店長育成の本質は「スキル」ではなく「当事者意識」にある

マインドセット

― マインドセットが変われば、現場は変わる ―

「店長が育たない」

飲食店経営者の方とお話をしていると、この言葉を本当によく耳にします。

「任せたいのに任せられない」
「指示したことはやるけど、自分からは動かない」
「売上は見ているけど、チームは見ていない」
「店長にした途端、プレイヤーとしての力はあるのに空回りしてしまう」

こうした悩みは、多店舗展開している企業でも、1店舗経営のお店でも、規模に関係なく起こります。

そして多くの場合、その解決策として考えられるのは、

「もっと教育しよう」
「マネジメント研修を受けさせよう」
「数字の見方を教えよう」

という“スキル教育”です。

もちろん、それ自体は間違っていません。

ですが、店長育成において本当に重要なのは、
スキルの前にあるものです。

それが、

「マインドセット」

もっと言えば、

「当事者意識」

です。

今日は、店長育成における「当事者意識」の重要性についてお話ししたいと思います。


なぜ店長は育たないのか?

まず最初に確認したいのは、

「店長が育たない」のではなく、
「店長になるための土台が整っていない」

というケースが非常に多い、ということです。

多くの企業では、店長昇格の条件がこうなっています。

  • 売上を作れる
  • 現場オペレーションが強い
  • 周囲から信頼されている
  • 勤続年数が長い

つまり、

「優秀なプレイヤー」が店長になる

という構造です。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

プレイヤーと店長は、求められる役割が全く違うのです。

プレイヤーは、
「自分ができること」が評価されます。

一方、店長は、
「周囲を通じて成果を出すこと」が求められます。

つまり、

「自分が頑張る人」から
「人を動かす人」

へ変わらなければならない。

この“役割転換”が起こらないまま店長になると、
多くの人はこうなります。

  • 自分でやった方が早い
  • 部下に任せられない
  • 現場に入りすぎる
  • 育成が後回しになる
  • 結果、疲弊する

そして経営者はこう言います。

「店長が育たない」

でも実際には、

「店長の仕事とは何か」が切り替わっていない

だけなのです。


店長の仕事は「店を回すこと」ではない

ここで一つ、問いを投げたいと思います。

「店長の仕事は何ですか?」

多くの人はこう答えます。

「店舗運営です」
「売上管理です」
「スタッフ管理です」

もちろんそれも正解です。

でも私は、こう定義しています。

店長の仕事は、“店を自走させること”です。

自分がいなくても店が回る。
自分が休んでも売上が落ちない。
自分が現場に入らなくても、スタッフが動く。

これが理想の状態です。

そのためには、

「自分が動く」ことよりも
「チームが動く」ことに責任を持たなければなりません。

つまり、

「私がやる」から
「私がこの店をつくる」

へ。

これが、当事者意識です。


当事者意識とは何か?

「当事者意識を持て」

よく聞く言葉ですが、少し抽象的です。

私はこれを、

「自分が原因だと考える力」

だと定義しています。

例えば、スタッフが辞めたとします。

当事者意識が低い人は、

「最近の若い子は続かない」
「採用の問題だ」
「本人の問題だ」

と考えます。

一方、当事者意識が高い人は、

「自分の関わり方に改善点はなかったか?」
「職場環境に課題はなかったか?」
「もっと早くサインを拾えなかったか?」

と考えます。

どちらが成長するかは、明らかです。

当事者意識とは、
自分を責めることではありません。

「自分にできることは何か?」を考える姿勢

です。

この姿勢がある人は、伸びます。

逆にこれがないと、どれだけスキルを教えても、変わりません。


当事者意識がある店長が現場にもたらすもの

店長の当事者意識は、必ず現場に伝染します。

例えば、

店長が
「忙しいから仕方ない」
と言えば、スタッフもそうなります。

店長が
「どうしたらもっと良くできるか?」
と言えば、スタッフも考え始めます。

組織文化は、
トップの言葉ではなく、

現場責任者の態度

で決まります。

だからこそ、店長のマインドセットは重要なのです。

店長が変わると、

  • 報告の質が変わる
  • 会議の質が変わる
  • スタッフの主体性が変わる
  • 離職率が変わる
  • お客様満足が変わる

つまり、

店長が変わると、店が変わる。

これは大げさではありません。


では、どう育てるのか?

ここが最も重要です。

当事者意識は、
「持て」と言っても持てません。

研修で1日話しても、変わりません。

ではどうするか。

私は、3つのアプローチが必要だと考えています。

① 問いを変える

「売上いくらだった?」

ではなく、

「売上を上げるために何を考えた?」

と聞く。

「何が問題?」

ではなく、

「あなたは何ができる?」

と聞く。

問いは、思考を変えます。

思考が変わると、行動が変わります。


② 任せる

経営者の方に多いのですが、

「まだ早い」
「失敗させたくない」

という思いから、つい介入してしまう。

でも、任せなければ育ちません。

重要なのは、

丸投げではなく、
責任を渡すことです。

「ここはあなたが決めていい」

この経験が、
当事者意識を育てます。


③ 振り返る

経験だけでは学習になりません。

経験 → 振り返り → 学び

このサイクルが必要です。

「なぜうまくいったのか?」
「なぜ失敗したのか?」
「次はどうするのか?」

これを対話する。

ここで初めて、
経験が“成長”に変わります。

だから、コーチングが有効なのです。


店長育成は、未来への投資

店長育成は、
すぐに成果が出るものではありません。

時間がかかります。

手間もかかります。

正直、面倒です。

でも、ここを避けると、
経営者はいつまでも現場から抜けられません。

  • 店長が相談してくる
  • 店長が判断できない
  • 店長が育たない
  • 結局、自分がやる

このループが続きます。

一方で、店長が育てばどうなるか。

  • 現場を任せられる
  • 新店舗に時間を使える
  • 経営に集中できる
  • 会社の未来を考えられる

つまり、

店長育成とは、経営者の自由をつくること

でもあります。


最後に

店長育成というと、
多くの人は「教えること」だと思っています。

でも本質は違います。

店長育成とは、

「考え方を育てること」

です。

そしてその中心にあるのが、

当事者意識

です。

「自分がこの店をつくる」

そう思える店長が増えたとき、
その会社は強くなります。

人手不足の時代だからこそ、
採用よりも、育成。

育成の中でも、
スキルより、マインドセット。

その最初の一歩として、

ぜひ一度、自社の店長に問いかけてみてください。


「あなたは、この店の未来にどれくらい責任を持っていますか?」

その答えが、
組織の現在地を教えてくれるはずです。

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