「スタッフ同士の仲は悪くないのに、なぜか店舗の成果が上がらない」
「店長が指示を出さないと、スタッフが自分から動いてくれない」
「社員とアルバイトで、仕事に対する意識に差がある」
飲食店を運営していると、このような悩みに直面することはありませんか?
スタッフ同士が仲よく働いていることは、もちろん大切です。しかし、仲がよいことと、チームとして成果を出せることは同じではありません。
例えば、忙しい時間帯にスタッフが互いに助け合っていても、売上や利益を改善するための行動ができていなければ、店舗経営の成果にはつながりにくいでしょう。また、店長が頑張って指示を出していても、スタッフ一人ひとりが店舗の目標を理解していなければ、店長がいない時間帯に十分な力を発揮できない可能性があります。
チーム作りで大切なのは、全員が仲よくすることだけではありません。共通のゴールを持ち、それぞれの役割を理解し、成果につながる行動を実践できる状態を作ることです。
この記事では、店長成長コーチングプログラムのコミュニケーション編として、飲食店で成果を出すチームを作るための4つの基本を解説します。
チーム作りとは、全員が同じ方向を向いて働ける仕組みを作ること
チームと聞くと、仲間意識やコミュニケーションのよさをイメージする方も多いでしょう。
もちろん、互いを信頼し、困ったときに助け合える関係は欠かせません。しかし、それだけではチームとして十分とはいえません。
例えば、ある飲食店で次のような状態になっているとします。
- 店長は利益を増やしたいと考えている
- 社員は売上を上げることが重要だと考えている
- アルバイトは忙しい時間を乗り切ることを最優先している
- キッチンは料理の品質を重視し、ホールは接客のスピードを重視している
それぞれが一生懸命に働いていても、重視するものがバラバラでは、行動がかみ合わないことがあります。
一方、店舗全体で目指す成果が共有され、各自の役割と行動が明確になっていれば、判断に迷ったときにも同じ方向を向いて動きやすくなります。
そのために必要なのが、次の4つです。
- 共通のゴール:チーム全員で何を目指すのか
- 組織図:誰が誰と連携し、誰に相談・報告するのか
- 役職と役割:それぞれが何に責任を持ち、何を判断するのか
- KPI:目標達成に向けて、どの数字や行動を確認するのか
この4つを整えることで、個人の頑張りに依存する店舗から、チームとして成果を出す店舗へと変わる土台を作れます。
1.共通のゴールを設定する
チーム作りの出発点は、全員で目指すゴールを明確にすることです。
ゴールが曖昧なままでは、スタッフは何を優先すればよいのかわかりません。店長が「もっと頑張ろう」「売上を上げよう」と伝えても、具体的な行動は人によって変わってしまいます。
店舗の目標を、スタッフが理解できる言葉にする
例えば、店舗の目標が「売上を前年比105%にする」だったとします。
数字を掲げるだけでは、スタッフにとって自分の仕事とのつながりが見えにくいかもしれません。
そこで、目標を次のように具体化します。
- 売上目標を達成するために、来店されたお客様へのおすすめを工夫する
- お客様の満足度を高めるために、提供時間や接客品質を改善する
- 利益を確保するために、食材のロスや不要な残業を減らす
- リピーターを増やすために、お客様の状況に応じた気配りを実践する
こうすれば、売上や利益という経営上の目標と、日々の仕事とのつながりが見えてきます。
ここで大切なのは、すべてのスタッフに経営者と同じ視点を求めることではありません。自分の仕事が店舗の成果にどうつながっているのかを理解してもらうことです。
ゴールは店長が一方的に伝えるだけで終わらせない
店長が目標を決めて伝えることは必要ですが、それだけではスタッフが自分ごととして捉えられない場合があります。
例えば、ミーティングで次のように問いかけてみましょう。
「今月の目標を達成するために、私たちにできることは何だろう?」
「お客様にまた来たいと思っていただくために、改善できることはあるかな?」
「忙しい時間帯でも品質を落とさないために、どんな工夫ができるだろう?」
スタッフ自身に考えてもらうことで、目標が「店長から与えられた数字」から「自分たちで取り組む課題」に変わる可能性があります。
ただし、目標そのものの責任をスタッフに押しつけるのではなく、店舗の方針や実現可能性を踏まえて、店長が方向性を整えることも重要です。
2.組織図を作り、指示・報告・相談の流れを明確にする
複数のスタッフが働く飲食店では、誰が誰に報告し、誰に相談すればよいのかを明確にすることも重要です。
小規模な店舗では、店長がすべてを把握して指示を出すこともできます。しかし、店舗が忙しくなったり、スタッフが増えたりすると、店長一人ですべてを判断することには限界があります。
