店長育成の本質は「指導力」ではなく「感謝・リスペクト思考」にある

マインドセット

― 強い店長は、“人を動かす人”ではなく、“人が動きたくなる環境をつくる人”である ―

「最近の若いスタッフは、すぐ辞めるんです」

飲食店経営者の方と話していると、
よく聞く言葉です。

「昔より根性がない」
「注意するとすぐ落ち込む」
「責任感が弱い」
「なかなか定着しない」

たしかに、
そう感じる場面はあるかもしれません。

でも、少し見方を変えてみたいと思います。

本当に問題なのは、
「若いスタッフの問題」でしょうか。

もしかすると、

「この職場で、自分は大切にされている」

と感じられていないことが、
原因かもしれません。

人は、
「給料」だけで働いているわけではありません。

もちろん大切です。

でもそれ以上に、

「認められている」
「必要とされている」
「尊重されている」

という感覚が、
働く意味になります。

そして、その空気をつくる中心にいるのが、
店長です。

だからこそ必要なのが、

感謝・リスペクト思考

です。

今日は、店長育成において欠かせない「感謝・リスペクト思考」というマインドセットについて考えてみたいと思います。


店長の一言が、人を辞めさせることがある

少しドキッとする話をします。

店長は、
日々たくさんの言葉を使っています。

「これやって」
「まだ終わってないの?」
「それ違うよ」
「もっと早くして」

内容は正しい。

業務上、必要な言葉です。

でも、
それだけになっていないでしょうか。

あるアルバイトスタッフは、
こう言っていました。

「怒られてはいないんです。
でも、“ありがとう”を言われた記憶がないんです」

これは重い言葉です。

店長に悪気はありません。

忙しいからです。

でも、
その積み重ねで、

「自分はただの労働力なんだ」

と感じてしまう。

すると、
人は静かに心が離れます。

辞める理由は、
給与でも、仕事内容でもなく、

“尊重されていない感覚”

であることが少なくありません。


感謝・リスペクト思考とは何か?

