「店長会議を開いているのに、誰も意見を言わない」
「経営者が話して、店長が聞くだけになっている」
「何か問題はありますか?と聞いても、みんな『特にありません』と答える」
飲食店を複数店舗運営していると、こうした会議の悩みが出てくることがあります。
経営者としては、
「もっと自分から考えてほしい」
「店長なのだから、意見を出してほしい」
と思うかもしれません。
しかし、意見が出ない原因は、本人の積極性だけとは限りません。
もしかすると、本音を言える心理的安全性が不足しているのかもしれません。
また、そもそも会議の目的が曖昧になっている可能性もあります。
「報告するための会議」なのか、
「問題を発見するための会議」なのか、
「本当の課題を見つけ、解決策を考えるための会議」なのか。
目的によって、必要な発言は変わります。
会議で意見を出してほしいのであれば、まず会社側が「意見を出せる環境」と「意見を出す意味」をつくる必要があります。
会議で意見が出ないことで起きる3つの問題
1.本当の課題が見えなくなる
会議で、
「何か問題はありますか?」
と聞いて、
「特にありません」
と返ってきたとしても、本当に問題がないとは限りません。
現場では、
「新人が育っていない」
「スタッフ同士の関係が悪い」
「店長が疲弊している」
「このルールは現場では使いにくい」
といった問題が起きているかもしれません。
しかし、それを言えない。
すると経営者には、問題が存在しないように見えてしまいます。
これは非常に危険です。
問題がないのではなく、問題が表に出ていないだけかもしれないからです。
2.経営者だけが考える会社になる
会議で経営者ばかりが話していると、店長は次第に、
「社長が決めるもの」
と考えるようになります。
すると、
「自分はどう思うか」
「自分ならどうするか」
を考える機会が減ります。
結果として、店長の経営者視点や当事者意識も育ちにくくなります。
3.会議をしているのに改善が進まない
意見が出ない会議では、会社側から伝達事項を伝えて終了、ということも増えます。
しかし、それでは会議が単なる連絡の場になってしまいます。
本来、会議は現場で起きていることを持ち寄り、会社として考えるための重要な機会です。
せっかく複数の店長が集まっているのに、一人ひとりの経験や知恵を活用できなければ、大きな機会損失です。
理想は「本当の課題と解決策が出てくる会議」
会議で全員がたくさん話せばよいわけではありません。
重要なのは、会議の目的に必要な意見が出ることです。
例えば、
「各店舗の売上を報告する」
ことが目的なら、必要なのは正確な数字です。
一方で、
「店舗の利益を改善する」
ことが目的なら、数字を確認するだけでは足りません。
必要なのは、
①事実
②本当の課題
③解決策
です。
例えば、
「新人の定着率が下がっています」
だけでは、事実の共有です。
そこから、
「なぜ定着率が下がっているのか?」
「採用の問題なのか?」
「教育の問題なのか?」
「店長とのコミュニケーションなのか?」
と掘り下げる。
そして、
「では、何を変えるのか?」
まで考える。
この流れができて、初めて会議が改善につながります。
会議で意見が出ない会社の主な課題3つ
1.心理的安全性が不足している
「こんなことを言ったら怒られる」
「社長の考えと違ったら否定される」
「問題を報告したら、自分の管理能力を疑われる」
このように感じていると、人は本音を言いにくくなります。
特に店長会議では、店長が「自分の店舗の問題」を話すことに抵抗を感じる場合があります。
「うちの店では、スタッフが言うことを聞いてくれません」
と発言すれば、
「それは店長のマネジメント不足では?」
と思われるかもしれません。
そう考えれば、黙っていたほうが安全です。
つまり、意見が出ないのは「意見がない」のではなく、意見を言うリスクが高い場合があります。
2.会議の目的が明確になっていない
「店長会議だから集まる」
だけでは、参加者は何を考えて発言すればいいのか分かりません。
会議の冒頭で、
「今日は何を決めるのか」
「何を解決するのか」
「どんな状態になれば会議終了なのか」
を明確にすることが重要です。
例えば、
「今日は各店舗の問題を一つずつ出して、会社として優先的に解決する課題を3つ決めます」
と伝えれば、参加者は「問題を持ってくる場」だと理解できます。
3.事実と課題と解決策が混ざっている
会議で、
「最近、スタッフのモチベーションが低いです」
という発言が出たとします。
これをそのまま、
「じゃあ、モチベーションを上げましょう」
としてはいけません。
まず、それは本当に事実なのかを確認します。
例えば、
「具体的にどんな行動が増えたのか?」
「以前と比べて何が変わったのか?」
「何人くらいに起きているのか?」
などです。
そのうえで、本当の課題を考えます。
そして最後に解決策を考える。
この順番を守ることで、表面的な対策を減らすことができます。
店長自身にも3つの課題があります
1.「正解を言わなければ」と考えている
会議で発言できない店長の中には、
「間違ったことを言ったら恥ずかしい」
「社長が求めている答えを言わなければ」
と考えている人もいます。
しかし、会議で必要なのは、最初から正解を出すことではありません。
むしろ、
「私はこう感じています」
「現場ではこういうことが起きています」
という情報を出すことが重要です。
