飲食店では、店長会議や社員ミーティングなどで、さまざまなことが話し合われます。
「新人教育を見直そう」
「クレームを減らそう」
「客単価を上げよう」
「清掃を徹底しよう」
「人手不足だから採用活動を強化しよう」
会議の場では、参加者も納得して「やりましょう」と決まる。
ところが、数週間後に確認してみると、
「結局、やっていませんでした」
「忙しくて後回しになりました」
「店長には伝えたんですが……」
という状態になっている。
このようなことが何度も続くと、経営者としては「店長の実行力が低い」「社員の意識が足りない」と考えたくなるかもしれません。
しかし、実は問題は人ではなく、「決めたことを実行するための仕組み」がないことにある場合があります。
会議で決めることと、現場で実行されることの間には、大きなギャップがあります。
今回は、飲食店で「会議で決まったことが実行されない」原因と、その改善方法について考えてみましょう。
「決まったのに動かない」が続くことで起こる3つの問題
1.会議そのものが形骸化する
会議で何かを決めても実行されない状態が続くと、次第に社員や店長は、
「どうせまた決めるだけで終わる」
「前も決めたけど、結局やらなかった」
「そこまで本気でやらなくても大丈夫」
と感じるようになります。
すると、会議で発言すること自体が目的になり、実行につながらなくなります。
会議の回数を増やしても、成果は上がりません。
2.改善のスピードが落ちる
飲食店では、問題を発見したら早く改善することが重要です。
しかし、会議で決まったことが実行されなければ、同じ問題が何度も繰り返されます。
例えば、
「新人が入ってもすぐ辞めてしまう」
という問題について会議をして、
「新人教育の担当者を決めよう」
と決めたとします。
ところが担当者を決めただけで、実際の教育内容や実施日まで決めていなければ、結局何も変わらないかもしれません。
問題を話し合っているのに、問題が解決されない。
これが続けば、会社全体の改善スピードは確実に落ちていきます。
3.「やらなくてもいい」が組織文化になる
これは特に注意したいポイントです。
一度決めたことが実行されなくても、誰も確認しない。
実行されなくても、特に問題にならない。
それでも会社が普通に回っている。
この状態が続くと、
「決めたことは、必ずやらなくてもいい」
という認識が組織に広がってしまいます。
最初は一つの改善施策だけだったとしても、やがて、
「前回の会議でも決まったけど、やってないよね」
ということが当たり前になります。
これは単なる実行力の問題ではありません。
会社として非常に大きなリスクです。
理想は「会議で決まる」ではなく「現場が変わる」
会議の目的は、たくさんのことを決めることではありません。
本来の目的は、決めたことによって現場が変わり、結果が改善されることです。
例えば、
「新人教育を強化する」
だけでは、まだ実行できません。
これを、
「10月から、新人が入社した初日に店長が30分のオリエンテーションを行う」
まで具体化すると、実行できるレベルに近づきます。
さらに、
「10月から毎週月曜日に、店長が新人の習得状況をチェックリストで確認し、金曜日に教育担当者が進捗を報告する」
となれば、誰が・いつ・何をするのかが明確になります。
つまり、会議で必要なのは「決定」だけではありません。
実行できるアクションまで落とし込むことが重要なのです。
会社組織側にある3つの課題
1.管理する仕組みがない
最も多いのが「決めた後の管理不足」です。
会議では、
「○○をやる」
と決める。
しかし、その後、
- 誰がやるのか
- いつまでにやるのか
- どこまでできたら完了なのか
- 次回いつ確認するのか
が管理されていない。
これでは、実行されないのも無理はありません。
特に多店舗展開をしている会社では、経営者がすべての店舗を直接確認することはできません。
だからこそ、実行状況を確認する仕組みが必要になります。
2.決定事項が「アクション」になっていない
「接客を改善する」
「売上を上げる」
「教育を頑張る」
これらは目標や方針であって、具体的なアクションではありません。
実際に人が動くためには、
「誰が」
「何を」
「いつ」
「どの頻度で」
「どの状態まで」
を決める必要があります。
例えば、
「接客を改善する」
ではなく、
「店長が毎日1回、ピークタイム後に接客チェックを行い、改善点を1つスタッフにフィードバックする」
まで落とし込みます。
ここまで具体的になれば、実行したかどうかを確認できます。
3.実行しなくても問題にならない
さらに根本的な問題があります。
それは、
「やらなくても何も起こらない」
という組織状態です。
会議で決めたことを実行しなくても、次の会議で誰も確認しない。
経営者から何も言われない。
評価にも影響しない。
それなら、忙しい現場では目の前の仕事を優先してしまいます。
これは「社員の意識が低い」のではなく、会社側がそうした行動を許容してしまっているとも考えられます。
店長自身が抱えやすい3つの課題
1.「決まったからやる」だけになっている
店長が会議で納得していても、自分の店舗でどう実行するかまで考えていないことがあります。
「会社で決まったのでやります」
ではなく、
「自分の店舗では、誰に、いつ、どのようにやってもらうか」
まで考えることが、店長の仕事です。
これは店長が経営者視点を持つことにもつながります。