そこで役立つのが組織図です。
組織図は、肩書きを並べるためだけのものではない
例えば、次のような体制を考えてみましょう。
店長
├─ ホール責任者
│ └─ ホールスタッフ
└─ キッチン責任者
└─ キッチンスタッフ
店長:店舗全体の成果・人材育成を担当する。
ホール責任者:接客・客席管理・新人指導を担当する。
キッチン責任者:調理品質・提供速度・衛生管理を担当する。
ホールスタッフ・キッチンスタッフ:それぞれの担当業務を実行し、問題や改善案を責任者に共有する。
この例では、店長の下にホール責任者とキッチン責任者を置いています。それぞれが担当領域を管理し、必要な情報を店長に報告する仕組みです。
実際の店舗では、社員数や営業時間、業態に応じて構成を変える必要があります。必ずしも責任者という役職を新設する必要はありません。大切なのは、誰がどの領域を担当するのかがわかることです。
店長にすべての判断が集中する状態から抜け出す
例えば、ホールでお客様からクレームがあったとき、すべてのスタッフが店長を呼ばなければ対応できない状態だと、店長が不在のときに問題が大きくなる可能性があります。
そこで、現場で判断できる範囲と、店長への報告が必要な範囲をあらかじめ決めておきます。
- 一定の範囲内でのお客様対応は、担当者が判断する
- 返金や重大なクレームなどは、責任者または店長に報告する
- 衛生上の問題や事故につながる事象は、決められた手順で速やかに報告する
このように判断や報告の流れを整理することで、スタッフが動きやすくなり、店長も店舗全体の管理や人材育成に時間を使いやすくなります。
3.役職ごとの役割と責任を明確にする
組織図で人と人の関係を示したら、次は役職ごとの役割を明確にします。
役職名が決まっていても、「何をする人なのか」「どこまで判断してよいのか」が曖昧だと、仕事が重複したり、誰も対応しない業務が生まれたりします。
「作業をする人」と「成果に責任を持つ人」を区別する
例えば、店長がスタッフに「新人教育をお願い」と伝えたとします。
これだけでは、教える側はマニュアルを説明すればよいのか、一人で仕事ができるまで育成するのか、判断できないかもしれません。
そこで、役割を具体的にします。
- 店長:店舗の目標を設定し、成果を確認する。スタッフが成長できる仕組みを整える
- ホール責任者:接客品質を管理し、新人が基本業務を習得できるよう支援する
- キッチン責任者:調理品質や衛生基準を維持し、スタッフの技術習得を支援する
- スタッフ:担当業務の基準を守り、問題や改善案を責任者に共有する
こうした役割の違いが明確になると、スタッフは自分がどこまで責任を持ち、どのような場面で相談すればよいのかを理解しやすくなります。
権限と責任をセットで考える
役割を任せる際には、責任だけでなく、判断するための権限も必要です。
例えば、ホール責任者に接客品質の改善を任せても、スタッフへの指示やシフト中の配置調整について何も判断できなければ、十分な成果を出すことは難しいでしょう。
一方で、権限だけを与えても、どのような成果を期待されているのかがわからなければ、判断に迷います。
「何を任せるのか」「どこまで判断できるのか」「何を報告するのか」をセットで伝えることが重要です。
また、役割を任せた後も、定期的に進捗や困りごとを確認し、必要な支援を行いましょう。任せることは、放置することではありません。
4.KPIを設定し、チームの成果と行動を確認する
共通のゴールと役割が決まったら、目標に向かって進めているかを確認する仕組みが必要です。
そこで活用したいのがKPIです。KPIは、目標の達成に向けた進捗を把握するための指標です。
飲食店では、売上や利益だけを見ていても、成果が出ない原因を十分に把握できないことがあります。
例えば、売上が下がったとき、来店客数が減ったのか、成約率が下がったのか、客単価が低下したのかによって、必要な対策は異なります。
店舗の目標と日々の行動をつなぐ
店舗の状況に応じて、次の5つの指標を活用できます。
| KPI | 確認すること | 現場で考えられる取り組み |
|---|---|---|
| 見込客 | 来店や購入につながる見込み客をどれだけ獲得できているか | 販促、認知向上、再来店のきっかけづくり |
| 成約率 | 来店・問い合わせなどの機会を購入につなげられているか | 接客、提案、注文までの案内の改善 |
| 平均リピート回数 | お客様がどの程度繰り返し利用しているか | 接客品質、再来店施策、顧客との関係づくり |
| 平均客単価 | 1回の利用でどの程度購入しているか | おすすめ、セット提案、メニュー構成の改善 |
