スタッフとの面談を実施しているのに、思ったような成果につながらない。面談の場では話を聞いてくれるものの、その後の行動が変わらない。気がつけば店長が一方的に話し続け、説教のような時間になってしまう……。
飲食店の店長やエリアマネジャーにとって、スタッフとの面談は大切な仕事の一つです。しかし、日々の営業に追われる中で、面談の準備や進め方まで十分に考えるのは難しいかもしれません。
面談をスタッフの成長につなげるために必要なのは、話術だけではありません。面談の流れを事前に準備し、相手が自分で考え、次の行動を決められる時間にすることが大切です。
この記事では、飲食店の店長が実践できる1on1・面談の基本と、計画の進捗・成果・課題・コーチング・計画修正という5つのステップを紹介します。
なぜ、飲食店の店長に1on1・面談が必要なのか?
飲食店では、スタッフ一人ひとりの働き方が店舗の成果に大きく影響します。
接客スキル、調理技術、チームワーク、売上への意識、後輩の育成など、スタッフに身につけてほしいことは数多くあります。
ところが、忙しい店舗では、日常のコミュニケーションが業務指示や注意・指導に偏りがちです。
「今日はこの作業をお願い」
「もっとお客様に声をかけて」
「昨日のミスについて、気をつけてね」
こうした会話は必要ですが、それだけではスタッフが何を目指し、どんなことに悩み、どのように成長したいのかを把握するのは難しいでしょう。
そこで役立つのが、定期的な1on1・面談です。
面談には、主に次のような役割があります。
- 目標を共有する: 本人が何を目指しているのか、会社や店舗の目標とどうつながるのかを確認する
- 成長を振り返る: できるようになったことや成果を確認し、自信につなげる
- 課題を発見する: 本人が感じている悩みや、業務上の問題を把握する
- 行動を具体化する: 次に何をするのかを明確にし、実行につなげる
- 信頼関係を築く: 店長とスタッフが継続的に対話し、相談しやすい関係をつくる
面談は、単にスタッフを評価する場ではありません。スタッフの成長を支え、店舗の成果を高めるためのコミュニケーションの仕組みなのです。
面談がうまくいかない店長にありがちな3つの問題
1.準備をせず、その場の思いつきで話してしまう
面談の時間を確保しても、何を話すのかを決めずに臨むと、話題があちこちに飛んでしまいがちです。
「最近どう?」
「特に問題ないです」
「そうなんだ。じゃあ、頑張ってね」
これでは、せっかくの面談が雑談だけで終わってしまう可能性があります。
もちろん、雑談は信頼関係を築くうえで大切です。しかし、業務上の課題や成長について話し合うのであれば、目的と流れを事前に準備する必要があります。
2.フィードバックが説教の時間になってしまう
スタッフの成果や行動に課題があると、つい改善点を次々に伝えたくなるものです。
「目標に届いていないよね」
「もっと周りを見ないと」
「前にも同じことを言ったよね」
店長としては改善してほしいからこそ伝えているのですが、一方的に話し続けると、スタッフは受け身になってしまいます。
面談の目的は、店長が正しさを証明することではありません。本人が現状を理解し、次の行動を考えられるように支援することです。
3.面談後の行動が決まっていない
面談で課題が明らかになっても、次に何をするのかが決まっていなければ、日常業務に戻ったときに元の状態に戻りやすくなります。
「もっと積極的に行動しよう」
「売上を意識しよう」
といった言葉だけでは、具体的な行動に落とし込めません。
「次の1週間で、どんな行動を試すのか」「いつまでに、何を実施するのか」まで決めることで、面談が実際の成果につながりやすくなります。
まずは面談のスクリプトを準備しよう
面談を効果的に進めるために、最初に取り組みたいのが面談のスクリプト(進行台本)を準備することです。
スクリプトと聞くと、決められた質問を順番に読み上げるイメージがあるかもしれません。しかし、ここでいうスクリプトは、会話を台本どおりに進めるためのものではありません。
面談の目的や進行の流れ、確認する項目、質問の例を整理しておくためのものです。
例えば、店長とスタッフの面談であれば、次のような項目を用意します。
- 前回決めた行動の振り返り
- 目標や計画の進捗確認
- 今期の成果と、うまくいったことの確認
- 現在の課題や困っていることの確認
- 課題解決に向けたコーチング
