「今年は売上重視。」
「来年は利益重視。」
「その次は採用強化。」
「今年は顧客満足度を上げよう。」
一見すると、その時々の経営環境に合わせて柔軟に方針を変えているように見えます。
もちろん、市場環境の変化に応じて戦略を修正することは必要です。しかし、毎年目標が大きく変わり、そのたびに現場が振り回されているのであれば注意が必要です。
店長やスタッフからすると、「今年はこれを頑張れと言われたのに、来年はもう違うことを言われている」という状態になります。
こうした組織では、頑張りが積み重ならず、成果も組織文化も育ちません。
その原因は、目標そのものではなく、ビジョンと戦略、目標が一本の線でつながっていないことにあります。
今回は、「目標が毎年変わる組織」が抱える問題と、継続して成長できる組織づくりについて考えていきます。
毎年目標が変わることで起こる3つの弊害
① スタッフが目標を信用しなくなる
最初は真剣に取り組んでいたスタッフも、
「どうせ来年には変わる。」
と思うようになります。
すると目標は、自分たちの未来ではなく、会社から与えられるイベントになります。
目標への熱量が下がるのは、スタッフのやる気がないからではありません。
「継続されない目標」を何度も経験した結果なのです。
② 改善活動が積み上がらない
組織の成長は積み重ねです。
例えば、
接客品質を改善する。
教育制度を整える。
仕組みを見直す。
これらは1年で完成するものではありません。
ところが毎年テーマが変われば、途中まで作った仕組みが止まり、新しいテーマへ移ってしまいます。
結果として、
「何も完成していない。」
という状態になりやすくなります。
③ 現場が「何を優先すればよいか」分からなくなる
今日は売上。
明日は利益。
来月はSNS。
来年は採用。
こうなるとスタッフは、
「結局、何が一番大切なの?」
と迷います。
優先順位が見えない組織では、自分で判断することも難しくなります。
結果として、店長への依存が強まり、主体性も育ちません。
理想は「ビジョンは変えず、戦略と目標を進化させる組織」
目標は変えてはいけないわけではありません。
むしろ、状況に応じて見直すことは必要です。
ただし、その土台となるビジョンは簡単に変わるものではありません。
例えば、
「地域で最も信頼される飲食店になる。」
というビジョンがあるとします。
その実現のために、
今年は教育を強化する。
来年はリピート率を改善する。
その次はデジタル活用を進める。
このように戦略や重点施策は変わっても、向かう未来は変わりません。
つまり、
ビジョン → 戦略 → 年間目標 → 日々の行動
という一本の流れができていることが重要なのです。
目標だけが存在するのではなく、「なぜその目標なのか」が説明できる組織は強くなります。
会社組織に潜む3つの課題
① ビジョンと戦略が分離している
最も多いのがこのケースです。
経営計画では立派なビジョンが掲げられていても、現場の目標には反映されていません。
逆に、毎年の目標だけが決まり、
「今年はこれ。」
と現場へ降りてきます。
これでは、目標の意味が伝わりません。
ビジョンが未来を示し、戦略が進み方を決め、目標が現在地を示す。
このつながりが組織には必要です。
② 短期成果だけを評価している
数字は重要です。
しかし、
今月の売上。
今月の利益。
今月の件数。
だけを評価すると、人は短期的な行動を優先します。
本来なら、
教育。
改善活動。
顧客満足。
仕組みづくり。
こうした未来への投資も評価されるべきです。
短期成果だけを追い続けると、長期的な成長は難しくなります。
③ 戦略が共有されていない
店長には説明されている。
経営陣は理解している。
しかしスタッフは知らない。
これでは組織はまとまりません。
戦略とは、「何を優先して成果を出すか」という考え方です。
戦略が共有されていれば、現場でも判断が一致しやすくなります。
店長自身が見直したい3つのポイント
① 「数字」だけを伝えて終わっていないか
「今月は売上○○万円。」
これだけではスタッフは動けません。
なぜその数字なのか。
達成すると店舗はどうなるのか。
お客様にどんな価値を届けたいのか。
そこまで伝えて初めて目標になります。
② 毎年ゼロから目標を考えていないか
目標設定は毎年リセットするものではありません。
昨年の成果。
今年の課題。
未来のビジョン。
これらをつなげながら設定するものです。
積み重ねる発想が重要になります。
③ 目標を「やらされるもの」にしていないか
目標を発表するだけでは、他人事になります。
スタッフ自身が、
「この目標なら挑戦したい。」
「自分も貢献できる。」
と思える状態をつくることが大切です。
そのためには、一緒に考える時間も必要になります。
目標が積み上がる組織をつくるための実践法
① まずビジョンを言語化する
目標より先に、
「どんな店舗を目指すのか。」
を明確にします。
ビジョンがあるから、戦略が決まり、目標が意味を持ちます。
② 戦略を毎年確認する
ビジョンは長期。
戦略は中期。
目標は短期。
この役割を整理しましょう。
例えば、
ビジョン
「地域で最も信頼される店舗」
戦略
「教育力を高め、リピート率を向上させる」
今年の目標
「新人教育プログラムを完成させる」
このようにつながっていれば、毎年の目標が変わっても方向性はぶれません。
③ 目標達成より「積み上がった仕組み」を評価する
売上だけではなく、
改善提案が増えた。
教育時間が確保できた。
マニュアルが整備された。
KPIが見えるようになった。
こうした成果も評価すると、組織は毎年確実に成長していきます。
目標は結果だけではなく、「未来へ残る資産」を増やすためにもあります。
【事例】毎年テーマが変わる店舗から「軸のある組織」へ
ある飲食チェーンでは、毎年スローガンが変わっていました。
ある年は「売上第一」。
翌年は「利益改善」。
さらに翌年は「採用強化」。
現場では、
「今年は何を頑張ればいいんですか?」
という声が増え、スタッフの主体性も低下していました。
そこで経営陣は、まず5年後のビジョンを明文化しました。
「地域で最も信頼される店舗をつくる。」
そして、そのビジョンを実現するための3年間の戦略を策定しました。
教育、リピート率向上、店長育成という優先順位を決め、それぞれの年度目標を設定したのです。
すると、毎年の重点施策は変わっても、「目指している未来」は変わらなくなりました。
店長もスタッフへ「なぜ今年はこの目標なのか」を説明できるようになり、改善活動も前年から自然につながるようになりました。
その結果、売上だけでなく、離職率や顧客満足度も改善し、「今年だけ頑張る組織」から「毎年成長する組織」へと変化していきました。
最後に
目標は、毎年変わること自体が問題なのではありません。
問題なのは、その目標がどこへ向かっているのかが見えないことです。
組織には、一貫した流れが必要です。
ビジョンが未来を示す。
戦略が進む道筋を決める。
目標が今年やるべきことを明確にする。
この3つがつながって初めて、日々の行動に意味が生まれます。
もし毎年目標が変わるたびに現場が混乱しているのであれば、一度立ち止まって「ビジョンから目標までが一本の線でつながっているか」を確認してみてください。
店長の役割は、その一本の線をスタッフへ伝え、一人ひとりの日々の仕事を未来につなげることです。
目先の数字だけではなく、未来へ積み上がる組織づくりを意識したとき、店舗は一時的な成果ではなく、持続的に成長できる強い組織へと変わっていくでしょう。


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