「またクレームが入った。」
飲食店の店長であれば、一度は頭を抱えた経験があるのではないでしょうか。
料理への指摘、接客への不満、提供時間へのクレーム、会計ミス……。そのたびに店長が謝罪し、状況を確認し、スタッフへ注意をする。しかし数日後には似たようなクレームがまた発生する。
このような状態では、店長は本来取り組むべき人材育成や店舗改善に時間を使えません。
実は、クレームが多い店舗ほど「スタッフの質」が低いのではなく、「品質管理の仕組み」が整っていないケースがほとんどです。
今回は、飲食店でクレームが減らない本当の原因と、店長がプレイヤーではなく改善責任者として店舗を変えていくための考え方について解説します。
クレームが多い店舗で起きる3つの悪循環
① 店長が現場対応に追われ続ける
クレームが発生すると、多くの店舗では最終的に店長が対応します。
謝罪、返金、スタッフへの聞き取り、再発防止…。
一件一件は数十分でも、積み重なると大きな時間になります。
その結果、本来行うべき教育や改善活動が後回しになり、さらにクレームが増えるという悪循環に入ってしまいます。
② スタッフが萎縮し、主体性がなくなる
クレームが起きるたびに注意だけが増えると、
「また怒られる」
「どうせ店長が対応する」
という空気が生まれます。
するとスタッフは自分で考えなくなり、最低限の仕事しかしなくなります。
これは部下が育たない店舗でよく見られる特徴でもあります。
③ お客様からの信頼を失い、利益も減る
一度のクレーム対応で終わればまだ良いですが、同じ問題が繰り返されると、
「この店は毎回同じことをしている」
という印象になります。
リピート率が下がり、口コミ評価も悪化し、新規集客にも影響します。
品質の問題は売上だけでなく、採用や飲食店離職率にもつながる重要な経営課題なのです。
理想は「クレームが改善の材料になる」店舗
理想の店舗は、クレームがゼロの店舗ではありません。
人が働く以上、ミスを完全になくすことはできません。
重要なのは、
同じクレームを二度と繰り返さないこと
です。
さらに理想を言えば、
「クレームになる前に防げる店舗」
です。
そのためには、問題が起きてから動くのではなく、起きそうなことを先回りして考える文化が必要になります。
店舗全体で見直したい3つの組織課題
① 起きた問題しか改善していない
多くの店舗では、
「起きたら直す」
という改善しか行われません。
しかし本当に必要なのは、
起きそうなことまで想定すること
です。
例えば、
- 商品提供ミス
- アレルギー対応漏れ
- オーダー間違い
- 提供時間遅延
- レジミス
などを事前に洗い出せば、多くは予防できます。
② 問題を全体で整理していない
クレームが発生すると、その都度対応して終わる店舗は少なくありません。
しかし改善効果を高めるには、
まず
起きたこと
起きそうなこと
をすべて書き出します。
その後、
- 発生頻度
- お客様への影響
- 売上への影響
- 再発可能性
などで優先順位を付けます。
改善は思いつきではなく、順番が重要です。
③ 再発防止が個人任せ
「次から気を付けよう」
では改善になりません。
改善とは、
誰がやっても同じ品質になる仕組みを作ることです。
これは多店舗展開 店長に求められる重要な視点でもあります。
店長自身が乗り越えたい3つの壁
① 目の前の対応だけで終わってしまう
忙しい店長ほど、
今日のクレーム対応で精一杯になります。
しかし本当に重要なのは、
「なぜ起きたのか」
ではなく、
「次にどう防ぐか」
です。
② クレーム対応を教育につなげていない
クレームは失敗ではなく教材です。
スタッフ全員で共有すれば、
一人の失敗を全員の学びに変えられます。
これが飲食 人材育成です。
③ 店長が全部抱えてしまう
最初は店長対応で当然です。
しかし、それを続けていては店長は育成も改善もできません。
最終的には、
「対応はスタッフが完了しました。」
「このようなクレームがありました。」
という報告だけが店長へ届く状態を目指しましょう。
店長は最後の砦ではありますが、最初から最後まで一人で抱える存在ではありません。
クレームを減らす仕組みづくりの進め方
改善は次の流れで進めると効果的です。
STEP1 起きたことを全部集める
まず過去のクレームを一覧化します。
さらに、
「今後起きそうなこと」
も全員で考えます。
STEP2 優先順位を決める
全部を一度に改善する必要はありません。
頻度が高いもの
影響が大きいもの
再発しやすいもの
から着手します。
STEP3 原因ではなく仕組みを見る
人ではなく、
仕組みに原因を探します。
- マニュアル不足
- 教育不足
- チェック不足
- 情報共有不足
ここが改善ポイントになります。
STEP4 改善内容を標準化する
改善できた内容は、
誰でもできる形にします。
写真付きマニュアル
朝礼共有
チェックリスト
ロールプレイング
などを活用すると定着しやすくなります。
STEP5 店長が対応する範囲を減らす
最初は店長がフォローします。
しかし少しずつ、
スタッフ自身が対応できる範囲を広げます。
その結果、
店長には
「対応完了しました。」
「本日このようなクレームがありました。」
という報告だけが届く状態になります。
これが店長の時間を生み出し、さらに改善活動へ投資できる好循環を生みます。
事例|毎週クレームが発生していた店舗が3か月で大きく変わった理由
ある飲食店では、毎週のようにクレームが発生していました。
店長はそのたびに謝罪し、スタッフへ注意して終わり。
しかし改善は続きませんでした。
そこで取り組んだのは、
過去半年間のクレームをすべて書き出すことでした。
さらに、
「今後起きそうなこと」
まで全員で洗い出しました。
すると、
実際には10種類程度の問題が繰り返されていただけだったのです。
優先順位を決め、一つずつ改善。
マニュアルも更新し、朝礼でも共有しました。
最初の1か月は店長がほとんど対応していましたが、徐々にスタッフが自分で対応し、最後には
「本日このようなクレームがあり、ここまで対応しました。」
という報告だけが店長へ届くようになりました。
店長は空いた時間で教育に取り組めるようになり、店舗全体の品質も向上しました。
最後に
クレームが多い店舗は、スタッフの能力が低いわけではありません。
多くの場合、
問題を先回りして防ぐ仕組み
が不足しています。
店長が毎回対応する状態は、一時的には必要です。
しかし、それを目標にしてはいけません。
目指すべき姿は、
スタッフが自ら適切に対応し、店長には改善のための報告が届く店舗です。
そのためには、
- 起きたことを洗い出す
- 起きそうなことも整理する
- 優先順位を決める
- 仕組みとして標準化する
この4つを繰り返すことが重要です。
クレームは店舗の弱点を教えてくれる貴重な情報です。
その情報を改善につなげられるかどうかが、店長としての成長、そして強い組織づくりへの第一歩になるでしょう。



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