では、「感謝・リスペクト思考」とは何でしょうか。

私は、

「相手の存在と貢献を、当たり前にしない姿勢」

だと定義しています。

例えば、
スタッフが時間通りに出勤する。

普通のことです。

でも、本当に“普通”でしょうか。

その人は、
自分の時間を使って、
ここに来ています。

お客様に笑顔で接しています。

店を支えています。

つまり、

そこには必ず“貢献”がある。

それを見つけ、
言葉にできるか。

これが感謝です。

そして、

「あなたには価値がある」

と伝えること。

これがリスペクトです。


感謝は「ありがとう」だけではない

ここは大切です。

感謝というと、
「ありがとうを言うこと」
だと思われがちです。

もちろん、それは基本です。

でも、
本質はもっと深いです。

感謝とは、

「相手の存在価値を認識すること」

です。

例えば、

新人スタッフが、
まだ仕事は遅い。

でも、
一生懸命メモを取っている。

そこに気づけるか。

「まだできていない」

ではなく、

「一生懸命やろうとしている」

を見られるか。

これが感謝です。

感謝は、
結果だけを見るものではありません。

姿勢を見る力

でもあります。


リスペクトは「甘やかし」ではない

もう一つ誤解されやすいのが、
リスペクトです。

「尊重する」と聞くと、

「相手に合わせること」
「厳しく言わないこと」

だと思われることがあります。

違います。

リスペクトとは、

相手を一人の人格として扱うこと

です。

つまり、

必要なことは伝える。

でも、
見下さない。

否定しない。

人格を傷つけない。

例えば、

「何回言えば分かるの?」

ではなく、

「どこで難しくなっている?」

と言う。

伝える内容は同じでも、
受け取り方は大きく変わります。

これがリスペクトです。


強い店長は「当たり前」を見逃さない

感謝・リスペクト思考がある店長には共通点があります。

それは、

“当たり前”を当たり前にしない

ことです。

例えば、

誰かがゴミを拾った。
閉店後に少し残って片付けた。
忙しい中で新人をフォローした。

こういうことは、
見逃されがちです。

でも、強い店長は見ています。

そして言います。

「助かったよ」
「気づいてくれてありがとう」
「その行動、良かったね」

たったこれだけです。

でも、
言われた側は覚えています。

人は、

「見てもらえている」

と感じた時、
もっと頑張ろうと思うものです。


感謝・リスペクトがある現場は、離職率が下がる

これは現場でよく見ます。

同じ業態。
同じ立地。
同じ給与帯。

それでも、
離職率が全く違う店舗があります。

何が違うのか。

もちろん、
要因は複数あります。

でも、大きいのは、

空気

です。

感謝がある店では、

「ありがとう」が飛び交います。

リスペクトがある店では、

人を雑に扱いません。

すると、

スタッフ同士も優しくなります。

助け合いが生まれます。

つまり、

店長の姿勢が、
チーム文化になるのです。


なぜ感謝・リスペクトが失われるのか

ではなぜ、
忙しい現場ほど、
感謝やリスペクトが薄れてしまうのでしょうか。

理由は大きく3つあります。


① 忙しいと「作業」が中心になる

忙しいと、
人ではなく、
仕事を見てしまいます。

「早く」
「効率よく」
「間違えずに」

もちろん必要です。

でも、その結果、

“人を見る目”

が弱くなります。


② 「できて当たり前」になる

店長になると、
スタッフの頑張りが
“普通”に見えてきます。

でも、それは危険です。

人は、
当たり前に扱われると、
やる気を失います。


③ 店長自身が感謝されていない

実はこれも多いです。

店長自身が、

「誰も自分を分かってくれない」

と感じている。

すると、
人に感謝を向ける余裕がなくなります。

だから、
経営者が店長をねぎらうことも重要です。


感謝・リスペクト思考を育てる3つの方法

では、どう育てるか。

おすすめは3つです。


① 毎日「ありがとう」を3回言う

シンプルですが強力です。

意識しないと、
人は感謝を言葉にしません。

まずは、
一日3回。

「ありがとう」を言う。

それだけで、
空気が変わります。


② 「できていること」を先に伝える

指摘の前に、

「ここは良かった」

を伝える。

例えば、

「接客の笑顔、良かったよ。
その上で、声量だけもう少し上げよう」

この順番が大切です。


③ 「相手の背景」を想像する

おすすめの問いがあります。

「この人は、どんな気持ちでここに来ているだろう?」

学生かもしれない。
子育て中かもしれない。
本業が別にあるかもしれない。

背景を想像すると、
扱い方が変わります。


店長の役割は「管理者」から「人を活かす人」へ

これからの店長に必要なのは、

「人を使うこと」

ではありません。

必要なのは、

「人を活かすこと」

です。

一人ひとりの良さを見つける。
貢献を認める。
成長を支える。

その土台になるのが、

感謝とリスペクトです。

これがある店長は、
人が集まります。

人が辞めません。

人が育ちます。

つまり、
組織が強くなります。


最後に

店長育成というと、
ついスキルに目が向きます。

接客。
数字。
マネジメント。

もちろん大切です。

でも、
その前に必要なのは、

人をどう見るか

です。

「この人は使えるか」

ではなく、

「この人は、どんな価値を持っているか」

と見られるか。

それが、
感謝・リスペクト思考です。

強い店長は、

「厳しい人」

でも、

「優しい人」

でもありません。

「人を大切にできる人」

です。

もし今、
「店長が人を育てられない」
「現場の空気がギスギスしている」
と感じているなら、

ぜひ、この問いを投げてみてください。


「あなたは、今日、誰に“ありがとう”を伝えましたか?」

その問いから、
店長は“人を動かす人”から“人を活かすリーダー”へ変わり始めます。

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