はじめに
「今月も売上目標は達成しました。」
そう報告を受けても、会社全体の利益を見ると期待したほど残っていない。そんな経験はありませんか。
飲食店では、売上を追いかけることは日常です。しかし、本来会社が目指すべきものは「利益」です。
にもかかわらず、多くの店舗では利益目標が曖昧なまま運営されています。その結果、「忙しかったのに利益が出ない」「売上は伸びたのに会社が苦しい」という状況が生まれます。
特に店長が経営者視点を持つためには、利益を理解することが欠かせません。利益の考え方が分かれば、日々の判断基準も大きく変わります。
今回は、利益目標が曖昧になる理由と、その解決策として知っておきたい「損益分岐点」の考え方について解説します。
利益目標が曖昧だと起こる3つの問題
1. 売上だけを追い続ける組織になる
「あと10万円売ろう」
「客数を増やそう」
このような目標ばかりになると、利益より売上が目的になります。
値引きをしてでも売る。
人を増やしてでも売る。
これでは売上は伸びても利益は残りません。
利益目標が無い組織では、「売れれば正解」という考え方が定着してしまいます。
2. 現場の判断基準がバラバラになる
例えば、
- 廃棄を減らすことを優先する人
- 売上を優先する人
- 人件費を優先する人
それぞれ間違いではありません。
しかし利益という共通ゴールが無ければ、判断が一致しません。
組織は共通の数字があるから同じ方向を向けます。
3. 頑張った成果が分からない
スタッフも店長も、
「今日は忙しかった」
という感覚しか残りません。
本当に利益に貢献したのか。
改善されたのか。
これが分からなければ、改善活動は感覚頼みになります。
数字で成果を確認できる組織ほど改善スピードは速くなります。
理想は利益から逆算して行動できる店長
理想の店長は、
「売上はいくら必要か」
ではなく、
「利益を残すためには何を改善するべきか」
を考えています。
例えば、
- 原価率を0.5%改善する
- 人件費率を1%改善する
- 廃棄を半分にする
- 客単価を100円上げる
利益を起点に考えることで、選択肢は増えます。
これが経営者視点です。
店舗運営は売上競争ではなく、利益を生み出すゲームなのです。
会社が抱えやすい3つの課題
1. 利益目標が共有されていない
多くの会社では、
「今月売上○○万円」
だけが伝えられます。
利益はいくら必要なのか。
利益率は何%を目指すのか。
ここまで共有されている店舗は意外と多くありません。
数字は経営陣だけのものではありません。
現場が理解して初めて改善が始まります。
2. 店長教育が売上中心になっている
飲食 人材育成では、
- 接客
- オペレーション
- 売上
は教えても、
利益管理を学ぶ機会が少ないケースがあります。
利益が分からなければ、店長は経営判断ができません。
3. 数字を見る文化が育っていない
利益は毎月見るもの。
原価率も毎週見るもの。
人件費率も毎日確認するもの。
数字を見る文化が無ければ、問題に気付くのはいつも月末になります。
店長自身が陥りやすい3つの課題
1. 損益分岐点を知らない
ここでよく出てくる言葉が損益分岐点です。
「損益分岐点って何?」
簡単に言えば、
利益がプラスにもマイナスにもならない売上ライン
のことです。
例えば、
毎月の固定費が500万円。
利益率(限界利益率)から計算して、
売上700万円で利益ゼロになるなら、
700万円が損益分岐点です。
つまり、
700万円以下なら赤字。
700万円以上なら利益が残ります。
この数字を知らずに店舗運営することは、ゴールの無いマラソンを走るようなものです。
2. 売上だけ見て安心してしまう
「今月は去年より売れた。」
でも、
原価率が上がっている。
人件費も増えている。
結果として利益は減っている。
こうしたケースは珍しくありません。
利益を見ない店長ほど、この落とし穴にはまります。
3. 数字を行動につなげられない
利益が悪い。
だから頑張る。
では改善できません。
利益率が悪いなら、
- 原価を見る
- ロスを見る
- 客単価を見る
- 人件費を見る
数字から原因を考え、行動を決めることが重要です。
利益目標を明確にするための3つの方法
1. 利益目標から売上目標を決める
売上目標ではなく、
利益目標を先に決めます。
そこから、
必要売上
必要客数
必要客単価
まで逆算します。
これが数字の見方です。
2. 損益分岐点を全員が理解する
店長だけではありません。
副店長やリーダーも、
「あと何万円売れば利益が出るのか」
を知るだけで行動は変わります。
数字は現場に公開してこそ価値があります。
3. 利益改善の選択肢を増やす
利益は売上だけではありません。
改善方法は数多くあります。
- 原価率改善
- 廃棄削減
- 客単価アップ
- 回転率向上
- 人件費最適化
- 生産性向上
利益改善とは「売ること」ではなく、「利益を増やす方法を増やすこと」でもあります。
事例:損益分岐点を共有しただけで店長の判断が変わった
ある飲食チェーンでは、毎月売上目標だけを共有していました。
店長たちは売上達成を最優先に考え、ピーク時間以外でも人員を厚く配置していました。
しかし、利益は思うように残りません。
そこで会社は、各店舗の損益分岐点と利益目標を店長へ共有しました。
すると店長たちは、
「今日は損益分岐点を超えたから追加販促より人件費を抑えよう。」
「この商品は原価率が高いからおすすめ商品を変えよう。」
といった利益を意識した判断をするようになりました。
半年後には売上を大きく伸ばさなくても利益率が改善し、会社全体の利益も増加しました。
数字を知ることは、判断力を育てることでもあるのです。
最後に
利益は会社が存続するために欠かせない数字です。
しかし、利益は「結果」であり、「目的」ではありません。
本当に重要なのは、
利益を生み出す行動を理解し、改善を続けることです。
その第一歩が、利益目標を明確にすること。
そして、損益分岐点を理解することです。
売上だけを追う店長から、利益を生み出す店長へ。
その意識の変化が、店舗だけでなく会社全体の未来を大きく変えていきます。
飲食店経営では、店長一人ひとりが経営者視点を持つことが、多店舗展開や持続的な成長への土台になります。利益目標を数字として共有し、日々の行動につなげる仕組みづくりから始めてみてはいかがでしょうか。



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