「また同じトラブルが起きた……」
飲食店を経営していると、そんな場面に遭遇することがあります。
異物混入。
オーダーミス。
料理の提供漏れ。
レジの間違い。
清掃漏れ。
発注ミス。
新人への伝達漏れ。
一度なら、誰にでもミスはあります。
しかし、同じようなトラブルが何度も繰り返されるのであれば、個人の注意力だけではなく、トラブルを再発させない仕組みそのものを見直す必要があります。
ところが、トラブルが起きたときに、
「次から気をつけよう」
「必ず確認するようにしよう」
「チェックをもう一回増やそう」
「店長が最後に確認しよう」
という対応だけで終わっていないでしょうか。
もちろん、こうした対応が必要なケースもあります。
ただし、原因を十分に考えないままルールやチェックだけを追加すると、現場の仕事がどんどん複雑になっていきます。
チェック項目が増える。
確認作業が増える。
書類が増える。
店長の管理業務が増える。
それなのに、しばらくするとまた同じトラブルが起きる。
これでは、再発防止どころか、現場が仕事をしづらくなるだけです。
大切なのは、トラブルが起きたときに表面的な対策で終わらせず、原因を深掘りし、改善計画を立て、着実に実行することです。
今回は、飲食店でトラブルが繰り返される原因と、再発防止を仕組み化する方法について考えてみましょう。
トラブルが繰り返されることで起こる3つの問題
1.現場が「またか」と慣れてしまう
同じトラブルが何度も起きると、最初は大きな問題だったものが、次第に「よくあること」になってしまいます。
「またオーダーミスか」
「この時間帯は仕方ない」
「新人だからしょうがない」
そんな空気が生まれると、問題を解決しようとする力が弱くなります。
本来なら、一つひとつのトラブルから仕組みを改善していくべきところが、トラブルを受け入れる文化になってしまいます。
2.店長やベテランスタッフの負担が増える
トラブルが繰り返されると、店長やベテランスタッフがフォローすることになります。
「自分が確認しておけばいい」
「新人には任せられない」
と考え、店長が最終確認をするようになる。
最初はこれで問題が減るかもしれません。
しかし、店長がいないと問題が起きる状態になれば、店舗は人に依存しています。
多店舗展開を目指す会社にとっては、大きな課題になります。
3.対策を重ねるほど仕事が複雑になる
トラブルが起きるたびに、
「チェックを追加する」
「承認を追加する」
「確認者を増やす」
という対策をしていくと、業務はどんどん複雑になります。
例えば、オーダーミスが起きたから、
「オーダーを取った人が確認」
↓
「キッチンが確認」
↓
「提供前にもう一度確認」
とチェックを増やしていく。
確かにミスは減るかもしれません。
しかし、その分だけ時間もかかります。
本当に必要なのは「確認を増やすこと」なのか、それとも「そもそもミスが起きにくい業務設計にすること」なのか。
ここを考える必要があります。
理想は「トラブルが起きたら、仕組みが一段階強くなる」状態
理想的な組織では、トラブルが起きるたびに、
「誰が悪かったのか」
だけを考えるのではありません。
「なぜ、このトラブルが起きたのか」
「なぜ、途中で防げなかったのか」
「同じ条件なら、また起きるのではないか」
と考えます。
そして、原因に合わせて仕組みを改善します。
例えば、オーダーミスが起きたとしても、
「スタッフが聞き間違えた」
だけで終わらせません。
なぜ聞き間違えたのか。
メニュー名が似ていたのか。
店内が騒がしかったのか。
ハンディの操作が分かりにくかったのか。
新人への教育が不十分だったのか。
注文方法そのものに問題があるのか。
原因によって、改善策は変わります。
つまり、
トラブル → 原因分析 → 改善計画 → 実行 → 効果確認
という流れを仕組みにすることが重要です。
会社組織側にある3つの課題
1.トラブルが起きたときの原因分析が浅い
「○○さんの確認不足でした」
で終わっていないでしょうか。
もちろん本人の確認不足が直接的な原因の場合もあります。
しかし、「確認不足」という言葉だけでは、根本原因が分かりません。
例えば、
「なぜ確認できなかったのか?」
と考えてみます。
忙しくて確認する時間がなかった。
では、
「なぜ忙しくなると確認できないのか?」
確認方法が複雑だった。
では、
「なぜ複雑な確認方法になっているのか?」
というように、原因を一段ずつ掘り下げていきます。
表面的な原因で止めないことが重要です。
2.再発防止策が「ルール追加」になっている
トラブルが起きるたびに、
「確認を徹底する」
「チェックを追加する」
「注意喚起する」
という対応になっていないでしょうか。
これらは簡単にできるため、再発防止策として選ばれやすい方法です。
しかし、根本原因が業務設計や教育不足にあるなら、チェックを増やしても問題は解決しません。
むしろ、現場に余計な仕事を増やしてしまいます。
3.改善計画がない
「今後気をつけます」
だけでは、改善活動とは言えません。
必要なのは、
- 何を変えるのか
- 誰が担当するのか
- いつまでに実施するのか
- どの状態になれば改善したと言えるのか
- いつ効果を確認するのか
まで決めることです。
再発防止は「気をつける」ではなく、計画して実行する仕事として扱う必要があります。
店長自身が抱えやすい3つの課題
1.早く解決しようとしてしまう
トラブルが起きると、店長としてはすぐに対応しなければなりません。
そのため、
「次から気をつけて」
「ここをチェックして」
と、その場でできる対策を取ります。
緊急対応としては必要です。
ただし、営業が落ち着いたら、改めて原因を分析する時間を取ることが重要です。
緊急対応と再発防止を分ける。
これがポイントです。
2.「本人の注意」で解決しようとする
ミスが起きると、
「もっと注意して」
と言いたくなります。
しかし、人間が仕事をする以上、注意力には限界があります。