- 今後の計画や行動の修正
- 次回までの行動と期限の確認
あらかじめ流れを決めておけば、話題が脱線しても本来の目的に戻りやすくなります。また、複数のスタッフと面談する場合も、確認する項目をそろえやすくなります。
ただし、全員にまったく同じ質問をする必要はありません。基本の流れを共通化しながら、本人の経験や課題に応じて質問を変えることが大切です。
スタッフの成長を引き出す面談の5ステップ
ここからは、計画の進捗、今期の成果、課題、コーチング、計画修正という5つのステップに沿って、具体的な進め方を紹介します。
ステップ1.計画の進捗を確認する
最初に確認するのは、前回の面談で決めた計画や行動がどこまで進んでいるかです。
例えば、スタッフが「今月は客単価を上げるために、おすすめ商品の提案を増やす」と決めていたとします。
この場合、単に「できた?」「できなかった?」と聞くだけでは十分ではありません。
次のような質問をしてみましょう。
- 「前回決めた行動は、どこまで実行できた?」
- 「実際にやってみて、どんなことがあった?」
- 「予定どおりに進んでいることは何?」
- 「計画どおりに進まなかった部分はある?」
ここでは、計画どおりにできたかどうかだけでなく、実行した内容や進捗を具体的に確認します。
計画が進んでいなかったとしても、いきなり責める必要はありません。忙しさや人員不足、本人の理解不足など、さまざまな要因が考えられるからです。
まずは事実を確認し、本人がどのように状況を捉えているのかを聞きましょう。
ステップ2.今期の成果を振り返る
次に、今期にどのような成果があったのかを振り返ります。
売上や利益などの数値だけでなく、本人の行動や成長にも目を向けることが重要です。
例えば、次のような質問が考えられます。
- 「今期、最も成果があったと思うことは何?」
- 「以前と比べて、できるようになったことはある?」
- 「目標達成につながった行動は何だったと思う?」
- 「周囲のスタッフに良い影響を与えられたことはある?」
飲食店では、結果が数字に表れるまでに時間がかかることもあります。
例えば、おすすめ商品の提案を始めたばかりで、まだ客単価の向上につながっていない場合でも、提案回数が増えたことや、お客様との会話が改善したことは成果として捉えられます。
もちろん、行動したことだけで満足してはいけません。しかし、結果だけを評価すると、成果が出るまでの努力や改善の過程を見落とす可能性があります。
結果と行動の両方を振り返り、本人が自分の成長を認識できるようにすることが大切です。
また、良かった点は具体的に伝えましょう。
「頑張ったね」だけではなく、「忙しい時間帯でも、おすすめ商品の提案を続けられていたね。あの行動はよかったと思う」と伝えることで、本人は何が評価されたのかを理解できます。
ステップ3.課題を明らかにする
成果を振り返ったら、次は課題を確認します。
ここで大切なのは、店長が先に問題を決めつけないことです。
例えば、売上目標を達成できなかったスタッフに対して、店長が「もっと接客を頑張らないと」と伝えたとします。
しかし、実際には来店客数が減っていたのかもしれません。あるいは、スタッフの配置や商品提供の遅れに問題があった可能性もあります。
原因を確認せずに指導しても、効果的な改善策にはつながりません。
まずは、本人に考えてもらいましょう。
- 「目標と実績を比べて、どんなことに気づいた?」
- 「うまくいかなかった原因は何だと思う?」
- 「自分で改善できそうなことはある?」
- 「今、仕事を進めるうえで困っていることは何?」
本人の考えを聞いたうえで、必要に応じて店長から見た事実や情報を補足します。
また、課題を本人の能力や意識だけに求めないことも重要です。
仕事の手順が複雑すぎる、教育時間が不足している、責任と権限が一致していないなど、環境や仕組みに原因があることもあります。
スタッフの努力で改善できることと、店長や会社が改善すべきことを分けて考えることで、より実効性の高い対策を立てられます。
ステップ4.コーチングによって解決策を考える
課題が明らかになったら、解決策を考えます。
ここで意識したいのが、店長がすぐに答えを教えないことです。
経験のある店長は、問題を聞けばすぐに解決策を思いつくこともあるでしょう。しかし、毎回店長が答えを出していると、スタッフは自分で考える機会を失ってしまいます。
