KPIを決めたのに続かない飲食店へ。KPI運用を定着させる3つの仕組

KPI(仕組化)

KPIを設定しただけで、店舗の数字は変わらない

「今月からKPIを管理しよう」

そう決めて、売上、客数、客単価、原価率、リピート率などの数字を一覧にする。

ところが、1か月、2か月と経つうちに、

「そういえば、最近KPIを見ていない」
「数字は集計しているけど、何も改善できていない」
「店長に確認してもらうことになっていたけど、忙しくてできていない」

という状態になる。

これは、店長の意識が低いからとは限りません。

むしろ問題は、KPIを確認し、数字から課題を発見し、改善策を考える時間が仕組みとして設定されていないことにあります。

飲食店では、営業中に次々と問題が発生します。

スタッフの欠勤、仕込み、クレーム、予約対応、発注、採用、新人教育……。

その中で「時間が空いたらKPIを確認しよう」と考えても、ほとんどの場合、その時間はやってきません。

KPI運用を定着させるには、店長の頑張りではなく、確認することそのものを店舗運営のルーティンに組み込むことが重要です。


KPI運用が定着しないことで起こる3つの弊害

1.問題が起きてから対応する「後追い経営」になる

KPIを継続的に確認していれば、

「客数が3週間連続で減っている」
「平日の客単価だけ落ちている」
「人件費率が少しずつ上昇している」

といった変化に早く気づけます。

しかしKPIを見る習慣がなければ、問題が大きくなってから気づくことになります。

「今月、売上がかなり悪い」

と月末に気づいても、できる対策は限られます。

一方で、

「先週から火曜日の客数が落ちている」

と早い段階で分かれば、

「火曜日だけランチの来店数が減っているのでは?」
「雨の日に弱いのでは?」
「近隣競合店でキャンペーンが始まったのでは?」

と原因を考えることができます。

KPIの価値は、数字を記録することではありません。

問題が大きくなる前に、異変を発見することにあります。


2.店長の経験と感覚だけで店舗が運営される

経験豊富な店長ほど、

「最近、お客様が少ない気がする」
「今月は人件費が高そう」
「このスタッフはまだ仕事を任せられない」

など、現場感覚を持っています。

もちろん、これは店長にとって重要な能力です。

しかし、感覚だけでは経営者との認識を合わせることが難しくなります。

「売上が悪いと思います」

ではなく、

「先月と比べて平日の客数が8%減っています。特に18時台が落ちています」

と言えるようになれば、問題の捉え方が変わります。

これは単なる数字の話ではありません。

店長が経営者視点を身につけるための重要なトレーニングでもあります。

店長とは、単に現場を回す人ではありません。

店舗の状態を把握し、問題を発見し、原因を考え、改善を進める役割を担う存在です。

そのためにも、KPIを使って店舗を見る習慣が必要になります。


3.「数字を取ること」が目的になってしまう

KPIシートを作ったものの、

「毎週入力しています」
「グラフも作っています」

という状態で止まってしまうケースがあります。

これではKPI管理とは言いにくいでしょう。

重要なのは、

計測 → 確認 → 課題発見 → 原因検討 → 行動 → 再計測

というサイクルを回すことです。

数字を入力するだけなら、作業です。

数字を見て、

「では、次に何を変えるのか?」

まで考えて初めて、KPIが店舗改善につながります。


KPIが「回り続ける店舗」は、数字を見る時間が決まっている

KPI運用を定着させるために、まず確認してほしいことがあります。

「KPIを確認する時間は、具体的に設定されていますか?」

です。

「毎週確認する」

だけでは不十分です。

例えば、

  • 毎週月曜日の10:00~10:30にKPIを確認
  • 毎週月曜日の10:30~11:00に課題を検討
  • 月末に1か月分の結果を振り返る

というように、カレンダーに入るレベルまで具体化することが重要です。

さらに、

「誰が」
「いつ」
「どの数字を」
「何と比較して」
「何を決めるのか」

まで決めておくと、より運用しやすくなります。

例えば、店舗ごとに次のような30分のルーティンを作ります。

