えているかもしれません。
店長から見ると、スタッフは受け身に見えるでしょう。しかし、スタッフから見ると、指示を待つことが責任ある行動だと思っている可能性があります。
このとき、「なぜ自分の考えがわからないのか」と思うだけでは、相手の行動の背景は見えてきません。
では、どうすればよいのでしょうか。
まずは「自分とは違う考えの人がいる」と認識する
相手の立場に立つと聞くと、「相手の気持ちを理解しなければならない」と難しく考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、相手の気持ちを正確に理解するのは簡単ではありません。自分とは異なる経験をしてきた人の考え方を、すぐに想像できるとは限らないからです。
特に、店長になったばかりの人や、さまざまな価値観の人と働いた経験が少ない人は、まず次のことを意識してみてください。
「自分とは違う考え方をする人がいる」
自分にとって当たり前のことが、相手にとっては当たり前ではないかもしれません。
自分は「仕事なのだから、言われなくても気づいて動くべきだ」と思っていても、相手は「指示されたことを正確に行うのが仕事だ」と考えているかもしれません。
自分は「困ったらすぐに相談してほしい」と思っていても、相手は「自分で解決してから報告すべきだ」と考えているかもしれません。
まずは、考え方が違う可能性を認めること。それが、相手を理解する出発点になります。
相手を理解するために、話を聞く
自分とは違う考え方があるとわかったら、次は相手の話を聞いてみましょう。
たとえば、スタッフが指示を待っているように見えたときは、次のように尋ねてみます。
「この仕事を進めるうえで、迷っていることはある?」
「どこまで自分で判断していいか、わかりにくいところはある?」
「もっと仕事を進めやすくするために、変えたほうがよいことはある?」
大切なのは、質問したあとに、相手の答えを急いで否定しないことです。
自分の考えと違う意見が出てきても、すぐに正しさを判断するのではなく、「なぜそう考えているのだろう?」と関心を持って聞いてみましょう。
相手の話を聞くことは、相手の意見をすべて受け入れることではありません。相手が何を考え、何に困っているのかを知り、そのうえで必要な判断や説明をすることです。
こうしたコミュニケーションを重ねることで、スタッフも自分の考えを伝えやすくなり、問題の原因や改善策を一緒に考えられるようになります。
相手の立場に立つとは、自分の考えを捨てることではありません。自分とは違う考えがあると認識し、相手を理解するために話を聞くことです。
4. 主体性を育てるために、明日からできる3つの習慣
主体性は、一度考え方を学べば身につくものではありません。日々の仕事の中で、自分の思考や行動を振り返ることで、少しずつ育てていくものです。
ここでは、明日から実践できる3つの習慣を紹介します。
① 問題が起きたら、事実と自分の解釈を分ける
たとえば、スタッフが指示した作業を行っていなかったとします。
事実は「指定した時間までに作業が完了していなかった」です。
一方、「やる気がない」「自分を軽く見ている」といった考えは、自分の解釈です。
解釈だけで判断すると、相手を非難することにつながる可能性があります。
まずは何が起きたのかを確認し、なぜそうなったのかを本人に尋ね、次にどうするかを考えます。
事実と解釈を分けるだけでも、感情に流されずに対応しやすくなります。
② 1日1回、「どうすればできる?」と問い直す
営業中や営業終了後に、次の3つを振り返ってみましょう。
- 今日、誰かや環境のせいにしていたことはなかったか?
- その状況を改善するために、自分にできることは何か?
- 明日、一つだけ変えるとしたら何をするか?
自分を責めるための振り返りではありません。自分の思考の癖に気づき、次の行動を選ぶための振り返りです。
最初からすべてを変えようとせず、一つずつ取り組んでみてください。
③ 相手の考えを聞いてから、自分の意見を伝える
スタッフと意見が違ったとき、すぐに自分の考えを伝えたくなることがあるでしょう。
そんなときは、まず相手の話を聞くことを意識してみてください。
「どうしてそう考えたの?」
「その方法だと、どんな良いことがあると思う?」
「何か困っていることはある?」
相手の考えを理解してから、自分の意見や店舗としての方針を伝えます。
相手の意見に同意できない場合でも、理解しようとする姿勢は持てます。
この習慣は、スタッフとの関係を良くするだけでなく、自分では気づかなかった問題や改善策を見つけることにもつながります。
まとめ:主体性は、自分の考えに気づき、次の行動を選ぶこと
店長として働いていれば、誰かを非難したくなることも、できない理由を考えることも、問題から目をそらしたくなることもあります。
そんな自分に気づいたとき、必要以上に責める必要はありません。
大切なのは、その考えに気づき、「では、どうすれば良いのだろう?」と問い直すことです。
「スタッフが動いてくれない」を「スタッフが動きやすくするには、何を変えればよいだろう?」へ。
「忙しいからできない」を「忙しい状況でもできることは何だろう?」へ。
「上司が協力してくれない」を「協力してもらうために、何を伝えればよいだろう?」へ。
こうした小さな切り替えが、自分にできる行動を見つける力につながります。
また、相手の立場に立つためには、最初から相手の気持ちを理解できる必要はありません。まずは「自分とは違う考え方をする人がいる」と認識し、相手を理解するために話を聞くことから始めてみましょう。
主体性とは、何でも一人で解決することでも、常に前向きでいることでもありません。自分にできることを考え、周囲と協力しながら、より良い結果を生み出すために行動することです。
店長成長コーチングでは、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの視点から、店長が自ら考え、スタッフの力を引き出し、店舗の成果を高める力を育てます。
「店長が問題を周囲のせいにしてしまう」「スタッフが指示待ちになっている」「問題が起きても改善につながらない」といった課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
一人ひとりが自分にできることを考え、周囲と協力して成果を生み出せる店舗づくりを、一緒に目指していきましょう。


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