そこで、コーチング的な質問を使って、本人が解決策を考えられるように支援します。
例えば、客単価が目標に届いていないスタッフには、次のように質問します。
「客単価を上げるために、どんな方法が考えられる?」
「その中で、すぐに試せそうなことは何?」
「実行するうえで、障害になりそうなことはある?」
「その障害を乗り越えるために、どんな工夫ができそう?」
こうした質問を通じて、本人が自分なりの解決策を考えられるようにします。
ただし、コーチングは何でも本人に考えさせればよいというものではありません。経験が浅く、選択肢を思いつけない場合には、店長が具体例や知識を提供することも必要です。
例えば、
「おすすめ商品の提案方法としては、料理の特徴を説明する方法や、食事の進み具合に合わせて提案する方法があるよ。どちらが今のお店に合いそうかな?」
といった形で選択肢を提示すれば、本人は考えやすくなります。
答えをすべて与えるのではなく、考えるための材料を渡す。 これが、スタッフの成長を支える面談のポイントです。
ステップ5.計画を修正し、次の行動を決める
最後に、面談で話し合った内容をもとに計画を修正します。
課題や解決策が明らかになっても、実際の行動に落とし込めなければ成果にはつながりません。
例えば、「おすすめ商品の提案を増やす」という目標であれば、次のように具体化します。
- 何をするか:ランチ営業で、お客様におすすめ商品を提案する
- どのくらい行うか:1日10組を目安に実施する
- いつまでに行うか:次回の面談まで継続する
- 何を確認するか:提案した回数や注文につながった件数を記録する
このように、行動・数量・期限・確認方法を明確にしておくと、次回の面談で振り返りやすくなります。
また、当初の計画が現状に合わなくなっている場合は、計画そのものを修正しましょう。
例えば、人員不足によって予定していた取り組みが難しいのであれば、優先順位を見直したり、実施方法を変更したりする必要があります。
計画を立てたこと自体が目的ではありません。成果につながるように、状況に合わせて計画を見直し続けることが大切です。
最後に、本人に確認します。
「次の面談までに、何を実行する?」
「そのために、店長としてサポートできることはある?」
「次回は、どんな状態になっていたら成功と言えそう?」
ここまで確認できれば、面談を具体的な行動につなげやすくなります。
面談を説教の時間にしないための3つの工夫
5つのステップを実践するうえで、特に気をつけたいのがフィードバックの伝え方です。
店長が一方的に話し続ける面談にならないよう、次の3つを意識しましょう。
1.店長が話す前に、本人の考えを聞く
スタッフの行動に問題があると、すぐに改善点を伝えたくなるものです。
しかし、まずは本人がどう考えているのかを聞いてみましょう。
「今回の結果について、自分ではどう感じている?」
「うまくいかなかった理由は何だと思う?」
本人の認識を確認することで、店長の考えとの違いも明らかになります。
2.事実と評価を分けて伝える
「君はやる気が足りない」といった言葉は、本人の人格や内面を決めつけてしまいます。
一方で、「今週は予定していた提案を実施できた日が2日だったね」と事実を伝えれば、具体的な改善について話し合いやすくなります。
フィードバックでは、観察できた事実と、そこから考えられる課題を分けて伝えましょう。
3.フィードバックの後に、本人の意見を聞く
店長が改善点を伝えたら、それで終わりにせず、本人の受け止め方を確認します。
「今の話を聞いて、どう感じた?」
「改善するとしたら、何から始められそう?」
一方的に正解を押しつけるのではなく、本人が納得して行動できる状態を目指します。
ただし、衛生・安全上のルールや会社として守るべき基準については、必要な指示を曖昧にしてはいけません。本人の考えを尊重することと、守るべきルールを明確に伝えることは両立できます。
そのまま使える!店長の面談スクリプト例
ここまで紹介した内容を、実際の面談で使える形にまとめます。
面談時間は30分程度を想定しています。スタッフの経験や課題に応じて調整してください。
① 導入・前回の振り返り(3分)
「今日は、前回決めた行動の振り返りと、今期の成果や課題について話したいと思っています。まず、前回決めたことはどこまで実行できた?」
② 計画の進捗確認(5分)
「予定どおりに進んだことは何?」
