改善が継続しない飲食店は「意識」ではなく「仕組み」を変えよう

仕組化の9ステップ

「最初は改善するのに、いつの間にか元に戻っている」

「店長会議では改善策が決まるのに、数週間後には誰もやっていない」

「改善のために管理システムを導入したけれど、結局使われなくなった」

飲食店では、このような「改善が継続しない」という悩みがよくあります。

例えば、クレームが増えたから接客を見直す。
食材ロスが多いから発注方法を変える。
人材が育たないから教育方法を変える。

最初は一生懸命取り組みます。

ところが、忙しくなったり、店長が変わったり、新しい問題が発生したりすると、いつの間にか改善活動が止まってしまう。

そして数カ月後、また同じ問題が起こります。

こうした状況を「スタッフの意識が低い」「店長の当事者意識が足りない」と考えてしまう経営者もいるでしょう。

もちろん、人の意識は重要です。

しかし、改善が続かない原因を人の意識だけに求めると、なかなか問題は解決しません。

なぜなら、改善を「頑張って続けるもの」にしていること自体が問題だからです。

改善を継続するためには、管理システムを整え、さらに「管理する時間」まで仕組みとして確保する必要があります。

今回は、飲食店の改善が継続しない原因と、店長が無理なく改善を続けられる店舗づくりについて考えてみます。

改善が続かないことで起こる3つの弊害

1.同じ問題を何度も繰り返す

改善が一時的に終わってしまうと、当然ながら同じ問題が再発します。

例えば、

「料理提供時間が遅い」

という問題が発生したとします。

店長がスタッフに注意し、オペレーションを見直した結果、一時的に改善した。

しかし、その後の確認をしなければ、忙しい日には以前のやり方に戻ってしまうかもしれません。

すると、また提供時間が遅くなる。

そして、また店長が注意する。

この繰り返しでは、店舗はなかなか成長しません。

2.「どうせ続かない」という空気が生まれる

改善活動を始めても、毎回途中で終わる。

そんな経験が積み重なると、スタッフの側にも変化が起こります。

「また新しいことを始めたけど、どうせそのうち終わる」

という感覚です。

こうなると、改善策を伝えても本気で取り組んでもらえなくなります。

これは飲食店の人材育成にも悪影響を与えます。

せっかくスタッフが「もっと良くしたい」と考えても、改善が定着しない環境では、主体的に行動する意味を感じにくくなるからです。

3.店長が「問題解決係」になってしまう

改善が仕組み化されていない店舗では、問題が起きるたびに店長が対応します。

「店長、これどうしましょう?」

「店長、またクレームがありました」

「店長、発注ミスがありました」

そのたびに店長が判断し、指示を出す。

結果として、店長がいないと改善が進まない状態になります。

これは店長にとっても大きな負担です。

店長が現場の問題をすべて抱え込むようになれば、休めなくなり、部下を育てる時間もなくなります。

そして最終的には「店長がいないと回らない店舗」になってしまいます。

理想は「改善することが当たり前」の店舗

理想的なのは、店長が毎回「改善しよう!」と号令をかけなくても、自然と改善が続く状態です。

例えば、

  • 数字を定期的に確認する
  • 問題を記録する
  • 原因を考える
  • 改善策を決める
  • 担当者を決める
  • 実行する
  • 結果を測定する
  • 必要なら修正する