① 5分:KPIを計測する

先週の数字を入力します。

② 10分:数字を確認する

目標、前週、前年同週などと比較します。

③ 10分:課題を1~2個に絞る

数字が悪かった項目をすべて改善しようとしません。

「今、一番インパクトが大きい問題は何か?」

を考えます。

④ 5分:次の行動を決める

「誰が」「いつまでに」「何をするか」を決めます。

これだけでも、KPIは単なる管理表から、店舗改善の道具へ変わっていきます。


会社組織としてKPI運用が定着しない3つの原因

1.KPIを「決めたら終わり」になっている

経営者が、

「各店舗でKPIを設定してください」

と伝えて終わっていないでしょうか。

KPIは設定することよりも、運用することのほうが難しいものです。

何を測るのか。

どの頻度で見るのか。

誰が確認するのか。

悪化したときにどうするのか。

ここまで決めて初めて仕組みになります。


2.KPIを確認する会議・時間が存在しない

「店長が自分で確認してください」

という仕組みも、定着しにくい方法の一つです。

もちろん店長自身が数字を見ることは重要です。

しかし、日々の営業に追われる飲食店では、優先順位の低い仕事は後回しになります。

だからこそ、

KPIを見る時間そのものを業務として確保する

必要があります。

「忙しくなければやる」ではなく、

「毎週○曜日の○時にやる」

です。


3.数字を見た後の「課題検討」がない

KPI会議で、

「売上90万円でした」
「先週より5万円下がっています」

と確認して終了していないでしょうか。

これでは、数字を読み上げているだけです。

大切なのは、

「なぜ下がった?」
「どの要素が影響している?」
「来週何を変える?」
「それによって、どの数字を改善する?」

まで話すことです。

KPIの確認時間と、課題検討の時間をセットにしましょう。


店長自身が抱えやすい3つの課題

1.数字を見ることに苦手意識がある

「数字は経営者が見るもの」

という意識を持っている店長もいます。

しかし、多店舗展開を目指す会社であれば、店長が数字を理解できることは非常に重要です。

難しい財務分析をする必要はありません。

まずは、

「目標に対してどうか」
「先週と比べてどうか」
「なぜ変化したのか」
「何をするのか」

を考えられれば十分です。


2.KPIを自分の仕事として捉えていない

会社から「KPIを入力してください」と言われているだけでは、

「本部に提出する資料」

になってしまいます。

そこで必要なのが、店長 当事者意識です。

「この数字は会社のために見るもの」ではなく、

「この数字を改善することが、自分の店舗を良くすることにつながる」

という認識を持つことです。


3.改善策を考えるところまで一人で抱えてしまう

店長が、

「売上が悪い」

「自分が何とかしなければ」

「でも何をすればいいか分からない」

となってしまうことがあります。

この状態が続けば、店長が孤独になり、数字を見ること自体が嫌になってしまいます。

KPI運用は、店長を追い込むためのものではありません。

店長が店舗の問題を整理し、周囲と一緒に改善するための共通言語として使うことが大切です。


KPI運用を定着させる「仕組み」の作り方

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。

おすすめは、最初から複雑なKPI管理を作らないことです。

STEP1:重要なKPIを絞る

最初から10個、20個と数字を追いかける必要はありません。

例えば、

  • 売上
  • 客数
  • 客単価
  • 人件費率
  • 原価率

など、店舗の目的に合わせて重要なものを数個に絞ります。

そして、

「この数字が悪化すると、店舗経営にどんな問題が起こるのか?」

まで店長と共有します。


STEP2:KPIを確認する時間を固定する

例えば、

毎週月曜日 10:00~10:30

と決めます。

ここで重要なのは、暇な時間を利用するのではなく、最初から予定として確保することです。

営業が忙しくても、採用があっても、別の仕事が入っても、原則として動かさない。