優秀なスタッフでもミスはします。
だからこそ、
「注意しなくてもミスが起きにくい仕組み」
を作ることが重要です。
例えば、入力項目を分かりやすくする、作業手順を変える、業務を分解するなど、人の注意力に頼らない方法を考えます。
3.改善したかどうかを確認していない
再発防止策を実施したら、
「これで大丈夫」
と終わってしまうことがあります。
しかし、本当に大切なのは、その後です。
トラブルの発生件数は減ったのか。
同じ原因のトラブルは起きていないのか。
現場の負担は増えていないか。
別の問題が発生していないか。
これらを確認して初めて、改善策の効果が判断できます。
再発防止を仕組みにする5つのステップ
STEP1.まず事実を整理する
トラブルが起きたら、最初に感情や推測ではなく事実を整理します。
例えば、
- いつ起きたのか
- どこで起きたのか
- 誰が担当していたのか
- 何が起きたのか
- どのような状況だったのか
- どの段階で問題が発生したのか
を確認します。
「新人がミスした」ではなく、
「ピークタイムの12時15分、ホール担当が注文を入力する際に商品を取り違えた」
というところまで具体化します。
STEP2.原因を深掘りする
次に、
「なぜ起きたのか?」
を掘り下げます。
例えば、
「商品を間違えた」
↓
「メニュー名を聞き間違えた」
↓
「似た商品名だった」
↓
「注文時に確認するルールがなかった」
↓
「新人が迷いやすい商品について教育されていなかった」
というように、原因を掘り下げます。
ここで重要なのは、「誰が悪いか」ではなく、**「なぜその行動が起きたのか」**を見ることです。
STEP3.原因に合った対策を考える
原因が分かったら、対策を考えます。
例えば、
「新人教育が不足していた」
なら、教育プログラムを改善する。
「メニューが分かりにくい」
なら、メニュー表やハンディの表示を改善する。
「ピークタイムに業務が集中していた」
なら、スタッフ配置や業務分担を見直す。
このように、原因と対策をつなげます。
「とりあえずチェックを増やす」から卒業することがポイントです。
STEP4.改善計画を作る
対策が決まったら、実行計画にします。
例えば、
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 問題 | オーダーミスが月5件発生 |
| 原因 | 新人が似た商品名を区別できていない |
| 対策 | 商品確認の教育とテストを追加 |
| 担当 | 店長 |
| 期限 | 10月15日 |
| 効果確認 | 10月末に発生件数を確認 |
このようにすると、「やろう」で終わらず、実行を管理できます。
STEP5.効果を確認し、必要なら修正する
最後に、改善策を実施した後の結果を確認します。
例えば、
改善前:月5件
↓
改善策実施
↓
翌月:月2件
となれば、一定の効果があったと判断できます。
一方、
改善前:月5件
↓
改善策実施
↓
翌月:月5件
なら、別の原因を考える必要があります。
ここで大切なのは、「対策を実施したか」ではなく、**「問題が改善されたか」**を見ることです。
事例:チェック項目を増やしてもミスが減らなかった店舗
ある飲食店では、オーダーミスが繰り返し発生していました。
最初の対策として、
「オーダーを取ったら必ず復唱する」
というルールを導入しました。
しかし、しばらくすると再びミスが発生。
そこで、
「提供前にも確認する」
というチェックを追加しました。
それでもミスはなくなりません。
さらに確認項目を増やそうとしたところ、店長が一度立ち止まって原因を調べることにしました。
過去のミスを確認すると、特定の商品でミスが集中していることが分かりました。
原因を調べると、商品名が似ているだけでなく、新人がその違いを理解するための教育が十分ではありませんでした。
そこで、
- 新人研修で類似商品の違いを説明する
- 写真付きの一覧表を作る
- 実際の注文を想定した練習を行う
- 一定期間、発生件数を測定する
という改善計画を実施しました。
その結果、オーダーミスが徐々に減少。
さらに、単純にチェック項目を増やすよりも、現場の作業負担を増やさずに問題を改善することができました。
この事例で重要なのは、
「ミスをした人にもっと注意させる」のではなく、「なぜミスが起きるのか」を掘り下げたことです。
最後に
トラブルが繰り返される店舗では、
「スタッフが気をつければいい」
「店長がもっと確認すればいい」
という対応になりがちです。
しかし、それでは人に依存した状態から抜け出せません。
また、トラブルが起きるたびに、
「チェックを増やす」
「ルールを増やす」
「確認者を増やす」
という対応を続けると、現場はどんどん仕事がしづらくなります。
大切なのは、安易に再発防止策を追加するのではなく、原因を深掘りすることです。
そして、
事実を整理する
↓
原因を深掘りする
↓
原因に合った対策を考える
↓
改善計画を作る
↓
実行する
↓
効果を確認する
という流れを仕組みにします。
再発防止の目的は、「ルールを増やすこと」ではありません。
同じ問題が起きにくくなり、しかも現場が今までより仕事をしやすくなることです。
飲食店の仕組化を考えるとき、マニュアルやチェックリストを増やすことだけが仕組化ではありません。
トラブルが起きたときに、その経験を組織の学びに変え、次の改善につなげられる状態をつくる。
それも重要な仕組化です。
もし「同じトラブルが何度も起きている」「対策しているのに改善しない」という状態なら、まずは最近起きたトラブルを一つ取り上げてみてください。
そして、
「私たちは、表面的な原因で止まっていないか?」
と問い直してみましょう。
本当の原因が見つかれば、必要以上に現場の仕事を増やさず、着実に改善できる方法が見えてくるはずです。



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