多店舗展開できない飲食店が見直したい「再現性」の作り方

仕組化の9ステップ

「1店舗目はうまくいった。でも、2店舗目を出す自信がない」

「店舗を増やしたいけれど、店長によって結果が変わってしまう」

「社長が見ている店はうまくいくのに、任せると店舗の品質が落ちる」

多店舗展開を考える飲食店では、このような悩みが出てくることがあります。

店舗を増やすためには、資金、人材、物件、採用など、さまざまな条件を整える必要があります。

しかし、もう一つ重要なものがあります。

それが、再現性です。

1店舗で成功したとしても、その成功がその店だけ、その店長だけ、その地域だけのものなら、店舗数を増やすほど経営が難しくなります。

一方で、異なる店長やスタッフが運営しても、会社として大切にしている価値を一定水準で実現できるなら、多店舗展開の土台ができます。

では、何を再現すればよいのでしょうか。

ここを曖昧にしたまま「標準化しよう」とすると、現場からは、

「店によって違うから無理です」

「業態が違うから同じやり方にはできません」

という反発が出てきます。

実は、この問題は「すべてを同じにする」必要はありません。

何を再現するのかを決めることから始める必要があります。

多店舗展開できないことで起こる3つの問題

1.店舗を増やすほど経営者の負担が増える

1店舗なら、経営者が直接見れば問題を解決できます。

しかし、2店舗、3店舗、5店舗と増えていくと、すべての店舗を経営者が直接見ることは難しくなります。

「この店長にはこう伝える」

「この店舗ではこう修正する」

と、個別対応が増えていくからです。

その結果、店舗数は増えているのに、経営者自身が現場から離れられないという状態になってしまいます。

2.店長によって店舗の結果が大きく変わる

同じ会社なのに、

「あの店長の店は売上が伸びている」

「こちらの店は人が定着しない」

「店舗によって接客品質が違う」

という状態になることがあります。

もちろん、店長の能力や地域特性による違いはあります。

しかし、会社として再現すべきものまで店長個人に任せてしまうと、店舗ごとの差は大きくなります。

3.出店すること自体が怖くなる

「次の店舗を出しても、ちゃんと運営できるだろうか」

という不安があると、経営者は出店判断を慎重にせざるを得ません。

本来なら成長できるタイミングでも、

「人が育ってから」

「優秀な店長が見つかってから」

「自分が見られるようになってから」

と出店を先延ばししてしまいます。

つまり、再現性が不足していると、成長したいのに成長できない状態が生まれます。

理想は「店が違っても、会社らしさが再現される」状態

多店舗展開における再現性を考えるとき、すべてを同じにする必要はありません。

例えば、駅前の居酒屋と郊外のファミリーレストランでは、客層も店舗面積も営業時間も異なります。

同じ作業動線を強制することが、必ずしも良いとは限りません。

大切なのは、

「何を同じにして、何を変えていいのか」

を明確にすることです。

そこで、再現する対象を4つに分けて考えてみます。

  • 作業を再現する
  • 基準を再現する
  • 行動指針を再現する
  • 結果を再現する

この4つは似ているようで、意味が大きく違います。

会社組織の主な課題3つ

1.「何を再現するのか」が決まっていない

多店舗展開を考えるとき、

「1号店と同じようにやってください」

という指示では、何を守ればいいのか分かりません。

例えば、

「料理提供は5分以内」

を再現したいのか、

「お客様を待たせないという考え方」

を再現したいのかでは、店舗への落とし込み方が変わります。

まずは、

作業・基準・行動指針・結果のどれを再現するのか

を整理する必要があります。

2.作業を標準化すれば多店舗化できると思っている

「マニュアルを作れば店舗展開できる」

と考えるケースがあります。

もちろん、作業を標準化することは重要です。

しかし、すべての店舗で同じ作業をする必要があるとは限りません。

例えば、厨房の形が違えば作業動線も変わります。

「1号店と同じ動線にしてください」

ではなく、

「安全かつ効率的に料理を提供する」

という基準を守るために、それぞれの店舗で最適な動線を設計するほうが合理的です。

3.業態の違いを理由に、共通化を諦めている

「居酒屋とカフェでは違うから、基準も違う」

「業態が違うから、店舗運営を統一できない」

という考え方もあります。

確かに、業態が違えば具体的な作業やサービス内容は変わります。

しかし、その上位にある行動指針まで変える必要があるでしょうか。

例えば、

「お客様の期待を一歩先回りする」

「仲間の仕事を見て、自分から助ける」

「問題が起きたら、その日のうちに共有する」

といった行動指針は、業態が違っても共通化できる可能性があります。

「作業が違うから基準も統一できない」と考えるのではなく、さらに一段上のレベルで再現できるものを探すことが重要です。

店長自身の主な課題3つ

1.「自分の店だから、自分のやり方でいい」と考えてしまう

店長が店舗の状況に合わせて工夫することは大切です。

しかし、

「自分の店は特殊だから」

という考え方が強くなると、他店舗との共通点が見えなくなります。

必要なのは、会社の基準を守りながら、自店舗に合わせて方法を工夫することです。

2.作業と基準を混同している

例えば、

「ピーク前に仕込みを終わらせる」

という作業があったとします。

本当に再現したいのは、その作業自体でしょうか。

それとも、

「ピーク中に料理提供を滞らせない」

という基準でしょうか。

後者なら、店舗によって仕込みの方法やタイミングが違っても問題ありません。

店長がこの違いを理解できると、標準化と現場の裁量を両立しやすくなります。

3.他店舗の成功事例を自店舗に置き換えられない

他店舗の成功事例をそのままコピーしようとして、

「うちの店では無理です」

となることがあります。

しかし、必要なのはコピーではありません。

「なぜ、この方法で成果が出たのか?」

を考え、自店舗で再現できる形に変換することです。