それくらいの優先順位を持たせます。


STEP3:「確認」と「課題検討」をセットにする

KPIを確認するだけで終わらせません。

例えば、

「客数が前週比で減っている」

となったら、

「なぜ?」

を考えます。

曜日別なのか。

時間帯別なのか。

新規客なのか。

リピーターなのか。

天候なのか。

商品なのか。

接客なのか。

そして最後に、

「では、今週何をする?」

を決めます。


STEP4:次回に必ず結果を確認する

ここが非常に重要です。

前回、

「火曜日の客数を増やすため、LINEで既存客へ告知する」

と決めたなら、次回、

「やったか?」
「結果はどうだったか?」

を確認します。

つまり、

KPI → 課題 → 行動 → 結果 → 次のKPI

という循環を作ります。

このサイクルが回り始めると、店長の問題解決能力も少しずつ高まっていきます。


【事例】KPI表はあるのに、店舗改善につながらなかったケース

ある飲食店では、毎週KPIを入力するルールがありました。

売上、客数、客単価、人件費率などをExcelで管理しています。

ところが、店長に聞くと、

「一応入力はしています。でも、入力して終わりですね」

という状態でした。

そこで、KPIそのものを変更するのではなく、運用方法を変更しました。

毎週30分、店長と経営者がKPIを見る時間を固定。

最初の10分で数字を確認し、次の15分で「なぜ?」を考え、最後の5分で次週の行動を一つ決めます。

すると、ある週に「平日の客数低下」が見つかりました。

以前なら、

「最近、平日暇ですね」

で終わっていたところを、曜日・時間帯まで掘り下げました。

すると、特定曜日の17~19時に客数が落ちていることが判明。

店長とスタッフでその時間帯の販促方法を考え、翌週から試しました。

大きな改革をしたわけではありません。

変わったのは、

数字を見る → 問題を考える → 行動する → 次週確認する

という習慣です。

KPI運用が定着すると、店長の仕事も変わります。

「今日は忙しかった」
「今日は暇だった」

という感想から、

「何が起きているのか」
「なぜ起きているのか」
「次に何をするのか」

という経営者視点に近づいていきます。


KPIは「管理する仕組み」ではなく「改善する習慣」

KPI運用が続かないとき、多くの会社は、

「もっと店長に数字を意識してもらおう」
「KPIシートを改善しよう」
「研修をしよう」

と考えます。

もちろん、それらが必要な場合もあります。

しかし、その前に確認してほしいことがあります。

「KPIを計測・管理・課題検討する時間は、本当に設定されているか?」

ということです。

KPIを毎週見る時間がない。

数字を見ても、課題を検討する時間がない。

前回決めた改善策を確認する時間がない。

この状態なら、店長の意識を責めても、なかなか定着しません。

仕組みとは、誰かが頑張らなくても自然に行動できる状態を作ることです。

KPIも同じです。

「ちゃんと見てください」ではなく、

「毎週月曜日の10時に30分、一緒に見る」

というところまで仕組みにする。

そして、

計測 → 管理 → 課題検討 → 行動 → 振り返り

を繰り返す。

これが、KPIを「数字の管理」から「店舗を良くする習慣」へ変えるポイントです。

もし現在、

「KPIは設定しているけれど、店長が活用できていない」
「数字を見ても、改善行動につながらない」
「店長にもっと経営者視点を持ってほしい」

と感じているのであれば、まずはKPIそのものではなく、KPIを確認する時間と、その後に何を話すのかを見直してみてください。

店長育成では、知識を教えるだけでなく、日々の店舗運営の中に「考える習慣」を組み込むことが重要です。

一度、自社の店長会議や店舗ミーティングを振り返り、

「数字を確認する時間」
「課題を考える時間」
「改善策を決める時間」
「前回の行動結果を確認する時間」

が、それぞれ確保されているかを確認してみてください。

そこに、KPI運用を定着させるための大きなヒントがあります。

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