「思うように進まなかったことがあれば、その理由も教えてもらえる?」
③ 成果と課題の確認(7分)
「今期、自分で成果があったと思うことは何?」
「以前と比べて成長したと感じることはある?」
「今後、改善したいと思っていることは何?」
④ コーチング・解決策の検討(10分)
「その課題を解決するために、どんな方法が考えられる?」
「ほかにも選択肢はありそう?」
「実行するとしたら、何が障害になりそう?」
「店長としてサポートできることはある?」
⑤ 計画修正・次の行動の確認(5分)
「次回までに、具体的に何を実行する?」
「いつから始める?」
「次回は、何を確認できれば前進したと言えそう?」
「今日の話を振り返って、ほかに伝えておきたいことはある?」
このスクリプトは、あくまでも基本形です。毎回すべての質問を使う必要はありません。会話の流れや本人の状況に合わせて質問を選び、必要な話を深めていきましょう。
また、面談で話した内容や次回までの行動は、簡単な記録に残しておくことをおすすめします。記録があれば、次回の面談で前回の内容を確認でき、継続的な支援につながります。
複数店舗を展開する企業では、面談の仕組みを統一する
店舗数が増えると、店長ごとに面談の頻度や内容、スタッフへの接し方が異なるという問題が起こりやすくなります。
ある店舗では定期的に面談を実施しているのに、別の店舗ではほとんど行われていない。ある店長はスタッフの意見をよく聞くのに、別の店長は一方的に指示を出している。
このような違いが大きくなると、スタッフの成長機会に差が生まれる可能性があります。
そこで、会社として次のような仕組みを整えることが重要です。
- 面談の目的と実施頻度を決める
- 共通の面談スクリプトや記録シートを用意する
- 目標や成果を確認するための共通指標を設定する
- 店長同士で面談の成功事例や課題を共有する
- エリアマネジャーなどが店長の面談スキルを支援する
特に、面談の目的を「スタッフを管理すること」だけにしないことが大切です。
会社のビジョンや行動指針と、スタッフ個人の成長目標を結びつけることで、日々の仕事が会社の目指す方向とどうつながっているのかを理解しやすくなります。
共通の仕組みを整えたうえで、スタッフ一人ひとりの状況に合わせた対話を行う。それが、多店舗企業における効果的な人材育成につながります。
まとめ:面談は、スタッフが自分で成長する力を育てる時間
飲食店の店長にとって、1on1・面談はスタッフの成長を支え、店舗の成果につなげるための大切な機会です。
効果的な面談を実現するためには、次のポイントを押さえましょう。
- 面談の目的と進行スクリプトを事前に準備する
- 計画の進捗、今期の成果、課題を順番に確認する
- 一方的な説教ではなく、質問を通じて本人の考えを引き出す
- コーチングで解決策を考え、必要に応じて知識や助言を提供する
- 計画を修正し、次回までの具体的な行動を決める
- 面談の内容を記録し、継続的な振り返りにつなげる
面談がうまくいかないとき、店長は「もっと上手に話さなければ」と考えるかもしれません。
しかし、重要なのは、店長が上手に話すことだけではありません。スタッフが自分の状況を理解し、課題を考え、次の行動を自分で決められるようにすることです。
そのためには、事前の準備と、相手の考えを引き出す質問が役立ちます。
まずは次回の面談で、いつもより少し多く質問をしてみてください。そして、スタッフ自身の言葉で次の行動を決めてもらいましょう。
その積み重ねが、指示を待つだけではなく、自ら考えて行動できるスタッフの育成につながっていきます。
店長のコミュニケーション力を高め、主体的に動く組織へ
「面談をしてもスタッフが変わらない」「店長によって育成の質に差がある」「経営者が現場に関わらないと店舗が回らない」——こうした悩みは、面談の進め方だけでなく、店長の経営スキルやコミュニケーション、マインドセットとも関係しています。
ミルラボの「店長成長コーチング」では、経営スキル・コミュニケーション・マインドセットの3つの側面から、店長が経営者目線で店舗を捉え、スタッフの主体性を引き出せるよう支援します。
店長の面談力を高め、スタッフが自ら考え、行動できる店舗づくりを進めたい方は、ぜひ一度ご相談ください。


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