という流れが店舗の中に組み込まれている。

この状態なら、改善は「特別な活動」ではありません。

日々の店舗運営の一部になります。

店長とは、すべての問題を自分で解決する人ではありません。

店舗が自分たちで問題を発見し、改善できる状態をつくる人でもあります。

これは、経営者視点を持った店長を育てるうえでも重要な考え方です。

改善が継続しない会社組織の3つの課題

1.管理システムが不足している

まず考えたいのが、管理システムです。

ここでいうシステムとは、必ずしも高額なITシステムのことではありません。

例えば、

「毎週、売上と客数を確認する」

「クレームを記録する」

「改善事項を一覧化する」

「担当者と期限を設定する」

といった簡単な仕組みも管理システムです。

重要なのは、

「何を、いつ、誰が、どのように確認するのか」

が決まっていることです。

「もっと接客を良くしよう」

だけでは、改善活動になりません。

「今月のクレーム件数を毎週確認し、原因を分類し、毎週1つ改善策を実施する」

となれば、具体的な行動になります。

2.管理システムはあるが、管理する時間がない

実は、こちらのほうが見落とされがちです。

会社として、

「改善管理表を作りましょう」

「KPIを確認しましょう」

「店舗チェックをしましょう」

と仕組みを用意している。

それでも改善が続かない。

なぜでしょうか。

答えの一つが、管理する時間を確保していないことです。

例えば、改善管理表を作っても、

「時間があるときに確認してください」

では、忙しい飲食店ほど後回しになります。

営業中はお客様対応。

人が足りなければ現場に入る。

クレームがあれば対応する。

その結果、管理は「余裕があるときにやる仕事」になってしまいます。

しかし、余裕がある日はなかなか来ません。

3.結果だけを見て、プロセスを管理していない

「売上が上がったか」

「クレームが減ったか」

「利益が改善したか」

という結果を見ることは重要です。

ただし、結果だけを見ていると、改善活動そのものが見えなくなります。

例えば、

「今月は売上が上がった」

としても、なぜ上がったのか分からなければ、翌月も再現できません。

逆に、

「売上はまだ上がっていないが、客数を増やすための施策を3つ実行した」

という状態もあります。

その場合は、結果だけでなくプロセスも確認する必要があります。

改善を継続するには、

行動→測定→評価→改善

というサイクルを見ることが大切です。

店長自身が抱えやすい3つの課題

1.目の前の仕事を優先してしまう

店長は忙しい仕事です。

スタッフの欠勤、仕込み、接客、発注、売上確認、クレーム対応など、次から次へと仕事が入ってきます。

そのため、

「今日は忙しいから改善管理は明日」

となります。

しかし、その「明日」が何度も繰り返されます。

改善活動を継続するには、緊急の仕事だけでなく、重要だが緊急ではない仕事にも時間を確保する必要があります。

2.改善を自分一人で進めてしまう

「自分がやったほうが早い」

という店長も少なくありません。

しかし、それでは店長自身が忙しくなるだけです。

例えば、クレームが発生したときに店長が全部分析するのではなく、

「今週のクレームを分類して、原因を3つ挙げてみて」

とスタッフに任せてみる。

これも人材育成です。

改善活動を部下の成長機会として活用することで、店長自身の負担も減っていきます。

3.改善したら終わりだと思っている

改善策を実施すると、

「これでOK」

と思ってしまうことがあります。

しかし、改善は実施したところがスタートです。

その後、

「実際に効果があったのか?」

「スタッフは継続できているか?」

「別の問題は発生していないか?」

を確認する必要があります。

つまり、改善には定期的な振り返りが欠かせません。

改善を継続するための5つの仕組み

STEP1:改善対象を数値化する

まず、「良くなった」「悪くなった」という感覚だけで判断しないことです。

例えば、

  • クレーム件数
  • 提供時間
  • 客単価
  • リピート率
  • 廃棄率
  • 欠勤率
  • 新人の独り立ち期間

など、測定できるものは数字にします。

測定できれば、改善の効果を確認できます。

STEP2:改善テーマを絞る

改善項目を10個も20個も設定すると、現場は疲弊します。

「全部改善しよう」ではなく、

「今、一番効果が大きいものは何か?」

を考えます。

例えば、クレームが10種類あるなら、そのすべてを一度に解決するのではなく、最も多いクレームから取り組む。

優先順位を決めることも、店長の重要な仕事です。

STEP3:担当者と期限を決める

「みんなで改善しましょう」

では、責任の所在が曖昧になります。

「誰が」「何を」「いつまでに」を決めましょう。

例えば、

「今週の接客クレームを○○さんが分類し、金曜日までに原因を3つ整理する」

という形です。

STEP4:管理する時間を予定に入れる

ここが非常に重要です。

管理システムを作っただけでは、改善は続きません。

例えば、

毎週火曜日14時から30分間、改善ミーティング

といった形で、予定として確保します。

忙しくなったから中止するのではなく、改善活動も店舗運営に必要な仕事として扱います。

もちろん、繁忙状況に応じて柔軟に変更して構いません。

重要なのは、「時間があればやる」ではなく、**「やるための時間を先に確保する」**ことです。

STEP5:改善を標準業務に組み込む

改善によって良い方法が見つかったら、それを通常業務に反映します。

例えば、

「新人教育ではこの手順を必ず確認する」

「閉店時にはこの数字を記録する」

「クレームが発生したらこの項目を記録する」

というように、日常業務に組み込んでいきます。

これによって、改善が「一時的なキャンペーン」ではなく「店舗の標準」になります。

事例:管理表はあるのに改善が続かなかった店舗

ある飲食店では、以前から「改善活動をしっかりやろう」という方針がありました。

本部も改善管理表を作り、各店舗に配布しています。

店長も最初は熱心に記入していました。

ところが、数カ月経つと更新されなくなります。

経営者は、

「店長の意識が低いのではないか」

と考えていました。

そこで改めて店舗の状況を確認すると、問題は別のところにありました。

管理表はある。

改善項目も書かれている。

しかし、管理表を確認する時間が予定されていなかったのです。

店長は営業、人員管理、発注、教育などに追われ、管理表を見る時間がありませんでした。

そこで、毎週30分の改善時間を設定しました。

その時間には、

  1. 前週の改善結果を確認する
  2. 数値を確認する
  3. 新しい問題を整理する
  4. 優先順位を決める
  5. 担当者と期限を決める

という流れを固定しました。

さらに、改善策が成果につながった場合は、店舗の標準ルールとしてマニュアルに反映。

すると、徐々に改善活動が定着していきました。

特に大きかったのは、店長だけが改善する状態から、スタッフも改善に参加する状態へ変わったことです。

「店長から指示される」のではなく、

「この問題をどうしたら良くできるか?」

をスタッフ自身が考えるようになりました。

結果として、改善活動そのものが人材育成の場にもなったのです。

最後に

改善が継続しないとき、多くの経営者は、

「もっと店長に頑張ってほしい」

「スタッフの意識を高めたい」

と考えます。

しかし、そこで一度立ち止まって考えてみてください。

改善を続けるための仕組みは、本当にありますか?

そして、もう一つ。

その仕組みを運用する時間は、予定として確保されていますか?

管理システムを導入することだけでは、改善は継続しません。

どれだけ立派な管理表を作っても、誰も見なければ意味がありません。

どれだけ優れたKPIを設定しても、確認する時間がなければ改善につながりません。

改善を継続するためには、

「管理する仕組み」と「管理する時間」

の両方が必要です。

さらに、改善活動を店長一人の仕事にしないことも重要です。

スタッフと一緒に問題を発見し、原因を考え、改善策を実行する。

その経験を積み重ねることが、飲食店の人材育成にもつながります。

店長がすべての問題を解決する店舗ではなく、店長がいなくても改善が続く店舗を目指す。

それが、多店舗展開を安定させるうえでも重要な考え方です。

「改善しなければ」と頑張るのではなく、

改善することが自然に続く仕組みをつくる。

もし今、店舗で同じ問題が何度も繰り返されているなら、スタッフの意識を変える前に、「改善が続く仕組み」と「そのための時間」があるかを見直してみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました