「うちの店は、なかなか改善が進まない」
飲食店の経営者や店長から、そんな相談を受けることがあります。
問題がないわけではありません。
「新人がなかなか育たない」
「忙しい時間帯にスタッフが足りない」
「料理の提供が遅れる」
「売上をもっと伸ばしたい」
「店長によって店舗運営に差がある」
改善したいことは、たくさんあります。
ところが、いざ改善しようとすると、
「忙しいから難しい」
「人が足りないからできない」
「今のやり方を変えるのは大変」
「お客様に迷惑がかかるかもしれない」
と、できない理由が次々と出てきます。
もちろん、慎重に考えることは大切です。
しかし、できない理由を並べることが当たり前になると、組織には改善文化が育ちません。
改善文化をつくるためには、何でも大胆に変える必要はありません。
まずは、改善が必要なことをすべて「まな板の上」に出し、その中から取り組めるものを見つけて、実際にやってみる。
この繰り返しが、組織のリスクテイクの習慣と、改善の「目利き」を育てていきます。
改善文化がないことで起こる3つの問題
1.問題が分かっていても放置される
改善文化がない組織では、「問題を見つけること」と「問題を解決すること」がつながっていません。
「最近、新人がなかなか仕事を覚えない」
と分かっていても、
「飲食業界だから仕方ない」
「最近の若い人は……」
「忙しいから教育する時間がない」
と話して終わってしまいます。
問題を認識しているだけでは、店舗は変わりません。
改善には、問題を具体的な行動に変換するプロセスが必要です。
2.「失敗しないこと」が優先される
改善には、ある程度のリスクが伴います。
新しい教育方法を試せば、今までより時間がかかるかもしれません。
新しい販促をすれば、費用を使っても成果が出ないかもしれません。
業務のやり方を変えれば、一時的に現場が混乱するかもしれません。
だからといって、何もしなければ現状も変わりません。
リスクをゼロにしようとすると、結果としてリスクテイク不足になり、改善の機会そのものが減ってしまいます。
3.改善する人だけが疲弊する
改善文化がない会社では、経営者や一部の店長だけが問題を抱えてしまうことがあります。
「結局、社長がやらないと進まない」
「自分が言わないと誰も動かない」
という状態です。
これでは、改善活動が個人の頑張りに依存してしまいます。
組織として改善するためには、「改善しよう」と言う人を増やすだけでなく、改善を進めるための共通の手順を持つことが重要です。
理想は「問題を見つけたら、改善を考える」組織
改善文化がある店舗では、問題が起きたときの反応が違います。
「誰が悪かったのか」
ではなく、
「何が起きたのか?」
「これは改善したほうがいいのか?」
「改善するとしたら、何からやるか?」
と考えます。
そして、すべてを一気に変えようとはしません。
改善が必要なことをいったん全部出し、その中から優先順位をつけ、やれそうなことから始めます。
重要なのは、
「全部やる」ことではなく、「全部出してから選ぶ」ことです。
この順番を組織の習慣にすると、改善の質もスピードも変わってきます。
会社組織にある3つの課題
1.できない理由から考えてしまう
「これを改善できないか?」
と聞いたときに、
「人がいない」
「予算がない」
「時間がない」
「現場が忙しい」
という答えが最初に出てくる。
もちろん、これらは重要な制約条件です。
しかし、最初から「できない理由」を考えると、それ以上のアイデアが出てこなくなります。
まずは、
「もし改善するとしたら、何ができるか?」
を考える。
その後で、人・時間・お金などの制約を考えればよいのです。
2.改善すべきことが整理されていない
改善テーマが、
「人材育成」
「売上アップ」
「業務効率化」
のように大きすぎると、具体的な行動につながりません。
例えば「人材育成」なら、
- 新人が初日の仕事を覚えられない
- 教える人によって内容が違う
- 店長候補に仕事を任せられない
- 店長がスタッフの成長を確認していない
など、具体的な問題まで分解します。
まずは、改善が必要なことをすべて出す。
これが最初のステップです。
3.優先順位をつけず、思いついたものから動いてしまう
改善意欲が高い会社でも、別の問題があります。
「あれもやろう」
「これもやろう」
と施策が増え、結局どれも続かないケースです。
改善には優先順位が必要です。
「重要度が高いか」
「緊急性があるか」
「実行できそうか」
「実施した場合の効果は大きいか」
などの観点から整理すると、取り組むべきテーマが見えてきます。
店長・リーダー自身が抱えやすい3つの課題
1.改善することより、現状を維持することを選ぶ
店長は日々の営業に追われています。
そのため、
「今のやり方で何とか回っているから、このままでいい」
となりやすいものです。
しかし、今の方法で何とか回っていることと、良い状態であることは別です。
小さな不具合を放置すると、スタッフの負担や離職、顧客満足度の低下など、大きな問題につながることがあります。
2.「できない理由」を自分で作ってしまう
店長自身が、
「人がいないから無理」
「忙しいから無理」
「うちの店では難しい」
と考えてしまうことがあります。
ここで大切なのは、「本当にできないのか?」を考えることです。
例えば、
「新人教育に1時間かけるのは無理」
なら、
「15分ならできないか?」
「ピーク前の10分ならどうか?」
「教育内容を動画にできないか?」
と考えてみる。
制約条件があることと、改善できないことは同じではありません。
3.改善の成否を一度で判断する
