― 強い店長は、“自分が勝つ”のではなく、“みんなで勝つ”を考えている ―
「店長にはもっとリーダーシップを持ってほしい」
飲食店経営者の方と話していると、よく聞く言葉です。
「スタッフを引っ張ってほしい」
「もっと周囲を巻き込んでほしい」
「自分だけで頑張るのをやめてほしい」
「チームとして成果を出してほしい」
こうした悩みの背景には、ある共通点があります。
それは、
“店長が一人で頑張っている”
ということです。
プレイヤーとして優秀だった人ほど、
店長になってもこう考えがちです。
「自分がやれば早い」
「自分がやれば間違いない」
「自分が頑張れば何とかなる」
もちろん、その責任感は素晴らしい。
でも、その考え方のままだと、
あるところで限界がきます。
なぜなら、
店長の役割は「自分が成果を出すこと」ではなく、
「チームで成果を出すこと」
だからです。
そのために必要なのが、
Win-Win思考
です。
今日は、店長育成においてなぜ「Win-Win思考」が重要なのか、そしてどう育てるのかについて考えてみたいと思います。
「自分が勝つ」店長は、どこかで止まる
まず、少し厳しい言い方をします。
店長として成果を出せない人の多くは、
能力不足ではありません。
むしろ逆です。
能力が高い人ほど、
店長になって苦しむことがあります。
なぜか。
それは、
「自分でやった方が早い」
を手放せないからです。
例えば、
忙しい時間帯。
スタッフの動きが遅い。
そのとき、
「貸して」と言って自分でやる。
一時的には効率が上がります。
でも、その瞬間、
スタッフの学びは止まります。
本人は、
「店のため」と思っています。
でも長期的には、
「自分しかできない店」
をつくってしまうのです。
これは危険です。
店長が休めない。
店長が辞めたら回らない。
スタッフが育たない。
つまり、
“自分が勝つ”ことが、
結果的に“チームを弱くする”。
これが、店長育成でよく起きる罠です。
Win-Win思考とは何か?
では、「Win-Win思考」とは何でしょうか。
私は、
「自分だけでなく、相手も、組織も、成果を得られる状態を考える力」
だと定義しています。
例えば、
新人スタッフがミスをした。
Win-Lose型の店長は、
「自分が直した方が早い」
と考えます。
一方で、Win-Win型の店長は、
「どう関われば、この人が次はできるようになるか?」
と考えます。
この違いです。
また、
シフト調整でも同じです。
「店の都合を優先する」のか。
「スタッフの事情だけを優先する」のか。
ではなく、
「店も回り、本人も納得できる形はないか?」
を考える。
これがWin-Win思考です。
つまり、
対立を解決する力ではなく、
“両立”を探す力
とも言えます。
店長の仕事は「正解を出すこと」ではない
多くの店長は、
「答えを出すこと」
が仕事だと思っています。
部下から相談されたら答える。
トラブルが起きたら判断する。
迷っていたら決める。
もちろん必要です。
でも、それだけだと、
「店長依存」
が起こります。
スタッフはこうなります。
「店長に聞けばいい」
「店長が決める」
「自分で考えなくていい」
すると、
主体性が育ちません。
Win-Win思考の店長は違います。
答えを与える前に、
「あなたはどう思う?」
と問い返します。
一見、遠回りです。
でもこれが、
本人の成長につながり、
チームの力になります。
つまり、
“今の効率”より、“未来の成長”を選ぶ
のです。
これがWin-Winです。
Win-Win思考がある店長は、関係性を資産にする
飲食店は、
「人」の仕事です。
スタッフ。
お客様。
取引先。
本部。
地域。
多くの関係者の上に成り立っています。
だからこそ、
関係性をどうつくるか
が重要です。
Win-Win思考の店長は、
関係性を「取引」として見ません。
「この人から何を得るか」ではなく、
「どうすればお互いに良くなるか」
を考えます。
例えば、
スタッフにシフトをお願いするとき。
「出てほしい」
だけではありません。
「今月助けてもらえると本当に助かる。代わりに来月は希望休を優先しよう」
こういう対話ができます。
これは単なる交渉ではありません。
信頼づくりです。
この積み重ねが、
強いチームをつくります。
Win-Win思考がない現場で起きること
逆に、Win-Win思考がない現場では何が起きるか。
こんなことが起こります。
店長 vs スタッフ
「なんでやってくれないの?」
スタッフは、
「なんで分かってくれないの?」
になります。
店舗 vs 本部
「本部は現場を知らない」
本部は、
「現場は数字を分かっていない」
になります。
自分 vs お客様
「忙しいから仕方ない」
結果、
サービス品質が落ちます。
つまり、
“対立構造”
が生まれます。
Win-Win思考がないと、
人は「自分を守る」方向に進みます。
すると、
組織は弱くなります。
なぜWin-Win思考は育たないのか
理由は3つあります。
① 忙しいと「自分中心」になる
余裕がないと、
人は視野が狭くなります。
「まず自分」になります。
だから、
忙しい現場ほど、
意識的にWin-Winを考える必要があります。
② 短期成果を優先してしまう
今月の売上。
今日のシフト。
今日のオペレーション。
目先を優先すると、
「自分でやった方が早い」
になります。
でもそれは、
長期的には損です。
③ 「譲ること」だと誤解している
Win-Winを、
「相手に合わせること」
だと思っている人がいます。
違います。
Win-Winは、
自分を犠牲にすることではありません。
双方が価値を得ること
です。
ここを誤解すると、
ただの“いい人”で終わってしまいます。
Win-Win思考を育てる3つの方法
ではどう育てるか。
おすすめは3つです。
① 「相手の立場」を必ず聞く
店長面談でおすすめなのは、
「相手はどう感じていると思う?」
という問いです。
この一言で、
視点が変わります。
自分視点から、
相手視点へ。
これが第一歩です。
② 「自分・相手・会社」の3視点で考える
例えば、
シフト変更をする時。
- 自分にとってどうか
- 相手にとってどうか
- 店にとってどうか
この3つを考える。
すると、
偏りが減ります。
③ 「みんなで勝つ」を言語化する
朝礼や会議で、
「今月はみんなで勝とう」
と伝える。
当たり前のようで、
大事です。
言葉は文化をつくります。
店長の役割は「管理者」から「関係性の設計者」へ
これからの店長に必要なのは、
「指示を出す人」
ではありません。
必要なのは、
「人と人をつなぎ、成果を生み出す人」
です。
つまり、
関係性の設計者
です。
スタッフが働きやすい。
お客様が満足する。
会社が成長する。
その“交点”をつくる人。
それが、
これからの店長です。
そして、その中心にあるのが、
Win-Win思考です。
最後に
店長育成というと、
スキル教育に目が向きがちです。
数字。
マネジメント。
オペレーション。
もちろん必要です。
でも、
それだけでは強い店長にはなりません。
強い店長は、
「自分が勝つ」
ではなく、
「みんなで勝つ」
を考えています。
スタッフも、
お客様も、
会社も、
そして自分も。
その全員が良くなる道を探している。
これが、
Win-Win思考です。
もし今、
「店長が孤軍奮闘している」
と感じているなら、
ぜひ、この問いを投げてみてください。
「あなた一人が頑張る以外に、みんなで成果を出す方法は何?」
その問いから、
店長は“プレイヤー”から“リーダー”へ変わり始めます。


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