| 利益率 | 売上に対してどの程度利益を確保できているか | 食材ロス、原価、人件費、業務効率の見直し |
実際に採用する指標は、業態や店舗の課題によって異なります。また、各指標の定義や計算方法を社内で統一し、同じ基準で比較できるようにすることも大切です。
数字を確認するだけでなく、次の行動を決める
KPIを設定しても、数字を記録するだけでは店舗は変わりません。
例えば、平均客単価が目標に届いていない場合、店長が「客単価を上げよう」と伝えるだけでは、スタッフは具体的に何をすればよいのかわからないでしょう。
そこで、次のように考えます。
- 現在の数字と目標の差を確認する
- なぜ差が生じているのか、現場の状況を確認する
- 改善するための具体的な行動を決める
- 実施した結果を確認する
- 効果があれば継続し、効果がなければ方法を見直す
例えば、おすすめメニューの注文が少ないのであれば、スタッフが商品知識を十分に理解していないのか、おすすめするタイミングが適切でないのか、メニューの見せ方に課題があるのかを確認します。
そのうえで、商品説明の練習や声かけのタイミングの統一など、実行できる改善策を決めます。
このように、数字をチームの共通言語として使うことで、個人の感覚だけに頼らず、協力して問題を解決できるようになります。
チーム作りを進める店長が実践したい3つのこと
ここまで、共通のゴール、組織図、役職、KPIについて解説しました。しかし、仕組みを作るだけでチームが完成するわけではありません。
店長が日々のコミュニケーションの中で、次の3つを実践することが大切です。
1.目標と役割を繰り返し共有する
目標や役割は、一度説明すれば全員が理解できるとは限りません。
朝礼やミーティング、日々の業務の中で、「今、何を目指しているのか」「自分たちの仕事がどうつながっているのか」を繰り返し伝えましょう。
特に、新人や勤務時間の短いアルバイトにも情報が届くように、共有方法を工夫することが必要です。
2.スタッフの意見を聴き、改善に参加してもらう
店長がすべてを決めて指示するだけでは、スタッフが受け身になりやすくなります。
「この業務をもっと効率よくするには、どうしたらよいと思う?」
「お客様に喜んでもらうために、改善できることはあるかな?」
このような質問を通じて、スタッフ自身に考えてもらいましょう。
出された意見をすべて採用する必要はありませんが、検討した結果や採用しなかった理由を伝えることで、意見を出す意味が感じられるようになります。
3.ルールと判断基準を一貫させる
忙しいときだけルールを省略したり、スタッフによって指導内容を変えたりすると、チーム内の信頼が損なわれることがあります。
安全や衛生、接客品質など、店舗として守るべき基準は一貫して運用しましょう。
一方、現場の実情に合わないルールがあれば、放置せず、理由を確認したうえで正式に見直します。
一貫性とは、何があっても変更しないことではありません。必要な変更を適切な手順で行い、全員が納得できる基準を維持することです。
まとめ:チームの成果は、共通の方向性と仕組みから生まれる
飲食店で成果を出すチームを作るには、スタッフ同士の仲のよさだけでは十分ではありません。
- 共通のゴールを設定し、全員が目指す方向を理解する
- 組織図を整え、指示・報告・相談の流れを明確にする
- 役職と役割を明確にし、責任と権限を適切に分ける
- KPIを活用し、成果と行動を確認して改善を続ける
この4つを整えることで、店長一人が頑張る店舗から、スタッフが自分の役割を理解し、チームとして成果を出す店舗へと近づいていきます。
もちろん、仕組みを整えるだけでスタッフがすぐに主体的に動くようになるとは限りません。目標を理解してもらうための対話や、安心して意見を出せる関係づくりも欠かせません。
店長には、店舗を運営するスキルだけでなく、スタッフの考えを引き出し、チームを同じ方向へ導くコミュニケーション力が求められます。
店長成長コーチングでは、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの視点から、店長が経営者目線で店舗を捉え、自ら考えて行動できるようになることを目指します。
「店長に任せたいけれど、結局自分が現場に入ってしまう」「スタッフが自分から動くチームを作りたい」とお考えの経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
店舗の状況や課題を整理し、チーム作りの第一歩を一緒に考えていきましょう。



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