一度試してうまくいかなかったから、
「この方法はダメだった」
と終わらせてしまう。
これも改善文化を阻む要因です。
改善は、実験に近いものです。
やってみて、結果を見て、修正する。
最初から正解を当てる必要はありません。
むしろ、小さく試して学習することが重要です。
改善文化をつくる「4つのステップ」
では、実際にどのように改善を進めればよいのでしょうか。
STEP1.改善が必要なことを全部出す
まず、改善が必要だと思っていることを、いったん全部出します。
ここでは優先順位を考えません。
例えば、
- 新人教育
- 店舗の清掃
- 発注ミス
- 提供時間
- シフト作成
- 店長会議
- スタッフ間のコミュニケーション
- 売上管理
- クレーム対応
などです。
大切なのは、「これは無理だろう」と最初から捨てないことです。
まず、まな板の上に全部出します。
STEP2.分類する
次に、出てきたテーマを分類します。
例えば、
「人」
「業務」
「売上」
「品質」
「教育」
「仕組み」
などです。
分類すると、同じ原因から複数の問題が発生していることにも気づきやすくなります。
例えば、
「新人が育たない」
「店長の教育負担が大きい」
「ベテランに仕事が集中する」
という3つの問題が、実は「教育の仕組みがない」という一つの課題につながっているかもしれません。
STEP3.優先順位をつける
次に、「何から手をつけるか」を決めます。
おすすめは、
重要度 × 効果 × 実行しやすさ
で考えることです。
特に最初は、「効果がありそうで、比較的やれそうなこと」を選びます。
大きな改革から始める必要はありません。
小さくても、
「これは変えられた」
という経験を組織に作ることが大切です。
STEP4.具体策を決めて、やってみる
最後に、具体的な行動にします。
「新人教育を改善する」
ではなく、
「新人の初週に覚える業務を10個に整理し、チェックリストを作る」
まで具体化します。
そして実際にやってみる。
結果が良ければ続ける。
うまくいかなければ修正する。
これを繰り返します。
「やれそうなこと」から始めることに意味がある
改善活動では、「もっとも重要な問題から取り組むべきだ」と考えがちです。
もちろん重要度は大切です。
しかし、改善文化がまだない組織では、やれそうなことから始めることにも大きな意味があります。
小さな改善を実行する。
結果が出る。
「やれば変わる」という経験が生まれる。
すると、次の改善にも挑戦しやすくなります。
これが、リスクテイクの習慣につながります。
さらに、何度も改善を経験していると、
「これは試してみる価値がある」
「これは今はやらなくていい」
「この問題は大きく変える必要がある」
「これは小さな改善で十分」
という判断もできるようになります。
つまり、改善を繰り返すことで、リスクを取る力だけでなく、リスクの大きさを見極める目利きも育っていくのです。
事例:できない理由を並べていた店長会議が変わった
ある飲食企業では、店長会議で改善テーマを話し合っていました。
しかし、
「それは人が足りないから難しい」
「予算がない」
「現場が忙しい」
「他店ではできても、うちでは無理」
という話が多く、なかなか改善が進みませんでした。
そこで、会議の進め方を変更しました。
まず、各店から「改善したいこと」をすべて出す。
次に、それを「人」「業務」「教育」「売上」などに分類する。
その後、
「効果が大きいか」
「すぐに試せるか」
という視点で優先順位をつける。
最後に、具体的な行動を一つ決める。
例えば、新人教育について、
「教育を強化する」
ではなく、
「新人が初日に覚える業務を5つに絞り、写真付きのチェックリストを作る」
というところまで落とし込みました。
最初から大きな改革をしたわけではありません。
しかし、小さな改善が一つ、また一つと積み重なっていきました。
そして次第に店長から、
「これなら試せそうです」
「この店でやってみたいです」
「前回の方法を少し変えてみました」
という発言が増えていきました。
変わったのは、店長の能力だけではありません。
「問題を出す→整理する→選ぶ→やってみる」という改善の型が、組織の習慣になったことが大きかったのです。
最後に
改善文化は、「改善意識を持ちましょう」と言うだけでは生まれません。
まずは、改善が必要なことを全部出す。
そして、分類する。
優先順位をつける。
具体策に落とし込む。
そして、やってみる。
この流れを繰り返すことが重要です。
特に気をつけたいのは、最初から「できない理由」を並べないことです。
もちろん、人・時間・お金などの制約はあります。
しかし、それを考えるのは、改善したいことを出した後でも遅くありません。
やれそうなことから始めれば、小さな成功体験が生まれます。
その経験が、「次もやってみよう」というリスクテイクの習慣につながります。
そして、改善を繰り返すうちに、
「これは試す価値がある」
「これは今やるべきではない」
という判断力も磨かれていきます。
改善文化とは、失敗しない組織をつくることではありません。
小さく挑戦し、結果から学び、次の改善につなげられる組織をつくることです。
もし「うちの店は改善したいことが多すぎて、何から手をつければいいか分からない」という状態なら、まずは紙に全部書き出してみてください。
解決策を考えるのは、その後です。
まずは、問題を全部まな板の上に乗せる。
そこから、改善文化づくりが始まります。



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