2.忙しさを理由に後回しにする
飲食店は日々の営業に追われます。
人が足りない。
予約が多い。
クレームが入る。
新人が入る。
店長自身も現場に入る。
そうすると、改善活動はどうしても後回しになります。
しかし、「忙しいからできない」が続けば、いつまで経っても店舗は改善されません。
店長には、目の前の営業だけでなく、未来の店舗をつくる時間を確保することも求められます。
3.「自分がやること」と「部下に任せること」が整理できていない
店長自身がすべてやろうとすると、すぐに限界が来ます。
例えば「新人教育を改善する」と決まったとき、店長自身がすべての教育を担当する必要はありません。
教育担当を決め、店長は進捗を確認する。
このように、
実行する人と、管理する人を分ける
ことも重要です。
会議を「実行につながる場」に変える4つの方法
では、どうすれば会議で決めたことが実行されるのでしょうか。
ポイントは、会議の中に「実行の仕組み」を組み込むことです。
STEP1.決定事項をアクションに変換する
まず、「○○を改善する」という表現をやめます。
例えば、
「新人教育を改善する」
なら、
「10月から、新人入社初日に店長が30分のオリエンテーションを実施する」
というように、具体的な行動へ変換します。
会議では、
「それで、誰が何をするの?」
という質問を必ず入れてみてください。
STEP2.担当者と期限を決める
次に、
「誰が」
「いつまでに」
を決めます。
例えば、
| 決定事項 | 担当 | 期限 |
|---|---|---|
| 新人教育チェックリスト作成 | 人事担当 | 10/10 |
| 店舗で試験運用 | 店長A | 10/15 |
| 結果を共有 | 店長A | 次回店長会議 |
ここまで決まれば、単なる「決定事項」ではなく、管理できるアクションになります。
STEP3.次回会議で必ず確認する
ここが非常に重要です。
会議で決めたら、次回の会議で必ず確認します。
「やりましたか?」
だけではなく、
- 実行したか
- どんな結果だったか
- 何がうまくいかなかったか
- 次に何をするか
まで確認します。
つまり、
決定 → 実行 → 確認 → 改善 → 再実行
というサイクルを回します。
これが管理です。
STEP4.「やらない」場合も理由を確認する
すべての決定事項が予定通り実行されるとは限りません。
重要なのは、実行されなかったことを放置しないことです。
例えば、
「なぜできなかったの?」
と責めるのではなく、
「実行できなかった原因は何だった?」
と確認します。
人手不足なのか。
時間設定が悪かったのか。
アクションが大きすぎたのか。
担当者が理解していなかったのか。
原因が分かれば、次の改善につながります。
事例:会議は多いのに店舗が変わらなかった会社
ある複数店舗を経営する飲食企業では、毎月店長会議を実施していました。
会議では、
「新人教育を強化する」
「クレームを減らす」
「清掃を徹底する」
など、毎回多くの改善案が出ていました。
しかし、次の会議になると、前回の決定事項についてほとんど確認されていません。
その結果、同じような話が何度も繰り返されていました。
そこで、会議の進め方を変更しました。
新しい会議では、最初の30分を「前回決定事項の確認」に使います。
確認する項目は、
- アクション
- 担当者
- 期限
- 実行状況
- 結果
- 次のアクション
の6項目です。
さらに、「新人教育を強化する」のような抽象的な表現を禁止し、
「毎週月曜日、店長が新人のチェックリストを確認する」
というレベルまで具体化しました。
すると、少しずつ会議で話したことが店舗の行動に変わるようになりました。
重要だったのは、店長に「もっと頑張ってください」と言ったことではありません。
実行されるまで管理する仕組みを作ったことです。
最後に
会議で決めたことが実行されないと、
「店長の能力が低い」
「社員の意識が低い」
「現場は言ったことをやってくれない」
と考えてしまいがちです。
しかし、まず見直したいのは、会社の仕組みです。
会議で決めたことが、
「誰が」
「何を」
「いつまでに」
「どのように」
実行するのか。
そして、
「いつ確認するのか」
まで決まっているでしょうか。
会議で決めること自体は、スタートにすぎません。
本当に重要なのは、その決定が現場の行動に変わり、店舗の結果を変えることです。
そしてもう一つ、経営者が注意したいのが、
「やらなくても大丈夫」という空気を作らないこと。
決めたことを実行しないことが何度も繰り返されると、それは個人の問題ではなく、組織の文化になってしまいます。
逆に言えば、決定→実行→確認→改善というサイクルが当たり前になれば、店長やスタッフの「実行する力」も組織の中で育っていきます。
飲食店の仕組化とは、マニュアルを増やすことだけではありません。
「決めたことが、きちんと実行される会社」をつくることも、重要な仕組化の一つです。
もし「会議ではいろいろ決まるのに、店舗がなかなか変わらない」という状態なら、店長個人の問題と決めつける前に、まずは現在の会議から「決定→実行→確認」の流れを見直してみてください。
どこで止まっているのかが分かれば、改善すべき仕組みも見えてきます。



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