― 強い店長は、“今より少し良くする”を止めない ―
「店長にもっと主体的に動いてほしい」
飲食店経営者の方から、よく聞く言葉です。
「言われたことはやる」
「店はちゃんと回っている」
「大きな問題も起きていない」
でも、
「何か物足りない」
そんな感覚です。
経営者としてはこう思っています。
「もっと良くできるはずなのに」
「もっとアイデアを出してほしい」
「もっと自分の店として考えてほしい」
この違和感の正体は何か。
それは多くの場合、
“改善思考”の有無
です。
店長には、大きく2つのタイプがあります。
ひとつは、
「現状維持型」の店長。
もうひとつは、
「改善型」の店長。
前者は、
「問題が起きないこと」を目指します。
後者は、
「もっと良くすること」を目指します。
どちらも店は回ります。
でも、時間が経つほど、
その差は大きくなります。
今日は、店長育成における「改善思考」というマインドセットについて考えてみたいと思います。
「現状維持」は、実は後退である
まず最初にお伝えしたいことがあります。
それは、
現状維持は、維持ではない
ということです。
飲食業界は常に変化しています。
お客様の価値観は変わる。
競合は増える。
スタッフは入れ替わる。
物価は上がる。
人手不足は進む。
つまり、
“何もしない”ということは、
周囲の変化に取り残されることを意味します。
にもかかわらず、
現場ではこうした言葉がよく聞かれます。
「去年と同じでいい」
「今のやり方で困っていない」
「前からこうしている」
この言葉が出始めたら、
少し危険です。
なぜなら、
改善が止まっているからです。
強い店は、
急に良くなるわけではありません。
毎日少しずつ、
改善を積み重ねています。
その中心にいるのが、
店長です。
改善思考とは何か?
では、「改善思考」とは何でしょうか。
私は、
「現状を“正解”とせず、もっと良くできる前提で考える力」
だと定義しています。
例えば、
レジ待ちが長い。
現状維持型の店長は、
「仕方ない、忙しいから」
で終わります。
改善型の店長は、
こう考えます。
「どこで詰まっている?」
「動線を変えられないか?」
「オーダー方法を変えられないか?」
同じ現象を見ても、
思考が違います。
また、
スタッフの離職が増えている。
現状維持型は、
「最近の若い子は続かない」
改善型は、
「入社後1か月のフォローを変えられないか?」
この違いです。
改善思考とは、
問題を探すことではありません。
可能性を探すこと
です。
強い店長は「不満」ではなく「仮説」を持っている
改善思考のある店長には共通点があります。
それは、
「仮説」を持っている
ことです。
例えば、
「ランチの回転が悪い」
という状況。
改善思考がないと、
「忙しいから仕方ない」
で終わります。
改善思考があると、
「入口の案内が分かりにくいのでは?」
「注文までの時間が長いのでは?」
「退店導線に問題があるのでは?」
と考えます。
つまり、
「なぜ?」
を止めない。
そして、
「もし〇〇なら?」
を考える。
この癖が、
改善を生みます。
店長育成とは、
この思考習慣を育てることでもあります。
改善思考がある現場は、スタッフが育つ
店長の思考は、
そのまま現場文化になります。
店長が、
「今のままでいい」
と言えば、
スタッフもそうなります。
店長が、
「もっと良くできないかな?」
と言えば、
スタッフも考え始めます。
すると現場でこんなことが起きます。
「この配置、変えてみませんか?」
「この案内文、もっと見やすくできます」
「この声掛け、こうしたらどうでしょう?」
改善提案が増えます。
つまり、
改善思考は伝染する
のです。
そして、
この文化がある店は強い。
なぜなら、
店長一人が考えるのではなく、
チーム全員が考えるようになるからです。
なぜ改善思考は育たないのか
ではなぜ、
改善思考を持てない店長が多いのでしょうか。
理由は大きく3つあります。
① 忙しすぎる
店長は日々、
- シフト調整
- 人手不足対応
- クレーム
- 数字管理
- 面談
に追われています。
すると、
「考える時間」がなくなります。
目の前を回すだけで精一杯。
改善どころではありません。
② 失敗を恐れている
「変えて失敗したらどうしよう」
この不安は強いです。
特に真面目な店長ほど、
現状を壊したがりません。
でも、
改善には必ず試行錯誤があります。
失敗を許容しない組織では、
改善は止まります。
③ “正解待ち”になっている
本部型の企業で多いのがこれです。
「本部が決める」
「上司が言うまで待つ」
この文化では、
自分で考える習慣が育ちません。
改善思考は、
「自分で考えていい」
という土壌が必要です。
改善思考を育てる3つの方法
ではどう育てるか。
おすすめは3つです。
① 「何か問題ある?」ではなく「何を変えたい?」と聞く
経営者がよくする質問があります。
「問題ある?」
でもこれは、
問題がないと答えが出ません。
おすすめは、
「今より1%良くするとしたら?」
です。
この問いは、
改善モードをつくります。
② 小さな改善を褒める
大きな成果だけを評価すると、
人は挑戦しなくなります。
例えば、
「メニューの並びを変えた」
「朝礼の順番を変えた」
「声掛けを変えた」
こうした“小改善”を評価する。
すると、
改善が習慣になります。
③ 振り返りを習慣化する
営業後に5分でもいい。
「今日、良くなったことは?」
「明日、変えることは?」
この問いを持つだけで、
現場は進化します。
改善は、
イベントではなく習慣です。
店長の役割は「守る人」から「進化させる人」へ
昔の店長は、
「店を守る人」でした。
もちろん今も必要です。
でも、それだけでは足りません。
これから必要なのは、
「店を進化させる人」
です。
環境は変わる。
お客様も変わる。
だから、
店も変わらなければならない。
その変化の先頭に立つのが、
店長です。
店長が改善を止めた瞬間、
店の成長も止まります。
逆に、
店長が改善を楽しみ始めると、
店はどんどん面白くなります。
最後に
店長育成というと、
「何を教えるか」に目が向きます。
数字。
マネジメント。
コミュニケーション。
どれも大切です。
でも、その土台にあるのは、
どう考えるか
です。
そして、
強い店長に共通するのは、
「もっと良くできる」
という前提を持っていることです。
これが、
改善思考です。
昨日より今日。
今日より明日。
ほんの少しでも前に進める。
その積み重ねが、
強い店をつくります。
もし今、
「店長が受け身だな」
と感じているなら、
まずこの問いを投げてみてください。
「今の店を、あと1%良くするとしたら何を変える?」
その問いから、
店長の思考は変わり始めます。


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