これも、店長に求められる重要な経営者視点の一つです。

多店舗展開のために「何を再現するか」を決める

ここからは、4つの再現対象について具体的に考えてみましょう。

1.作業を再現する

最も分かりやすいのが作業の再現です。

例えば、

  • 開店前の準備
  • 清掃手順
  • 発注方法
  • レジ締め
  • 新人教育の手順

などです。

特に、安全性や品質に直結する作業は、標準化する価値が高くなります。

「誰がやっても同じ手順でできる」

という状態を作ることで、教育もしやすくなります。

ただし、すべての作業を統一する必要はありません。

2.基準を再現する

店舗によって作業動線が違う場合は、基準を再現する方法を考えます。

例えば、

「料理提供を一定時間以内にする」

「客席は常に清潔な状態に保つ」

「クレームには○分以内に対応する」

といったものです。

作業方法は店舗によって変わっても、達成すべき基準を共通化することはできます。

これは多店舗展開において非常に重要な考え方です。

例えば、A店は厨房が狭く、B店は厨房が広い。

当然、スタッフの動線は違います。

それなら、

「A店もB店も同じ動線にする」

のではなく、

「どちらの店舗でも料理提供の基準を満たす」

という考え方に変えます。

方法ではなく、守るべき基準を再現するのです。

3.行動指針を再現する

では、業態そのものが違う場合はどうでしょうか。

居酒屋とカフェ、ラーメン店と高級レストランでは、作業もサービスも異なります。

この場合は、さらに上位の概念である行動指針を再現する方法を考えます。

例えば、

「お客様の立場で考える」

「問題を見つけたら放置しない」

「仲間の成長を自分の仕事として考える」

などです。

具体的な行動は業態によって変わっても、その判断の軸は共通化できます。

「何をするか」ではなく、

「どういう考え方で行動するか」

を再現するわけです。

4.結果を再現する

最終的には、会社として目指す結果も再現する必要があります。

例えば、

  • 客単価
  • リピート率
  • 人件費率
  • 原価率
  • 営業利益
  • 顧客満足度
  • スタッフ定着率

などです。

ただし、「結果を再現する」ことと「結果だけを求める」ことは違います。

「売上1,000万円を達成してください」

だけでは、店長は何をすればいいか分かりません。

結果につながる作業、基準、行動指針まで落とし込む必要があります。

つまり、

行動を再現できる仕組みを作り、その結果を測定する

という順番が重要です。

解決策 「再現性」を4階層で設計する

多店舗展開を考えるなら、次のように整理すると分かりやすくなります。

第1段階 作業

「何をするのか」

具体的な業務手順を標準化します。

第2段階 基準

「どの状態にするのか」

店舗によって方法が違っても、守るべき品質やサービスの水準を決めます。

第3段階 行動指針

「どんな考え方で判断するのか」

店長やスタッフが迷ったときに判断できる軸を作ります。

第4段階 結果

「最終的に何を実現するのか」

売上、利益、顧客満足、人材定着など、会社として目指す成果を設定します。

この4つを整理すると、

「店舗が違うから無理」

という議論から、

「店舗が違っても、どのレベルなら再現できるか」

という議論に変わります。

事例 業態が違っても「会社らしさ」を再現した飲食企業

複数の業態を展開している飲食企業で、店舗ごとの運営方法に大きな違いがありました。

居酒屋、カフェ、定食業態があり、それぞれの店長から、

「業態が違うので、同じルールにはできません」

という声が出ていました。

そこで、すべての作業を統一するのではなく、再現するものを整理しました。

例えば、具体的な厨房作業や接客手順は業態ごとに設定します。

一方で、

「お客様の期待を超える」

「問題を見つけたら自分から動く」

「仲間の仕事を尊重する」

といった行動指針は、全店舗で共通化しました。

さらに、品質についても、

「料理の提供方法を同じにする」

のではなく、

「注文から一定時間内に提供する」

「提供前に決められた品質確認を行う」

など、基準を設定しました。

すると、各店舗の個性を残しながら、会社として守るべき水準を揃えることができました。

店長からも、

「全部同じにしなければいけないと思っていたけれど、守る基準が分かれば、自分の店に合った方法を考えられる」

という声が出るようになりました。

これは、標準化を「同じことをやらせること」と考えなかったことがポイントです。

最後に

多店舗展開できない理由を、

「優秀な店長がいない」

「人が足りない」

「資金がない」

と考えることがあります。

もちろん、これらも重要です。

しかし、もう一つ確認しておきたいのが、再現性です。

1店舗目で成功した方法を、2店舗目でもそのままコピーできるとは限りません。

だからこそ、

「何を再現するのか?」

を考える必要があります。

それは、

  • 作業なのか
  • 基準なのか
  • 行動指針なのか
  • 結果なのか

を整理してみましょう。

店によって作業動線が違うのであれば、作業を無理に統一するのではなく、基準を再現する方法を考える。

業態が違うから基準まで違うのであれば、さらに上位にある行動指針を再現する方法を考える。

このように、再現する対象を一段上げていくことで、「店舗が違うから標準化できない」という問題を解決できることがあります。

多店舗経営とは、同じ店を何軒も作ることではありません。

違う店舗でも、会社として大切にしている価値を再現できる状態を作ること。

その仕組みができて初めて、経営者が現場に張り付かなくても、店舗数を増やしていける組織に近づいていきます。

もし「1店舗目はうまくいったのに、2店舗目から難しくなった」と感じているなら、出店計画だけではなく、自社の成功を何として再現するのかを一度整理してみてはいかがでしょうか。

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