そこから参加者で考えればよいのです。
2.問題を「自分の店舗だけの問題」と考えている
店長は自店舗の責任者です。
そのため、問題を自分だけで抱えてしまうことがあります。
しかし、ある店舗で起きている問題が、他店舗でも起きる可能性があります。
一つの店舗の失敗を会社全体の学びに変えることができれば、それは貴重な情報です。
「失敗した店長」ではなく、
「会社に重要な情報を提供した店長」
と捉える文化が必要です。
3.解決策まで自分一人で考えようとしている
「問題を報告するなら、解決策まで持っていかなければならない」
と考えて、発言を控えてしまうケースもあります。
しかし、会議の目的が課題解決なら、一人で答えを出す必要はありません。
事実を持ち寄り、本当の課題を一緒に考え、解決策を出す。
それこそが会議の価値です。
会議で意見が出るようにする5つの方法
① 会議の目的を一文で決める
まず、
「この会議は何のためにあるのか?」
を明確にします。
例えば、
「各店舗の問題を共有する」
ではなく、
「各店舗の問題から、会社全体で解決すべき課題を見つける」
とします。
目的が変われば、会議で求める発言も変わります。
② 「①事実→②本当の課題→③解決策」の順番で話す
会議では、この3段階を意識します。
①事実
何が起きているのか。
②本当の課題
なぜ、それが問題になっているのか。
③解決策
何を変えれば改善できるのか。
例えば、
「新人が辞めています」
だけで終わらせません。
「3か月以内の退職が増えている」
↓
「教育担当が日によって変わり、教える内容に差がある」
↓
「新人教育の担当者と教育項目を固定する」
というように進めます。
③ 経営者がすぐに評価・否定しない
店長が意見を出した瞬間に、
「それは違う」
「前にもやったけどダメだった」
「そんなの無理だよ」
と言ってしまうと、次から意見は出にくくなります。
もちろん、間違いをそのままにする必要はありません。
まず、
「なぜそう考えたの?」
「現場では何が起きているの?」
と聞く。
そのうえで一緒に考えます。
心理的安全性とは、何を言っても許されることではありません。
意見を言っても、頭ごなしに否定されないという安心感
です。
④ 全員が話す仕組みをつくる
「何か意見ありますか?」
と聞くだけでは、発言する人が固定されます。
そこで、
- 最初に全員が1つ問題を出す
- 事前に課題を書いてもらう
- 一人ずつ順番に意見を聞く
- 小グループで話してから全体共有する
など、発言の機会そのものを仕組みにします。
「発言してください」ではなく、発言する構造をつくることがポイントです。
⑤ 会議で出た意見を実際に活用する
意見を出しても何も変わらなければ、
「言っても無駄」
となります。
逆に、出した意見が実際の改善につながれば、
「言ってみよう」
という空気が生まれます。
だからこそ、
意見を出す
↓
検討する
↓
実行する
↓
結果を確認する
↓
次の改善につなげる
という流れをつくることが大切です。
事例:発言がほとんどなかった店長会議を変えた会社
ある飲食企業では、毎月店長会議を開催していました。
しかし、会議では社長と幹部が話す時間が長く、店長は質問されたときだけ答える状態でした。
社長が、
「何か問題ある?」
と聞いても、
「特にありません」
という回答がほとんどです。
ところが、店舗を個別に訪問すると、いくつもの問題が出てきました。
そこで、会議の目的を変更しました。
「報告する会議」から、
「店舗の事実から、本当の課題を見つけ、解決策を考える会議」
へ変えたのです。
会議では、まず各店舗から事実を一つ出します。
次に、
「それは本当の問題なのか?」
「その問題の原因は何なのか?」
を全員で考えます。
そして最後に、
「では、何をやってみるか?」
を決めます。
さらに、社長自身も意見をすぐ評価しないようにしました。
すると、最初は小さな発言だったものが、
「実はうちの店舗でも似たことがあります」
「それなら、こうしてみたらどうでしょう?」
という発言につながるようになりました。
重要なのは、店長に「もっと積極的になって」と言ったことではありません。
意見を出す意味と、安心して意見を出せる仕組みをつくったことです。
最後に
会議で意見が出ないと、
「店長に当事者意識がない」
「もっと積極的に発言してほしい」
と考えてしまいがちです。
しかし、意見が出ない原因を店長個人だけに求めるのは危険です。
そこには、
- 心理的安全性の不足
- 会議の目的の曖昧さ
- 発言する仕組みの不足
- 意見を活用する仕組みの不足
といった組織側の課題があるかもしれません。
まずは、会議の目的を明確にしてみましょう。
そして、単なる報告ではなく、
①事実
②本当の課題
③解決策
という順番で考える。
この流れができれば、会議は「話を聞く場所」から「組織が学び、改善する場所」へ変わっていきます。
そして、店長から出た意見が実際の改善につながる経験が増えるほど、「言ってもいい」「言ってみよう」という心理的安全性も少しずつ育っていきます。
もし「会議で意見が出ない」「店長が本音を話してくれない」と感じているなら、店長の意識を変える前に、意見が出る会議の仕組みになっているかを一度見直してみてはいかがでしょうか。



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